iPhoneが遠い昔に10周年を迎えたとき、顔認証のFace IDやオールスクリーンのデザイン、ホームボタンに変わるジェスチャー操作、ワイヤレス充電を導入したiPhone Xが登場し、次の10年間のビジョンを示しました。
今年、Apple Watchも10周年を迎え、多くの人がiPhone Xのようなモデルを期待していたはず。
実際はマイナーアップデートか、それより少し上のミドルアップデートになっています。
目次
- 旧モデルからの買い替え
- 睡眠時無呼吸症候群の検出
- 新カラー、ジェットブラックはベストオブベスト
- 着けたまま寝られる史上最薄の新デザイン
- 睡眠を妨げない、眩しくない画面
- 誤ってApple Watchのスピーカーから音が鳴る?
- まとめ
旧モデルからの買い替え
レビューを書くときに前年発売のモデルと比較しがちですが、Apple Watchのレビューにおいてはそれが必ずしも正解とは言えない気がします。
というのもApple WatchはiPhoneよりも進化のペースが遅く、短期間での買い替えを促す端末購入サポートプログラムもないため、毎年買い替える人はかなりの少数派だと感じるからです。
Apple Watch Series 10への買い替えを検討している人のなかで、多いのはおそらくSeries 4とSeries 5でしょう。理由は3つあります。
1つ目はSeries 4とSeries 5のOSバージョンアップが打ち切られたことで、最新のwatchOS 11にアップデートできなくなったことです。
2つ目はSeries 4以降は小さな改善の繰り返しで買い替えのタイミングがなかったこと。
毎年どのレビューを見てもマイナーアップデートと指摘されていて、買い替えを即決するようなキラーコンテンツの追加や劇的な変化はなかったように思います。
魅力的な常時表示機能が追加されたのはSeries 4の翌年に発売されたSeries 5だったし、Series 7で導入された高速充電も魅力的でしたが、買い替えを決めるほどのアップデートではなかったです。
唯一のビッグアップデートはApple Watch Ultraでした。
筆者も購入に揺らいで注文まで行きましたが、よく考えれば通知機能や改札を通るためのSuica、ジムでのワークアウト計測、睡眠分析があれば十分な筆者にとって明らかにオーバースペックだったので注文をキャンセルしました。
3つ目は心電図の計測や不規則な心拍の通知に次ぐ医療機能が久しぶりに追加されたことです。
マイナーアップデート続きのApple Watchは、買い替えのタイミングが難しいですが、医療機能が追加された時が1つの買い換え時だと思います。
世界中の命を救ってきた心電図の計測や不規則な心拍の通知が追加されたのもSeries 4でした。Series 6では血中酸素濃度の測定機能が追加されていますが、医療目的の機能ではありません。
睡眠時無呼吸症候群の検出
Apple Watch Series 10では、Appleいわく80%が見落とされているという睡眠時無呼吸症候群の検出に対応しました。この機能はSeries 9とUltra 2でも利用できます。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠時に何度も呼吸が止まり、睡眠が途切れがちになる症状で、治療しないまま放置すると高血圧や糖尿病、心臓疾患につながる可能性があり、睡眠の質が著しく悪化し、日中の眠気や集中力の低下など、日々の生活に支障をきたす恐れがあります。
治療によって劇的な改善が期待できますが、自覚症状がないケースも多く、いびきの音など他人に指摘されてようやく気づくことも多い症状をApple Watchによって早期発見できるかもしれません。
一人暮らしはもちろん、家族暮らしでも睡眠時間が合わないなど、他人にいびきを指摘されにくい人もApple Watchで睡眠時無呼吸症候群に気づくことができるかもしれません。
いびきを指摘されることもあったので、発売日から1週間睡眠分析しましたが、今のところ通知は来ていません。Appleによれば、30日ごとに呼吸の乱れのデータを分析して通知するとのことで、通知が来るのは10月20日以降になります。
なお、睡眠時無呼吸の通知機能を利用するには、ヘルスケアアプリで事前に設定を有効にする必要があります。おそらく多くの人は気づいていません。この設定はApple Watchの初期設定で有効にすることを促すべきだと思います。
新カラー、ジェットブラックはベストオブベスト
Apple Watch Series 10では、iPhoneのProモデルのようにステンレススチールが廃止され、新しいチタニウムが採用されました。
チタニウムはステンレススチールよりも軽く、耐久性にも優れているため、iPhoneだけでなくApple Watchにも最適な素材です。
20%も軽量化されたチタニウムケースは、ナチュラル、ゴールド、スレートの3色から選べます。
Appleの注文ページで確認すると、ナチュラルとスレートはどちらも黒系統のカラーに見えます。Series 4では、シルバーのステンレススチールを使用していて、ケースとの接続部も統一できるようにシルバーのバンドを買い揃えていたので、光沢シルバーの廃止は困りました。
ただ、比較ハンズオン動画を見ると、ナチュラルはステンレススチールよりもわずかに黒みがかかったシルバーのようです。
この動画を事前にチェックできていたらもしかするとチタニウムのナチュラルを選んでいたかもしれませんが、Apple Watch Series 10は発表後すぐに予約注文がスタートしたので、実物を見ることはないまま注文することになりました。
選んだのはiPhone 7シリーズでも高い人気を集めたジェットブラック。これは歴代Apple Watchのなかでもベストオブベストだと思います。
光沢の黒はケースからベゼルまで1つに繋がっているように見えます。常時表示ディスプレイがオンになり、文字盤の中心部しか表示されない状態になると、さらにシームレスになりますが、これはチタニウムにはない魅力です。
ジェットブラックはアルミニウムなので安さも魅力です。チタニウムとの差額は50,000〜53,000円で、AirPods 4やAirPods Pro 2が余裕で買えるのでコスパはアルミニウムの方がかなり高いと思います。
ただ、キズや塗装剥がれが心配です。iPhone 7シリーズのジェットブラックはキズだらけになりましたが、Apple Watch Series 10もおそらくそうなるのでしょう。Apple Watchは毎年買い換えるものではないので耐久性が心配です。
着けたまま寝られる史上最薄の新デザイン
睡眠時無呼吸の通知機能を利用するにあたって着けながら寝ていても不快感や違和感がないことが大切ですが、Apple Watch Series 10は史上最薄のケースによって装着感が向上しています。
Series 2/3/4/5/6/7/8/9から1mm以上の薄型化で、数値的な違いはそれほど大きくありませんが、手首に巻いた瞬間から明らかに改善された装着感を得られます。Suicaで改札にタッチするときも少し遠い気もするような、、、多分気のせいでしょう。
薄さ以上に装着感を改善させたのは軽量化だと思います。
Series 4/ステンレススチールの47.9gに対して、Series 10/アルミニウム/GPSは36.4gと25%も軽量化されました。薄型化も相まって睡眠時など、長時間巻いたときの不快感や違和感が軽減されています。ランニングなどワークアウトでApple Watchを利用するときも装着感の向上を実感できます。
睡眠を妨げない、眩しくない画面
これほどの軽量化を行いながら画面サイズはUltraを除いて最大になりました。
Series 4/5/6から買い替える場合は面積が約25%も拡大しています。これだけ大きくなると、画面ロックを解除するためのパスコード入力がスムーズになり、キーボードを使った文字入力も可能に。
Series 4はホーム画面からアプリを選択するのが難しいため、リスト表示にしていましたが、Series 10なら通常スタイルのホーム画面でもスムーズにアプリを起動できます。
また、大型化したことで手首によりフィットするようになり、薄くなったベゼルで見た目もかなり良くなっています。
画面の輝度はSeries 4に比べて数値上は2倍も明るく、斜めから見た時の明るさもSeries 9に比べて最大40%も向上しました。
新機能によって最小1ニトで画面を点灯できるようになり、途中で起きて時間やアラームの設定を確認するときも眩しい画面によって睡眠が妨げられることがなくなります。
さらに、最小リフレッシュレートが10Hzから1Hzに改善されました。
画面の更新回数が最小10回/秒から1回/秒まで抑えられ、消費電力を大幅に節約できます。これに伴い、常時表示がオンでも秒針が動くようになり、一部の文字盤では手首を上げなくても秒針を確認できるようになりました。
電池持ちは10年前の最大18時間から変わっていませんが、言い換えればできることを大幅に増やしつつ電池持ちを維持していることになります。
実際の電池持ちはワークアウトの利用時間やGPS + Cellularモデルでモバイルデータ通信を行うのか、など利用状況や使い方によって電池持ちは大きく異なりますが、1日中着けっぱなしにして自動の睡眠分析、通知機能、Suicaのタッチ決済ぐらいであれば、1.5日は連続利用できます。睡眠分析を2回できる期間もありました。
充電速度は大幅に進化しています。
Apple Watch Series 6までは高速充電に非対応。Apple Watch Series 7は約45分で80%までの「高速充電」に対応。さらに、Apple Watch Series 10は約30分で80%まで充電できる「より高速な充電」に対応しました。
睡眠分析では5-6時間の分析で5%前後のバッテリーを消費したので、寝る前に充電しておけば、次の朝あわてて充電しなくても帰宅するまで電池持ちを気にせず利用できます。家に帰ったら充電して、寝る前に手首に巻いて起きたらそのまま利用するサイクルで電池持ちに困ることはないと思います。
誤ってApple Watchのスピーカーから音が鳴る?
Apple Watch Series 10では、ようやくスピーカーで音楽を聴けるようになりました。
イヤホンを忘れたときも音楽を聴きながらワークアウトしたり、散歩や家事をしているときにApple Watchで音楽を楽しむのもいいかもしれません。
スピーカーの音質はおもちゃのようなものですが音量は十分。万が一の時には音を鳴らして助けを呼ぶこともできそうです。
ただ、音楽を再生してAirPodsから音が出るかと思ったらApple Watchから音が出てしまったり、音が出るんじゃないかと心配しなければいけないのがストレスになります。
コントロールセンターから消音モードをオンにしてもスピーカーは無効にならず、音量バーを1番下までおろす必要があります。音量バーを下げてもAirPodsなどワイヤレスイヤホンで音楽を聴くときは音が鳴り、デジタルクラウンで音量を調整できます。
まとめ
10周年で発売されたApple Watch Series 10は、iPhone Xほど壮大なビジョンを描くモデルではなく、期待していたXアップデートではありませんでした。
ただ、多くの人がSeries 9よりも前のモデルから買い替えを検討していることを考えれば、多くのレビューで語られていることよりも、実際は大きなアップデートに感じるはずです。
筆者のようにSeries 4から買い替えるのであれば、間違いなくビッグアップデートです。
より手首にフィットするケースの大きさ、大型化した画面サイズ、数値上は2倍になった画面の明るさ、常時表示、高速充電、緊急SOS、衝突事故の検出など重要な機能に加えて、新しい医療機能も備えています。常時表示や緊急SOSなどいくつかの機能が追加されたSeries 5/6から買い替える場合も同様です。
Apple Watch Series 10は、特に睡眠時でも快適に利用できることに注力したモデルのように感じます。睡眠時無呼吸の通知、長時間つけていられるケースの薄型化と軽量化、まぶしくない最小1Hzのディスプレイ、より高速な充電など、どれも睡眠時に役立つものです。
より快適でスムーズに睡眠トラッキングをしたいのであれば、買い替えをおすすめできます。
少なくともSアップデートではあると思います。Sアップデートは、iPhone 3GS/4s/5s/6sなど、前年に発売されたモデルの完成度を高めた機種を指し、買い替えに外れがないことを意味します。