楽天モバイルが値上げしない宣言からトーンダウン。それでも値上げに動けない理由
Yusuke Sakakura
Yusuke Sakakura
ブログメディア「携帯総合研究所」を運営しています。学生時代に開設して今年が16年目。スマートフォンの気になる最新情報をいち早くお届けします。各キャリア・各メーカーの発表会に参加し、取材も行います。SEの経験を活かして料金シミュレーターも開発しています。

物価上昇、電気料金の高騰、設備投資コストの増加、人件費の上昇などを背景に、通信各社が料金の見直しに動いています。
直近ではソフトバンクが、これ以上価格を据え置けば会社の構造そのものを維持できなくなるとして値上げを発表しました。
KDDIはすでに料金改定を実施し、ドコモも旧料金プランを含めた料金体系全体の見直しを検討するとしています。通信品質を維持しながら、5Gや次世代ネットワークへの投資を続けるには、値上げを避けられないというのが各社に共通するところです。
そのなかで、楽天モバイルは値上げしない宣言をするなど、違う立場を取ってきましたが、5月14日に開催された決算説明会ではトーンに変化が感じられました。
三木谷氏は値上げへ言及を避ける
三木谷会長は、2025年9月30日に実施した記者会見で、楽天モバイルについて「低価格×無制限」に挑戦し続けると宣言。相次ぐ値上げの流れに対して、料金を据え置く姿勢を強く打ち出しました。
三木谷氏はその理由として、第4の携帯電話会社として国に迎え入れられた楽天モバイルの役割は、リーズナブルで使いやすいネットワークを提供することにあると説明。さらに、Open RANによる機器調達の優位性や、AIを活用した電力消費量の削減によって、低価格を維持できると強調していました。

他社の値上げについても、物価高の影響を考えれば通信料金が多少上がるのは致し方ないと一定の理解を示しつつ、楽天モバイルについては後発であり、少しでも多くのユーザーを獲得したいとして、料金据え置きの理由を改めて説明していました。
会見後の囲み取材では、記者から「値上げせずにサービスを提供し続けられるのか」と問われると、三木谷氏が「値上げしてほしいの?」と切り返す場面もありました。昨年の楽天モバイルは、値上げしない姿勢を強く出していたと思います。
しかし、今回の決算説明会で値上げの可能性を問われた三木谷氏は、明確に否定せず、「戦略的なものがあり言及を避けたい」と述べるにとどめました。「総合的に判断しながら長期的に考えたい」といった発言もあり、すぐに値上げに動く可能性は低いものの、少なくとも昨年のような力強い値上げしない宣言からはトーンダウンしています。
値上げについては戦略的なものがあり言及を避けたい。我々は後発。他社に比べるとマーケットシェアはそんなにない、ということを考えて、総合的に判断しながら長期的に考えたい
値上げしやすい空気も、値上げできない理由
携帯業界全体としては、値上げを打ち出しやすい空気になっています。
一方、楽天モバイルは昨年9月の会見で「低価格×無制限」に挑戦し続けると宣言し、値上げしない姿勢を強く打ち出したばかり。それから1年も経たないうちに値上げへ動けば、ユーザーの反発を招く可能性があります。
また、値上げに伴う他社への流出も考えなければいけません。
これまで低価格を武器に契約者を増やしてきたこともあって、料金が上がるなら、つながりやすさを重視して他社に乗り換えようと考えるユーザーが出てくるはずです。
決算説明会では、今後の基地局建設を加速させる方針も示されましたが、通信品質の改善には時間がかかります。一方で、近いうちに影響が出そうなのがKDDIとのローミング契約です。
楽天モバイルは、自社回線だけではカバーしきれないエリアを補うため、KDDIの回線を借りてサービスを提供しています。しかし、KDDIの松田社長は先日の決算会見で、楽天モバイル向けローミングについて、当初は人口カバーを補填することが目的だったと説明。楽天モバイルのエリアが全国に広がってきたことから、すでに役割を終えた部分もあるとの見方を示しました。
つまり、楽天モバイルは値上げしたい事情がある一方で、値上げすれば通信品質に対するユーザーの目はこれまで以上に厳しくなり、せっかく獲得した顧客が他社に流出する恐れがあります。そして、その品質は数ヶ月後に期限切れとなるKDDIとのローミング契約によって左右される場面も考えられます。
昨年のように「値上げしない」と強く言い切るには、業界環境も楽天モバイル自身の置かれた状況も変わってきたのかもしれません。





















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