Appleが16年前に開催したiPhone 4のアンテナゲートに関する緊急会見。その質疑応答を収めた約47分間の映像がYouTubeに投稿されました。
当時の会見に参加していたDaring FireballのJohn Gruberは、Appleの近代史において最も異例なイベントと表現しています。
会見は開催のわずか1日前に告知され、旧Infinite Loop本社にあった小さなTown Hall講堂で開催。急きょ開催されたこともあってか、会場は満席ではなかったとのこと。
15分を予定していたSteve ジョブズのプレゼンは約30分に延長。続いて当時COOだったTim Cookと、ハードウェア部門トップのBob Mansfieldを交えて、約47分間の質疑応答が行われたとのこと。
Appleは会見後、プレゼン部分の映像を公式に公開していましたが、数年後に削除。今回公開された質疑応答は、そもそも公式映像には含まれていなかったようです。
iPhone 4「アンテナゲート」とは
iPhone 4のアンテナゲートは、端末の左下を覆うように持つと電波が大きく弱くなるという問題です。
6月24日の発売直後から報告が相次ぎ、Appleは7月2日にソフトウェアアップデートを予告するとともに、購入から30日以内の返品を案内。その後、Consumer Reportsの検証によって騒動がさらに拡大しました。
Appleは発売から22日後の7月16日に緊急会見を開き、アンテナ部分に手が直接触れないようにするケースを9月30日までに購入したユーザーへ無料提供すると発表しました。
ジョブズらはiPhone 4にケースを付けていた?
質疑応答ではいくつもの興味深いやり取りがありますが、18分45秒ごろのDaring FireballのJohn Gruberによる質問では、Apple幹部3人がそろって自身のiPhoneを掲げるという、滅多に見られないシーンもありました。
Gruberがジョブズ、Tim Cook、Bob Mansfieldの3人に「自分のiPhone 4にケースを付けて使っているか」と質問すると、3人はそろってケースを付けていない自身のiPhone 4を取り出して掲げています。

特定の持ち方によるアンテナ問題はあったものの、iPhone 4の受信性能そのものは3GSから向上していました。
Appleは当時、iPhone 4のワイヤレス性能について「これまで出荷した製品の中で最高」と説明し、3GSより受信状態が良くなったというユーザーからの報告も、Appleのテスト結果と一致しているとしていました。
会見でもジョブズは、自宅がレンガ造りで、建てられた当時は電波のことなど考慮されていなかったため、iPhone 3GSでは自宅だけ受信状態が悪かったと説明。それがiPhone 4では「圧倒的に良くなった」と語っています。
なぜAppleはアクセサリメーカーに情報を明かさないのか
ケースをめぐっては、もう1つ興味深いやり取りがありました。
今年発売されたiPhone 18 Proでは、Face IDの赤外線カメラが画面下に移動したことで、アンチグレアやのぞき見防止加工を施した一部の保護ガラスで、顔認証が正常に動作しない問題が確認されています。
アクセサリメーカーは本体の寸法に合わせて発売前から保護ガラスを用意していたものの、赤外線カメラの位置変更によって想定外の問題が発生した形です。
Appleが新しいFace IDの構造など、より詳細な情報を事前に共有していれば回避できた可能性もあります。
では、なぜAppleは新製品の情報をすべて共有しないのか。16年前のこの会見で、ジョブズがその理由を語っていました。
当時、Appleはアンテナ問題への対応としてケースを無料提供するだけでなく、すでに純正のBumperを購入していたユーザーには代金を返金していましたが、サードパーティ製ケースは返金対象外でした。
記者から「サードパーティ製ケースも、レシートがあれば返金対象にしてはどうか」と問われると、ジョブズは対象者が非常に少ないと回答。
その理由として、iPhone 4は新しいデザインだったにもかかわらず、Appleが発売前にケースメーカーへデザインを公開していなかったため、発売時点では対応するサードパーティ製ケースがほとんど存在しなかったと説明しました。
そこで記者から、ケースが少なかったのはAppleが発売前に情報を提供しなかったことにも原因があるのではないかと追及されると、ジョブズは新製品の情報を事前提供しない理由について話し始めます。
16年経っても続くジレンマ
ジョブズは、将来の製品を事前に明かせば現行製品が売れなくなり、業績や研究開発への投資にも悪影響が及ぶ。また、新製品が予定どおり完成するとは限らず、量産に想定以上の時間がかかることもあるため、発売の準備が整うまでは情報を明かしたくないとしています。
当時は、Apple社員がバーに置き忘れたiPhone 4の試作機をGizmodoが5,000ドルで入手し、発売前に詳細を公開する騒動も起きていました。その後、Gizmodoは約4年間、Appleのイベントに招待されない状態が続きます。
ジョブズもこの一件を念頭に置いたとみられる発言をしており、「ウェブサイトが盗まれた試作機を買い取ってネットに公開することもある。私たちは、ああいうことを特に好んではいない」と皮肉を飛ばしています。
さらに、ケースメーカーについても、新製品の情報を渡せばウェブで公開されてしまう「長い実績がある」と指摘しました。
情報を渡さなければ発売時に対応ケースを十分に用意できず、渡せば新製品の情報が漏れる可能性がある。ジョブズはこれを「簡単な答えのないジレンマ」と表現しています。
そして、このジレンマは16年後の今も形を変えて残っています。
現在は一部のアクセサリメーカーに新型iPhoneの寸法などが事前共有されているとされますが、ケースメーカーやサプライチェーンからCADデータなどが流出し、未発表iPhoneのデザインが明らかになることも珍しくありません。
一方で、共有する情報を限定すれば、今回のiPhone 18 Proのようにアクセサリとの互換性に問題が生じる可能性もあります。
発売日にアクセサリを揃えるため、メーカーにどこまで情報を渡すのか。16年前にジョブズが語ったジレンマは、今も続いているようです。























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