Google Pixelは抜群のコストパフォーマンスで日本を中心に人気を集め、北米で出荷台数が減少しなかった唯一のスマホブランドになるなど、2010年発売のNexus Oneから続いてきたGoogleの端末事業はようやく身を結びつつあるようです。
しかし、Googleが今月発売した「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」は大幅な値上げを行いました。
日本では約3万円の値上げでPixel 8はついに10万円超え。最低価格が15万円になったPixel 8 Proもミドルレンジの域を完全に抜けてハイエンドに到達したことでコスパを武器にすることは難しくなっています。
これから先はAI・ディスプレイ・安全な顔認証・温度センサーなどの新たな武器を手に他社のハイエンドモデルと真っ向勝負する新たな章の幕開けです。
目次
Super Actuaディスプレイ
ディスプレイの話からしましょう。今年、GoogleはAppleやSamsungを真似てディスプレイに特別な名前をつけてブランド化しました。
名前はActuaディスプレイです。GoogleはActuaの意味を説明していませんが、最大の特徴はGoogle Pixel史上最高を謳う画面の明るさです。
Pixel 8 Proに搭載されたSuper Actuaディスプレイの輝度はピーク時2400ニト。iPhone 15 Proの2000ニト、Galaxy S23 Ultraの1750ニトを大きく上回っています。画面の明るさは、スペックと実力が見合ってないこともありますが、明るい屋外でも「不自由なく使える」レベルではなく本当に快適に使えます。
明るさの自動調整もスムーズに動作し、直射日光下で画面が見づらくなるとすぐにピーク輝度に到達します。ただし、カメラなど発熱しやすい機能を利用する場合は、熱を抑えようとして画面の明るさが1段階下がるため、ピーク輝度の持続時間はそれほど長くありません。
Actuaの意味はわからないものの、Googleがブランド化した理由/したかった理由はわかるような気がします。明るさの点においてSuper Actuaディスプレイは他のスマートフォンよりも明らかに優れています。
画面のなめらかさも改善されています。
1秒間の画面の更新回数を示すリフレッシュレートは最大値120、最小値1で必要に応じて値が変化するLTPO仕様。画面の更新回数が上がれば、もちろん電池を多く消費しますが、最小値が1/10の1Hzに改善されたことで、画面の状態が変わらない時の消費電力が低下しています。
さらに、要望の多かったディスプレイのフラット化も実現。
Googleいわくディスプレイをフラット化した理由は、意図せず画面のフチに指が触れてしまうことで、意図しないタッチ操作が起きる事象を回避するため。寝ながらスマホを操作している時など本体をしっかり握る時に起きていた現象ですが、フラット化したことでようやく改善されました。
代償として画面がフラット化したことによってカーブエッジによる握りやすさは失われたものの、Googleは角を丸くした新しい形状を採用。結果、ほぼプラマイゼロでPixel 7 Proと握りやすさは変わっていません。
また、カーブエッジの廃止によって側面の厚みが増したことで、電源ボタンと音量ボタンが大型化してスクショもしやすくなりました。
見た目の変化では、ディスプレイを囲う黒いフチを薄くしたことでデザイン性が改善されています。
特に“アゴ”と言われる画面下部のベゼルが薄くなっています。iPhone 15 Proのベゼルよりもわずかに厚めで、まだ上下左右の幅は均一ではないことからパーフェクトではありませんが、ようやく合格レベルに到達しました。
セクシーなObsidian
背面にはPixel Foldに続いてマットガラスが採用されたことにより、これまでのPixelスマートフォンに足りなかった高級感がプラスされています。
iPhone 15 Proのマットガラスと比べると、Pixel 8 Proのマットガラスはサラサラ感の薄い、もっとしっとりした質感でかなり良い感触です。
カラーはObsidian、Porcelain、Bayの3色。BayはGoogle Pixelらしいインパクトの強い色合いでPixel 4のOh So Orangeのような雰囲気です。
BayとObsidianで悩みましたが、iPhone 15 Proのブラックチタニウムとの比較もしたくてObsidianを選びました。ブラックチタニウムも高く評価しましたが、Pixel 8 ProのObsidianはもっと黒に近い黒で筆者好みです。
特徴的なカメラバーは左右に分かれていたガラスが1つに合体。ガラスの面積も増えてさらに存在感が増しています。本体からの突起も増えたことで、ポケット内のホコリも掃除しやすくなりました。
カメラバーの素材はPixel Watch 2にも採用されている耐久性が心配な光沢付きのアルミフレーム。Obsidianのブラックメタルは、Pixel 7 ProのHazel/ゴールドメタルが安っぽく見えるほどセクシーで良い感じ。
エグみのあるカメラバーの存在をできるだけ薄めたい人にはObsidianがオススメ。他のスマートフォンにはないインパクトを求めるのであればBayが良いと思います。
顔認証
スマホを安全に保護しつつ、画面ロックをスムーズに解除できる指紋認証と顔認証に対応しています。
残念ながら指紋認証の精度に大きな変化はなく、センサーに指を置いてからロックが解除されるまで少し時間がかかります。また、認証が一発で通らないとミスが続く不安定さも変わっていません。
ただし、顔認証は大きく進化しました。
専用のハードウェアを必要としない簡易的な顔認証は、指紋認証よりもなりすましで突破されやすいことから画面ロックの解除に限定されますが、Pixel 8シリーズの顔認証は銀行系のアプリや1Passwordなどパスワード管理アプリといったアプリロックの解除や決済の認証でも利用可能に。
Googleはオンデバイスで高度な機械学習を前作比で2倍以上も実行できるGoogle Tensor G3によって、なりすましによって突破されにくい高い安全性の顔認証が実現できたとしています。
温度センサー
カメラバーに追加された新しい温度センサーについて話しましょう。
名前のとおりスマホを使って温度を測定できます。専用アプリの温度計を起動すると、背面にある温度センサーを対象物に5cm以内に近づけるようメッセージが表示され、背面にある温度センサーの位置がどこにあるのかわかるようにアニメーション付きの温度計のアイコンでセンサーの位置を教えてくれます。
測定時には食品、飲料、鉄、ガラス、マット金属、光沢金属、プラスチック・ゴム、布、木など対象物の材質を11種類から選択して測定ボタンをタップすると-20°Cから150°Cの温度が表示されます。
発売時は体温を測定できなかったものの、米国では認可を得たことで体温測定も可能に。体温を毎日測定していれば、自分の基礎体温を知ることができ、風邪などの体調不良や女性特有の体調変化もいちはやく知ることができます。
今後、日本でも認可を取得するのかはわかりませんが、発売から半年以上が経った今も対応していません。Googleは初代Pixel Watchの発売時に約束した心電図アプリの日本対応も実現していないため、体温測定も同様に期待できないでしょう。
正直なところ温度センサーは体温測定と測定値の履歴管理、体調不良を知らせる通知機能が提供されるまでは役立たずです。
レビューを書くために何度か利用したものの、購入から半年が経過した今はまったくアプリを動作させていません。このセンサーを手に入れるためにPixel 8 Proを選択することは現時点ではやめた方が良いでしょう。
AIカメラ
なんと言ってもGoogle Pixelはカメラが高く評価されているスマートフォンです。
他社よりも早く高度な機械学習を用いてカメラの画質と体験を向上させるコンピュテーショナルフォトグラフィに取り組み、夜景撮影や超改造ズーム、背景をぼかせるポートレート撮影などを実現したシングルカメラは他社のデュアルカメラを圧倒していました。
他社が追っかけてきたことで差は縮まっていますが、今年はAIの活用幅を大幅に拡大することで他者との差をまた広げにかかったように感じます。
最も印象的な機能は写真の撮影後に表情を入れ替えられる「ベストテイク」です。
グループショット/集合写真のときに1人は笑顔で良い表情をしているのに、もう1人は真顔だったり、下を向いていたり、目が半開きといったことがよくありますが、ベストテイクを使えば全員を笑顔の表情に入れ替えることができます。
交換できる表情はAIが生成しているわけではなく、連写した写真から表情を抽出して提案しています。つまり、連写していない場合、ベストテイクは利用できません。
表情を入れ替えた写真は合成感の少ないかなり自然な仕上がりです。なかなかカメラ目線をしてくれない子どもがいる親にとってベストテイクはとてもありがたい機能だと思います。
一方で怖さも感じる機能です。ベストテイクはPixel 8シリーズで撮影した写真だけではなく、別の機種で撮影した写真やスクリーンショットでさえも適用可能。カンタンに他人の事実を捻じ曲げられることのできる恐ろしい機能です。
発表時に大きな注目を集めた「マジックエディター」(日本名:編集マジック)もベータ版として提供されています。
マジックエディターでは、選択した被写体を好きな位置に移動させたり、サイズを大きくしたり、小さくすることもできます。消しゴムマジックのように不要なものを削除することも可能です。
移動した被写体の位置には、そこにあったであろう要素をAIで生成して埋めているため、不自然ですがパッと見は誰も気づかないと思います。そしてこれはまだベータ版で正式版になったときに仕上がりはもっと自然になるかもしれません。
なお、マジックエディタはオンデバイスでは利用できず、Googleフォトにアップロードした写真のみ利用できます。無制限プランを利用していない場合はギガ死に注意が必要。また、Googleフォトの無料容量は15GBしかないため、あまり頻繁に利用すると月額課金が必要になるかもしれません。なお、Googleフォトの無制限アップロード特典は数年前に廃止されています。
次世代とも言えるAIを使った編集機能に対して発表直後には「気持ち悪い」との声もそれなりに聞かれましたが、これは人間にとって新しすぎて慣れていないから出てくる感情かもしれません。便利さが勝つのであれば、気持ち悪さは数ヶ月後にはなくなっているでしょう。筆者はそうなるような気がしています。
新しいAI編集機能のなかで最も抵抗感のない/驚きも少ない「音声消しゴムマジック」では、過去に別の機種で撮影した分も含めて動画から音声ノイズを消すことができます。
Googleフォトを起動してボタンをタップすると、動画内の音が声・風・自然・ノイズ・音楽に識別され、波形を確認しながらそれぞれの音を小さくして雰囲気を残したり、完全にゼロにすることも可能。Vlogから風切り音を消したいときは役立ちます。
しかし、テレビから流れる声とリアルな人間の声を識別することはできず、異なる人の声は「声」として1つにまとめられてしまうため、テレビの音を消そうとすると、強調したかった人の声まで消されてしまうため、消しゴムマジックやマジックエディタ、ベストテイクに比べると魔法感はそれほどありません。
#Pixel8 音声消しゴムマジック🪄 pic.twitter.com/X653Cjp1SG
— Yusuke Sakakura🍎携帯総合研究所 (@xeno_twit) October 15, 2023
飛び道具のAIカメラはこれぐらいでお腹いっぱいかもしれませんがもう少し。
消した対象物の跡を写真のどこかから引用するのではなく、生成AIによって作り出された完全に新しいピクセルで埋める新しい「消しゴムマジック」もPixel 8 Pro限定で提供されています。
年内には色や明るさ、手ぶれ、画像の粗さを自動調整してシネマティックに撮影したり、Pixelが始めた夜景モードを動画で利用できる「動画ブースト」が追加予定。提供時期未定ながら撮影後に写真を拡大したときに失われたディテールを生成AIで埋めて解像感を引きあげる「ズームエンハンス」も追加されます。
発売後も写真の編集機能はAIによってもっと良くなると思いますが、基本に立ち返ってシンプルなカメラの話をします。
Pixel 8 Proのカメラはメイン・超広角・望遠レンズで構成された3眼仕様。今年はすべてのセンサー/レンズがアップグレードされ、主に暗い場所で撮影した時に光をより多く集められるようになり、ノイズの少ない写真が撮影できます。
48MP超広角レンズでは昨年の3cmよりもさらに近づける最短2cmのマクロ撮影が可能に。光学5倍/光学相当10倍ズームでスマホ離れした望遠圧縮が楽しめる48MP望遠レンズは絞り値がƒ/3.5からƒ/2.8に向上したことで集光能力が向上。フロントカメラはオートフォーカスにも対応しています。
基本的な画質はこれまでのGoogle Pixelと変わりませんが、新機能のウルトラHDRが画質を1段階引き上げています。
ウルトラHDRはハイライトをより明るく、シャドウをより暗く、鮮やかな色で写真を撮影/表示できる機能でカメラだけで完結せず、HDR対応のディスプレイ、OS(Android 14は対応済み)、ブラウザのサポートが必要です。
ウルトラHDRで撮影した写真を非対応のiPhone 15 ProとPixel 8 Proで比較すると明らかな違いがあります。それほど高い効果のある機能ですが、見るデバイスによって画質が大きく変わってしまうのは良いことではありません。ウルトラHDRは今後普及していく可能性がありますが、現時点では対応デバイスにiPhoneは含まれず、多くの人が劣化した画質で見ることになります。
なお、マジックエディタやベストテイクなどのAI機能で編集した場合はウルトラHDRが無効化されるようです。。
Pixel 8 Pro限定の新機能として「プロ設定」も利用できます。
プロ設定を利用することで、これまで不可能だった50MP撮影、3種類のレンズの手動選択、明るさ(露出)・シャドウ・ホワイトバランス・マニュアルフォーカス・シャッタースピード・ISOの調整ができます。
こういった拡張機能は別のアプリや別の撮影モードとして提供されることも多く、カメラに詳しくない人以外はお断りのような画面デザインを採用する機種もありますが、Pixel 8 Proのプロ設定は同じアプリ・同じ撮影モード内のただのオプションとしていることが特徴です。
インターフェースは通常の写真モードと大きく変わらないため、気軽に利用しやすく、それぞれの用途さえ覚えてしまえば操作に悩むことはありません。パラメータを変更することでどういったことが起きるのか学習しやすいため、オートモードユーザーにもオススメします。
以下がPixel 8 Proの作例です。すべてオートモードでシャッターボタンを押しただけ。画質を引き上げるウルトラHDR、スマホ離れした圧縮望遠が楽しめる光学ズーム、イルカの素早い動きや水しぶきの粒も捉えるシャッタースピード、いずれも優れています。
性能と電池持ち
Google Pixel最大の懸念は性能と電池持ちです。
独自チップのGoogle Tensorは、他社が実現していない素晴らしいAI機能を提供する一方で、他のAndroidスマートフォンが採用するSnapdragonと比べると「性能が劣る」「発熱しやすい」「消費電力が悪い」三重苦のチップと評価されてきました。
まず基本性能。CPUの性能をGeekbench 6で計測したところマルチコアは変わらなかったものの、シングルコアは前作から約14%アップ。3D Markで計測したGPUの性能は25%アップしています。
瞬発的な性能ではなく長い時間負荷をかけた時の性能を同じく3D Markで計測したところ発熱によって性能が徐々に低下し、ロースコアは前作と大きく変わらない結果に。温度上昇値は約2°C上がっています。
性能に関しては前作から進化しているものの、以下の表を見てわかるとおり、今年フラグシップモデルが採用したSnapdragon 8 Gen 2シリーズと比べるといずれも大きな開きがありました。
Pixel 8 Pro | Pixel 7 Pro | Galaxy S23 Ultra | |
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チップ | Google Tensor G3 | Google Tensor G2 | Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxy |
Geekbench 6 |
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3D Mark WILD LIFE EXTREME |
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3D Mark WILD LIFE EXTREME STRESS TEST |
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ベンチマークスコアはあくまでも数値上のものです。実体験として基本操作においてストレスを感じるようなことはもちろんありませんが、カメラを起動してシャッターボタンを連続でタップした時のラグが気になりました。
例えば、電車のような高速に移動する対象物をベストなタイミングで捉えるのはかなり難しいため連写したいところですが、Google Pixelには連写機能がありません。ボタン連打でセルフ連写することになりますが、何枚か連写すると処理が追いつかずにボタンがグレーアウトしてシャッターを切れなくなります。
試しに両手にスマートフォンを持って同じタイミングで同じ回数だけシャッターボタンを押したところiPhone 15 Proでは7枚の写真が記録されたにも関わらず、Pixel 8 Proは半分以下の3枚しか記録されませんでした。
これは優れたカメラ処理の代償かもしれませんが、最新のGoogle Tensor G3でも連写を可能にするほどの性能ではないということです。
使用時の発熱においては4K/60fpsの動画を10分間撮影後にサーモグラフィカメラを使って表面温度を比較したところ、最高温度は42.5°CでiPhone 15 Proの47.7°Cよりも低く、Pixel 8 Proの熱は1箇所に集中せず熱が全体に拡散されていることが確認できました。
電池持ちは優秀です。
例えば、7時15分に充電器から外して利用を開始した日はGoogleマップのルート案内を使いながら250枚の写真と動画を撮影してフォトウォークしたところ11時30分には電池残量が約60%に。午後はNotionでレビューの下書き、Instagramのフィードチェック、Gmailの確認、Chromeでブラウジングなどしながら追加で約400枚の写真と動画を撮影すると15時10分で電池残量がゼロになりました。
合計の電池持ち時間は約8時間。セットアップからまだ2日目で最適化も完了しているかわからない状態で、かなりヘビーに使いながらも8時間を記録したので高く評価できます。
ただ、Pixel 7 Proも発売直後は電池持ちが優秀だったのものの、アップデートを重ねた数ヶ月後にはそうではなくなっていたので、Pixel 8 Proも同じように劣化していくかもしれません。そうなったときには追記します。
7年間のアップデートは必要?
これまでのPixelスマートフォンは3年または5年間のソフトウェア・アップデートを保証していましたが、これはAppleやSamsungに比べるとそれほど長いものではありませんでした。
最新のGoogle Tensor G3を搭載したPixel 8シリーズでは、OSアップデート・セキュリティアップデート・3ヶ月に一度の機能追加アップデートを7年間保証しています。これでSamsungを上回り、Appleさえも超えるほどの長期間です(2017年11月発売のiPhone Xは2023年9月、約6年でOSアップデート終了)
バッテリーの寿命は2年程度ですが、Googleは純正の交換パーツを7年間提供することも約束するなど、ソフトウェアだけでなくハードウェアのアフターサポートも万全にしています。
心配事は何でもすぐに辞めてしまうGoogleが途中で7年間のアップデート保証を投げ出してしまうのではないかということ。また、日本では、唯一の正規修理店であるiCrackedが7年後も存在しているのか、キャリアが7年後も修理サービスを提供しているのかはわかりません。例え、Googleが7年間部品を提供したとしても修理する権利が認められていない日本では、修理サービスが終了してしまうとバッテリーなどを交換することはできません。
おそらく、7年後に提供される新機能をすべて使えるということもないでしょう。
7年後に提供されるAndroid 21へのアップデートは可能だとしてもPixel 8シリーズでスムーズに動かない機能は提供されない可能性が高いです。つまり、7年後のAndroid 21で追加される新機能の数はPixel 8とPixel 15で大きく違うはずです。
いくつか懸念事項はあるものの7年間もソフトウェアアップデートと交換パーツ提供が保証されたことは喜ばしいことです。
7年とは言わないまでもアップデート保証の延長は他のメーカーやキャリアも追従して欲しいところ。10万円半ば〜20万円もするスマートフォンがわずか2回程度でOSアップデートを打ち切ってしまうことについては多くのユーザーがイラだちを感じていて、次は同じメーカーの製品を買わない、PixelやGalaxyを買うという声も年々増えている気がします。
ガラケーを含む携帯電話の使用期間が平均4.4年であることに対して7年保証は必要かとの声も聞かれますが、Android全体の底上げや今後も成長が予想される中古市場での価値向上に繋がるのであれば、大きな意味を持つことになります。
まとめ:間違いなくハイエンド。プレミアムまではあと一歩
Pixel 8 Pro最大の魅力は間違いなくAIカメラにありますが、それだけではありません。
マットガラスを使用した高級感のあるデザイン、スマホ最高クラスの輝度を誇るSuper Actuaディスプレイ、フル活用できる顔認証、超ヘビーな使い方でも8時間の電池持ちを記録したスタミナも兼ね備え、ようやくハイエンドに肩を並べる1台に仕上がっています。
ただし、Google Tensor G3の性能を考慮すると、Galaxy S23 UltraやiPhone 15 Proなどが名を連ねるハイエンドよりもさらに上のプレミアムクラブへの加入資格はまだ得られていないというのが正直な感想です。
それでもウィークポイントはチップの性能と指紋認証の精度ぐらいです。
不恰好なベゼルは薄くなり三辺が均一化され、丸みのある新形状を採用したことで持ちやすさをキープしたまま誤操作を生むカーブエッジを廃止するなど前作までの不満を解消。7年間のOSアップデート、7年間のセキュリティアップデート、7年間の機能追加アップデート、7年間の交換パーツ提供など、他社より優れたアフターサポートも実現しました。
常に低く評価されたスピーカーについても複数の海外メディアが賞賛しており、前作とは天と地ほどの差があるとも評価されています。
価格はGoogle StoreにおいてPixel 8が112,900円から、Pixel 8 Proが159,900円から。両機種とも前作から3万円以上の値上げになりました。
ついに10万円の壁を超えたPixel 8はiPhone 15 Proに並ぶピーク輝度2000ニト、iPhone 15を上回る待望のリフレッシュレート最大120Hz/最小60Hzを実現したActuaディスプレイ、Proと同じƒ/1.68の50MP標準カメラ、マクロ撮影に対応した超広角レンズ、画質を1段階引き上げるウルトラHDR、高出力化を遂げた有線充電などを10gの軽量化・小型化されたボディに詰め込んだことを考えると、値上げと11万円の価格設定は正当化できるものです。
Pixel 8に比べて47,000円も高額なPixel 8 Proには、消費電力の少ないLTPO仕様のSuper Actuaディスプレイ、割れに強い最新の強化ガラス、望遠圧縮によってスマホ離れした写真が撮れる光学5倍/光学相当10倍ズームの望遠カメラ、数年ぶりにAFが復活したフロントカメラ、レンズ選択や50MP撮影が可能なプロ設定、年内に追加予定の生成AIを活用したズームエンハンスと進化した消しゴムマジック、ついに動画対応する夜景モード、大容量バッテリー、そして現時点ではあまり使い道のない温度センサーも搭載されています。
Pixel 8と同様に前作からの3万円の値上げは正当化できるものですが、Pixel 8との47,000円の差額はかなり大きなもので、差額を正当化できても手が出ないレベルに達しています。
筆者は望遠圧縮が楽しめる光学5倍ズーム/光学相当10倍ズームの望遠カメラのためにPixel 8 Proを選択しましたが、光学相当2倍ズームで満足できるのであれば、Pixel 8でも十分コスパに変わる新たな魅力を堪能できるはずです。