EUにてスマートフォンやタブレットを含めた多くの製品に対して、USB-Cの搭載を義務付ける法案が可決されました。
Androidスマートフォンやタブレットは、ほぼすべてUSB-Cに移行済みですが、その一方で、Lightningを採用するAppleとiPhoneユーザーは多大な影響を受けることになります。
EUの決定によってAppleは今後数年以内にiPhoneを含めた多くのデバイスでLightningを廃止して、USB-Cに移行する必要があります。
USB-Cを搭載したiPhoneの発売を熱望するユーザーはとてつもなく多く、新型iPhoneが発売されるタイミングで多くのユーザーが買い替えを計画しているはず。
さて、その時期はいつごろになるのでしょうか。何が変わるのでしょうか。
目次
EUのUSB-C搭載義務化/統一化とは?
EUは2022年6月にUSB-Cの搭載を義務付ける改正案に暫定合意し、同年10月に欧州議会で賛成多数で採択されました。
充電端子の標準化は世界初の事例です。
iPhoneもUSB-C統一化の対象
改正案はスマートフォンだけでなく、タブレット、ノートPC、デジタルカメラ、ヘッドフォン、ヘッドセット、携帯ゲーム機、ポータブルスピーカー、ワイヤレスマウス、ワイヤレスキーボードなど多くのデバイスに適用され、2024年以降に発売される新製品が対象です。
スマートウォッチやスマートバンドなど、USB-Cを搭載できないような小型のデバイスは対象外で影響を受けません。
影響を受けるAppleデバイスはiPhoneだけではありません。タブレットのiPad、イヤホンのAirPods、そしてMagic Mouse、Magic Keyboard、Magic Trackpadなど多数あるアクセサリも改正案の対象です。
EUの目的は利便性向上と環境保護
EUの目的は消費者の利便性向上と環境保護にあります。
USB-Cで多くのデバイスの充電・データ転送ができるのであれば、ユーザーにとってこれほど嬉しいことはありません。また、EUによれば、USB-Cの搭載を義務付けることで年間約1,000トンの電子廃棄物の削減に繋がると主張しています。
USB-C搭載義務化に反発するApple
AppleはEUのUSB-C搭載を義務付ける改正案について、スマートフォンの端子を共通化する規制は技術革新を停滞させ、欧州の消費者と経済に有害と警告だと声明を発表していました。
その後、改正案が採択されるとAppleの幹部であるGreg Joswiakは「明らかに遵守しなければいけない。選択の余地はない」とiPhoneにUSB-Cを搭載することを明言しました。
ただし、発売時期やEU以外で発売するiPhoneについてもUSB-Cを搭載するかについては明言していません。
iPhone 15でUSB-C搭載の噂
AppleはEUの改正案に反発する一方で、2015年発売の12インチ MacBook、2018年発売のiPad Proなど、着実にUSB-Cへの移行を進めてきました。
今後もiPhoneを含めた多くの製品でLightningを廃止することになります。
EUのUSB-C搭載を義務付ける法改正は2024年以降に適用されますが、未発表のApple製品に関して多数の実績があるBloombergのMark GurmanとMing Chi-Kuoは、Appleが1年早くiPhoneにUSB-Cを搭載すると伝えています。
つまり、2023年秋に発売予定のiPhone 15シリーズで実現する可能性が高いようです。
他の製品ではiPadのエントリーモデルが2022年内に、AirPods、AirPods Pro、AirPods Max、その他のMacアクセサリは2024年までにUSB-Cに移行すると伝えられています。
iPhone SEに搭載される時期は不明です。
指紋認証を廃止し、iPhone XRのデザインで2023年に発売されるとの噂があることから同時期にUSB-Cに移行する可能性があります。ただし、iPhone SEの発売時期は春のため、iPhone 15よりも先に移行することになりますがどうでしょうか。
- iPhone
- 2023年発売のiPhone 15から
- iPad
- 年内発売のiPadで全モデルがUSB-Cに移行
- AirPods
- 2024年まで
- Magic Mouse
- 2024年まで
- Magic Keyboard
- 2024年まで
- Magic Trackpad
- 2024年まで
Lightningの廃止→USB-C搭載で何が変わる?
Lightningが廃止され、USB-Cに移行することで充電時間の大幅な短縮とデータ転送の高速化が期待できます。
転送速度は約40倍に
iPhoneのストレージは最大1TBになり、iPhone 14 Proでは、1枚あたり100MBにも及ぶ48MP ProRAWに対応するなど、容量が大幅に増えたことでバックアップや写真の転送にかかる時間も長くなっていますが、USB 2.0相当のLightningからUSB 3.xのUSB-Cに移行することで、大幅な短縮が期待できます。
転送速度はUSB 2.0の最大480Mbpsに対してUSB 3.0は最大5Gbps、USB 3.1 Gen2/3.2 Gen2は最大10Gbps、USB 3.2 Gen2は最大20Gbpsです。
持ち歩くケーブルの種類が1つに
最も大きなインパクトは、Lightningケーブルを含めた多数のケーブルを持ち歩かなくて済むことです。USB-Cケーブル1本を持ち歩くだけで、iPhone、iPad、AirPods、MacBookすべてを充電可能。各デバイス間でデータの転送も可能になります。もちろんAndroidもです。一般の消費者だけではなく、開発者にとっても大きな影響です。
充電時間の大幅な短縮
現在のiPhoneは30分で最大50%まで充電できますが、フル充電には約2時間が必要です。
USB-Cを搭載したGalaxyなどのAndroidスマートフォンでは半分の1時間で済むことから充電時間の大幅な短縮も期待できます。
USB-C搭載のiPhoneは短命に終わる?フルワイヤレス化計画
2007年発売の初代iPhoneから2011年発売のiPhone 4sまで5年間続いたDockコネクタ(iPod時代から含めると8年間)、2012年発売のiPhone 5から10年以上続くLightning
USB-Cも長期間に及ぶことが予想されますが、BloombergのMark Gurmanは2022年10月10日のレポートにて、はるかに短命に終わると伝えています。
同氏はAppleが将来的にiPhoneをフルワイヤレス化/ポートレス化すると考えているようです。
EUの改正案はUSB-C搭載の義務付けるものですが、適用されるのは有線充電を使用するデバイスに限られているため、フルワイヤレス化によって回避することが可能です。
ただし、欧州委員会は独自規格の充電器を販売して利益を得る企業が最終的にフルワイヤレス化された製品を発売することを予測し、そうなった場合にワイヤレス充電においても統一化する計画を明らかにしています。
ワイヤレス充電に関してはQi規格が一般的ですが、AppleはQi規格と互換性を持つ独自規格のMagSafeをiPhoneに導入しており、今年発売されるiPad Proにも導入されるとの噂があります。
Lightningの廃止によって失う利益をMagSafeによって確保する狙いですが、EUはMagSafeについても規制をかけるかもしれません。AppleはQiと互換性があることを理由に対抗することが予想されます。