Galaxy Z Fold8レビュー/折りたたみスマホに生まれた、新たな選択。2つの無視できない弱点も
ついに折りたたみスマートフォンがブームになろうとしているのかもしれない。
いち早く折りたたみスマホ市場に参入したSamsungによれば、ついに折りたたみスマホは拡大フェーズに向かい、次のスタンダードになるという。
そうしたタイミングで、Samsungは折りたたみスマホのラインナップを3機種に拡大した。
- 普通のスマホを半分に折りたたんで持ち運べるFlip
- 本のように開いて正方形に近い大画面を持ち運べるFold Ultra
- 新しいワイドタイプのFold
パスポートのように横に広いワイドタイプの折りたたみスマホは、これまでになかったわけではない。OPPOなどがいち早く投入し、日本ではGoogleが3年前にPixel Foldを発売した。
しかし、両社ともすでにスクエアタイプに移行している。
当時、日本で販売されている折りたたみスマホは細長いものばかりで、閉じた状態で使うカバーディスプレイはおまけ程度だったが、ワイドタイプのPixel Foldは閉じた状態でもスマートフォンとして使いやすく、スマホとタブレットの2in1として高く評価した。
一方、市場で大きく広がることはなく、Googleはわずか1年でスクエアタイプに移行してしまった。
ワイドタイプを続けていれば……という声もあるが、Googleの判断が間違っていたとは思わない。
今でこそ大画面や横長のディスプレイに対応するアプリは増えてきたが、当時はXも対応せず、Instagramはユーザーが少ないことを理由にiPadにも対応しないと言った。当時はもちろん、今もiPadよりも折りたたみスマホユーザーの方が少ないはずだ。
個人的には、ワイドタイプを続けるべきだったというよりも、当時の環境で「なぜワイドタイプを販売したのか?」という疑問の方が強い。
Samsungに対しては、「なぜ今ワイドタイプの折りたたみを販売するのか?」という疑問があったが、折りたたみスマホを本格的に普及させていくにあたって、2機種だけではニーズをカバーできないと考えたようだ。
実際、Foldはコアユーザー向けで、テック業界の取材でもたまに見かける程度でしかなく、それ以外で見かけることはほとんどない。目にするのは若い世代の女性が使っているFlipぐらいだ。
これまでのFlipとFoldは、あまりにも狙える層が違っていた。Foldはマニアすぎるし、Flipはライトすぎる。ワイドタイプのFoldはその間を埋めることができるかもしれない。
そして、今ならワイドタイプを出せる環境も整っている。Androidの大画面への最適化が急速に進み、あれからXもInstagramも大画面や横長のディスプレイに適したインターフェースを提供するようになった。最新のAndroid 17では、ゲームなど一部を除いて、大画面での表示を開発者側で制限することもできなくなっている。
もちろん、ワイドタイプを投入するAppleへの対抗もあるだろう。
Appleが9月10日未明のスペシャルイベントで発表すると噂される折りたたみiPhoneも、ワイドタイプになると報じられている。画面サイズはほぼ同じで、Galaxy Z Fold8と真っ向から競合することになる。
もしFold8を投入していなければ、FlipとFoldの間にいるユーザーをごっそり取られていたかもしれない。
その一方で、これまでのFoldが担ってきたコアユーザー向けのポジションも残している。
Samsungはトリプルカメラとビッグディスプレイを搭載した従来のFoldを「Galaxy Z Fold8 Ultra」として、これまでGalaxy SシリーズにしかなかったUltraへ昇格させた。
Appleの折りたたみiPhoneは「iPhone Ultra」として噂されているが、仮にFold8が比較で破れても「いやいや、うちのUltraはより大画面で、2億画素のトリプルカメラだから」と主張することもできる。
そして、折りたたみiPhoneは30万円以上と噂されているが、Galaxy Z Fold8 Ultraは30万円を切っている。
つまり、Appleの折りたたみiPhoneには同じワイドタイプのFold8をぶつけて、より高性能を求めるユーザーにはFold8 Ultraを提案できる構図を作った。
噂を鵜呑みにして開発することはないだろうが、折りたたみiPhoneのディスプレイはSamsung Displayが供給すると報じられている。すべては言わないが、そういうことではないだろうか。
前置きがとても長くなったが、レビューはここから始まる。
ワイドタイプは何が良いの?何が便利なの?
本体外側のディスプレイは5.5インチ、普通のスマホと比べて明らかに縦が短く、幅が広い16:10の縦横比だ。片手でしっかり握れるサイズ感で、画面上部にも指が届きやすい。ポケットにもスッと収まる。
何度も言うが、ワイドタイプは以前も存在した。ただ、数年の空白があり、当時もほとんど認知されないまま姿を消したため、このサイズ感はかなり新鮮だ。
本体を開くと7.6インチ、iPadにかなり近い4:3のディスプレイが現れる。内側については、新鮮さよりも親しみを感じる人の方が多いかもしれない。
ワイドだから余白が減る、面積もスクエアタイプより大きい
特に素晴らしいのは4:3という縦横比が生み出す没入感だ。
折りたたみスマホで一般的なスクエアタイプで動画をフルサイズ視聴すると、上下に黒い帯が表示されて自分の顔が映り込み、動画に入り込めずに萎えてしまうことがある。YouTubeが真っ黒な余白にグラデーションをかけるようになったのも、そうした違和感を和らげるためだろう。
ワイドタイプのGalaxy Z Fold8は、その余白が圧倒的に少ない。
例えば、ドラゴンボールなど、地デジ移行前の4:3で制作された映像作品や、余白なしで文字通り画面いっぱいに表示される。
それだけではない。画面サイズそのものはスクエアタイプのFold8 Ultraの方が大きいにもかかわらず、横長のコンテンツなら表示面積までワイドタイプのFold8の方が大きくなる。
電子書籍も同じだ。スクエアタイプでは、上下に大きな余白ができるのに対して、ワイドタイプなら余白は明らかに少ない。
とは言っても今のトレンドはショートやリールといった縦動画だ。
ワイドタイプで縦動画を表示すると、もちろん左右の余白が大きくなり、表示面積もFold 8 Ultraより小さくなる。
ただ、ショート動画はコメント欄を確認しながら見たいことも多い。スクエアタイプでは、下から表示されるコメントによって縦長の動画が豆粒のように小さくなってしまう。一方、Z Fold8では動画の大きさを保ったまま、右側にコメントを表示できる。

真の2in1デバイス
折りたたみスマホをスマートフォンとタブレットの2in1と表現してきたが、ワイドタイプは真の2in1と言えそうだ。
というのも、開いた状態ではワイドなタブレットとしてコンテンツ視聴に向き、本体を90度回転すると縦長のタブレットになって、今度は文章を書いたりウェブを読んだりする作業に向いた形へ変わるからだ。

スクエアタイプは正方形に近いため、回転しても大きな変化はない。一方、ワイドタイプは向きを変えるだけで、コンテンツ視聴と作業のどちらにも適した形に切り替えられる。
しかも、大きく重いタブレットは本体を90度回転させるのが億劫だが、コンパクトで軽いFold8なら持ち替える感覚で気軽に向きを変えられる。縦にすればキーボードで記事を書くことも難しくない。
また、ショート動画では左右の余白が大きくなると書いたが、本体を回転すれば縦長の画面になり、余白を抑えながら大きく表示できる。
折りたたみなのに普通のスマホと同じ重さ
そして軽さだ。Fold8は201gしかない。
例えば、Galaxy S26 Ultraは214g、iPhone 17 Proは206gだ。Samsungがバータイプと呼ぶ一般的なスマホと同じぐらい、機種によってはそれよりも軽い。
コンテンツ視聴をウリにしているFold8にとって、軽さはかなり重要だ。長時間持ち続けることを考えると、201gという数字はかなり効いてくる。

3分割マルチタスキング
ワイドタイプは横幅を広げすぎると、片手で操作しづらくなるため、どうしてもコンパクトにならざるを得ない。
そのため、スクエアタイプに比べると画面サイズが小さく、マルチタスキングには向いてない、、、とは言えない。
というのも、ワイドタイプならではの特権として、横長のディスプレイを縦に3分割して、3つのアプリを横並びにすることもできる。
単純に3等分して使うだけではない。
2つのアプリをメインとして4:4の割合で表示し、左右端のどちらかに3つ目のアプリを2の割合で細く表示する4:4:2のレイアウトも使える。
3つ目のアプリをベンチに置いておくような感覚で、必要になったらメインのアプリと入れ替えながら使える。
例えば、ChatGPTでおすすめの商品を探しながら、楽天市場とメルカリの価格を比較して、手持ちのポイントまで考慮しながら、どちらで買うのがお得か判断するといった使い方ができる。
ワイドタイプの弱点は?
もちろんワイドタイプならではの弱点もある。いっぱいある。
慣れていないだけのものもあるだろうし、折り目のように使っていくうちに、気にならなくなるものもあるかもしれない。とりあえず書き出してみる。
フレックスモードがない
Fold8はフレックスモードに対応していない。
フレックスモードはノートPCのように途中で折りたたんだ時に、最適なインターフェースを提供する機能。例えば、YouTubeなら画面上に映像が表示され、画面下に概要やコメント欄を表示される。Premiumに加入すると、動画の再生やスキップなどが行えるコントロールパネルも表示できる。
画面分割を使えば上半分に動画を表示することはできるため、フレックスモード自体は不要だが、ハードウェアの制約として折りたたみの角度を体感として90°以上に固定できない。
リングスタンドを使えば画面全開で動画を再生できるが、iPhoneやGoogle Pixelと違って、Galaxyにはマグネットが内蔵されていないため、軽さとコンパクトさが犠牲になってします。
画面が短い
メインディスプレイの話ばかりしているが、スマホである以上閉じて操作することが圧倒的に多くなる。
ハードキーボードもない、ペン操作にも対応していないタブレットが机の引き出し逝きになる経験はみんながしているはずだ。
ワイドタイプゆえにXやInstagramといったSNSのフィードやタイムラインが見づらいという声が目立つが、これはあまり気にならない。スクロール量が多少増えるだけだ。

本当の弱点はキーボードにある。
キーボードを表示すると、キーボード以外のエリアが極端に狭くなり、視認性が一気に悪化する。筆者のようにスマホで文章を書く人にとってはこれが辛い。キーボードをフローティングにして、移動することもできるが、ストレスは変わらない。
特に困るのがログイン画面。メールアドレスやパスワードの入力欄まで覆ってしまうため、今どこにフォーカスされてるのかわからなくなってしまう。Samsungアカウントにログインするときさえ、フォーカスがどこにあるのかわからなくなる。
左手ユーザーのことは1ミリも考えてない
ワイドタイプの折りたたみは動画を見ているとき、電子書籍を読んでいるときは快適だが、スマホを操作するときには苦痛に感じる。
この苦痛の正体は筆者が左手でスマホを操作するからだ。どのスマホも基本的に右手で操作することを想定して作られている。
例えば通知画面で最も操作することが多い「消去」ボタンは右にある。クイック設定では右上にボタンが集められ、左上にはタップすることがない日時が表示される。
アプリにおいても、Xは右下にポストボタンを配置。Samsung NoteやGoogleカレンダー、Gmailなども右下に新規追加ボタンを置いている。
そして、まるでこの世に左手でスマホを操作する人がいないかのように指紋認証センサーまで右側面にある。




何年も前から何度もこの不便を訴えてきたが、どのメーカーも解消しようとしない。メーカーもそれを自覚しているのに。
ソニーはすべての人が操作しやすいようにと背面に指紋認証センサーを搭載したのに、今は右に戻してディスプレイ指紋認証どころか顔認証にも対応していない。
それでもバータイプの細長いスマホなら許容できるが、ワイドタイプは許容を明らかに超えている。
もうAndroidに期待はできないかもしれない。Appleには左手モードの搭載を期待したいところ。それだけで評価は爆上がりするし、Androidメーカーも真似するはずだ。
実質モノラルに聞こえるスピーカー
スピーカーはカバーディスプレイ側の上下に配置されているため、本体を開くと2つのスピーカーが左側に寄ってしまう。


そのため、音自体はステレオでも、左右から広がる感覚はかなり弱い。実質的にはモノラルに近く聞こえてしまうのは、ワイドタイプならではの問題かもしれない。
さらに、ワイドタイプは画面の中央とスピーカーの位置が離れるため、映像と音の位置関係にも違和感が出やすい。
発熱
ワイドタイプは幅を広げすぎると片手で操作しにくくなるため、どうしてもコンパクトにならざるを得ない。
片手で持ちやすいというメリットと引き換えに、発熱には不利な形でもある。
縦長のスマホなら、本体上部など手が触れにくい場所まで熱を広げやすい。一方、縦が短いワイドタイプは筐体全体が手のひらに収まりやすく、熱が広がった先まで触れてしまう。
そのため、同じ程度の発熱でもワイドタイプの方が熱を強く感じやすい。
まとめ:折りたたみスマホを広げる新たな選択
Galaxy Z Fold8は、数年前に途絶えたワイドタイプの折りたたみスマホを最新技術でもう一度作り直したようなスマホだ。
当時のワイド折りたたみも、閉じた状態では普通のスマホ、開けばタブレットという2in1の魅力があった。
ただ、ヒンジが未熟で開閉感は良くなかったし、折り目も深く、アプリ側の対応も追いついておらず、高価なプロトタイプのような印象だったが、数年を経てそうした弱点が一気に改善された。
カバーディスプレイはベゼルも薄くなり、閉じた状態でも普通のスマホにかなり近い見た目になっている。メインディスプレイの折り目は、敏感な人でも気にならないレベルまで改善された。反射防止加工によって明るい屋外でも見やすい。
ヒンジの完成度も高く、競合機種と比べて開閉はスムーズだ。薄型化すると指がかかりにくく開きづらくなりがちだが、Fold8は間口を広げて指をかけやすくしたことで開きやすい。
性能も申し分ない。Snapdragon 8 Elite Gen 5 for Galaxyと12GBのメモリを搭載し、普段使いはもちろん、ゲームや動画編集、複数アプリの同時利用でも動作は軽快だ。数年使うことを考えても、十分な余力を感じる。
バッテリーには、Galaxy Zシリーズとして初めてシリコンカーボン負極を導入。容量は4,800mAhと控えめだが、朝から夕方まで使うには十分。45Wの急速充電も速く、実測では10分で35%まで回復し、ほぼ1時間でフル充電になった。
ソフトウェアの自由度も高い。画面分割は決められた比率へ切り替えるだけではなく、境界を細かく動かしてフレキシブルに調整できる。また、Facebookやゲームなど一部のアプリは縦向きで起動することがあるが、設定からアプリごとに強制的に横画面表示へ切り替えることもできる。
カメラは折りたたみを生かした撮影ができる。カバーディスプレイにプレビューを表示すれば、撮られる側も写りを確認しながら撮影可能。メインディスプレイでは、撮影画面と撮った写真を並べて表示することもできる。撮影するたびにギャラリーを開く必要がなく、その場でピントや表情を確認してすぐ撮り直せる。
ただ、撮影体験は充実している一方で、カメラには割り切りもある。広角と超広角のデュアル構成で、高価なスマホの象徴でもある望遠カメラはない。そして、相変わらずGalaxyはシャッター音がデカく感じる。「私、今カメラ撮ってます!!!ハイチーズ!」と周囲に宣言するような音で、正直不快だ。
まだまだ進化の余地はある。それでもGalaxy Z Fold8は、これまでFoldを選んでこなかった新しいユーザーを開拓しそうな折りたたみスマホだと感じる。
よりライトな層でも購入を検討できるFoldが誕生したことで、折りたたみスマホが一部のコアユーザーだけのものではなくなるかもしれない。実際、売れ行きは好調で、Galaxy Z FlipからFoldへ乗り換えたユーザーは過去世代と比べて約3倍に増えている。
筆者はここ数年、折りたたみスマホをスマホ業界の大きなトレンドのひとつと言い続けてきた。ただ、話題にはなっても、なかなかブームにはなりきれなかった。
こうした状況を変えるのは、Apple WatchやAirPodsのように、すでに存在していたものの大きく普及していなかったカテゴリを一気に一般化してきたAppleだと思っていた。
実際、折りたたみスマホでもAppleが市場の関心を一気に引き寄せる可能性は高い。ただ、その前にGalaxy Z Fold8が、折りたたみスマホをより多くの人が選べるものへ一歩進めた。
数年後に振り返ったとき、折りたたみスマホを一般化した手柄をAppleだけが独り占めする状況にはならないはずだ。


































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