Appleがスマホ新法対応を発表。外部アプリストアと決済解禁、手数料はどう変わる?
Yusuke Sakakura
Yusuke Sakakura
ブログメディア「携帯総合研究所」を運営しています。学生時代に開設して今年が16年目。スマートフォンの気になる最新情報をいち早くお届けします。各キャリア・各メーカーの発表会に参加し、取材も行います。SEの経験を活かして料金シミュレーターも開発しています。

Appleは、スマートフォンソフトウェア競争促進法——いわゆるスマホ新法への対応による変更を発表しました。
この変更により、Apple以外が提供する外部アプリストアや外部決済が利用できます。
外部アプリストアの解禁
人の手による厳格な審査、不正行為や詐欺からの保護、そして年齢に適したコンテンツ制限など、App Storeの最大の特徴は、高いセキュリティ基準にあります。
高い安全性が確保されていることを理由に、iPhoneを選ぶ人も多くいますが、スマホ新法により、今後は外部アプリストアからもアプリのダウンロードが可能になります。
懸念される安全性と「公証」による対策
「安全だから」という理由でiPhoneを選んでいる人も多い現状において、外部アプリストアの安全性は最大の懸念点です。
ただ、外部アプリストアはAppleによって認証される必要があり、一時的ではなく、継続に要件を満たす必要があります。
個々のアプリに対しては「公証」と呼ばれる基本審査も実施されます。
これは、App StoreのApp Reviewほど厳格ではなく、基本的な機能とユーザーを深刻な脅威から保護することに重点を置いたものです。
公証プロセスは、自動チェックと人の手による審査を組み合わせたもので、提示された通りにアプリが機能し、既知のマルウェアやウイルスなどのセキュリティ上の脅威がないことを確認するのに役立つとされています。
外部決済の解放
かつてAppleは開発者から最大3割の手数料——いわゆる”Apple税”がかかる課金システムの利用を原則とし、外部決済を制限していました。
この状況に一石を投じたのが、Epic Gamesによる捨て身の行動でした。
禁止されていた外部決済を意図的に実装し、ポリシー違反としてストアから削除された”フォートナイト事件”は、プラットフォーマーと開発者の力関係を世に問う大きなきっかけとなりました。
スマホ新法によって、Appleは外部決済の提供を妨げることができなくなります。
今後は代替決済処理方法、またはユーザーがウェブサイトで決済取引を実行するためのリンク(アウトリンク)のどちらか、あるいは両方を導入することができます。
ユーザーが負うリスクと負担
Appleによる課金システムでは、返金対応、サブスクリプション管理、購入履歴の確認などが一元管理されています。
しかし、外部決済を利用する場合、Apple側で返金を行うことはできず、詐欺や不正行為などのトラブルに対するサポートも限定的になります。
また、決済サービスごとにクレジットカード情報を登録する必要が生じるなど、プライバシーやセキュリティ上のリスクが増大する可能性があるとAppleは警告しています。
手数料を減額
外部決済の解禁に合わせて、手数料体系も大きく変更されます。
App Store上のアプリ
App Storeで配信されるアプリについては、ベースとなる手数料が減額されます。
まず、App Storeの手数料として、大多数の開発者および2年目以降のサブスクリプションは10%、そのほかの場合はデジタル商品およびサービスの決済取引は21%に設定されます。
App Storeの手数料には、App Storeの配信機能やアプリの紹介・発見につながる機能、サービスの継続などに加え、デベロッパがアプリを開発できるようにするツール、テクノロジー、サービスの価値が反映されています。
従来のAppleのアプリ内購入を使用する場合は、追加で5パーセントの料金が必要になります。
アウトリンクによる決済取引では、ストアサービスの手数料として15%の手数料がかかり、大多数の開発者および、2年目以降のサブスクリプションは減額され、10%の料金を支払う必要があります。
- Small Business Programのメンバー
- Video Partner Programのメンバー
- Mini Apps Partner Programのメンバー
外部アプリストア
外部ストアで配信されるiOSアプリでは、App Storeの売上手数料は発生しません。その代わり、Appleはコアテクノロジー手数料(CTC)を導入しています。
CTCは、iOSアプリを開発・配信し、iOSユーザーに提供するためのツールやテクノロジー、各種サービスに対する対価として位置付けられています。対象となるのは、有料アプリを含むデジタル商品やサービスの売上で、売上の5%が課されます。
手数料の比較
Googleもスマホ新法を受けて、外部決済用のプログラムを発表しています。最大の手数料率は、Appleの方が安いものの、どちらも多くの開発者が10%適用になります。
なお、外部ストアで手数料がかかるのはAppleのみです。
| Apple | ||
|---|---|---|
| アプリストア(内部決済) |
|
|
| アプリストア(外部決済) |
|
|
| 外部ストア | 5% | なし |
子どもの安全への影響
外部ストアや外部決済の導入は、特に判断力の低い子どもにとってリスクとなります。
Appleはこの点に対し、厳格な保護策を用意するとしています。
- App Storeの子ども向けカテゴリ:子どもを標的にした不正行為や詐欺のリスクを低減するため、アウトリンクは含まれない
- 18歳未満のユーザー:代替決済処理またはアウトリンクを使用するApp Storeのすべてのアプリは、若年層のユーザーが購入する前に保護者の関与を必要とするペアレンタルゲートを含める必要がある
- 13歳未満のユーザー:低年齢の子どもを標的にした詐欺のリスクから保護するため、App Storeのアプリはアウトリンクを使用できない
- 新しいAPIの提供:代替決済を利用するデベロッパに対し、Appleのアプリ内購入以外での購入を保護者が監視し、承認できるように、新しいAPIを提供する取り組み
- 年齢制限:App Storeで配信するか、外部ストアに関わらず、年齢制限を設定する必要あり
その他のスマホ新法対応
アプリストアと決済の改訂に加えて、先日配信されたiOS 26.2では、以下のスマホ新法対応が行われています。
- ユーザー向け
- 初期設定やアップデート後に、ブラウザと検索エンジンを選ぶ選択画面(チョイススクリーン)の追加
- ナビゲーションとアプリマーケットプレイス向けのデフォルトのコントロール
- 開発者向け
- WebKit以外の厳格なセキュリティおよびプライバシーに関する要件を備えた、代替ブラウザエンジンを使用する新しい選択肢。
- 音声ベースの会話型アプリのデベロッパが、iPhoneのサイドボタンでアプリを起動するオプションをユーザーに提供できる新しいAPI
- iPhoneおよびiOSのコアテクノロジーとの相互運用性をリクエストするプロセス




















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