NothingのカールペイCEO「Appleはもうクリエイティブではない」「スマホアプリはOSに置き換わる」と語る
Yusuke Sakakura

Yusuke Sakakura
ブログメディア「携帯総合研究所」を運営しています。学生時代に開設して今年が16年目。スマートフォンの気になる最新情報をいち早くお届けします。各キャリア・各メーカーの発表会に参加し、取材も行います。SEの経験を活かして料金シミュレーターも開発しています。

スマホメーカーが沙汰される一方で、強く輝くメーカーも存在しています。イギリス発のNothingもその1つです。
背面に900個ものLEDを配置したNothing Phone (1)に対しては「背面が光るだけ」「ガラケーで見たことあるような演出で特別新しくない」といった声もありましたが、Nothingは見事に成功を収めました。
現在はスマートフォンに加え、ワイヤレスイヤホンや、低価格帯のサブブランド「CMF」の製品も展開するなど、着実に存在感を強めています。
そして今、Nothingをはじめとするスマートフォンメーカーが次に注目しているのがAIです。
すでにAIによって生活の利便性は高まりつつありますが、まだ劇的な変化とは言えず、これから何が起こるのか、どんな未来が訪れるのかは未知数です。そんな中で、Nothingのカール・ペイCEOが、スマートフォンとAIの未来についてWIREDのインタビューで語っています。
Nothingの強みは創造性・規模・ソフトウェア
カール・ペイ氏は、Nothingの強みとして真っ先に「創造性」を挙げています。
資金力も人員も限られるスタートアップが大企業と競争するには、創造性で勝負するしかないという考えです。
一方で、「規模」の小ささが優位に働くこともあるようです。大企業が若年層から高齢者まで幅広い層に向けて製品を作るのに対し、Nothingは特定のユーザー層に集中できるとしています。
例えば、Nothing Phone (3a)に初めて搭載された「Essential Space」は、アイデアを整理・保存するための機能で、まさにクリエイターを意識した設計になっています。
さらにもう1つの強みとして「ソフトウェア」を挙げ、成熟とともに退屈になってしまったスマホ市場に、楽しさを再び取り戻せる唯一の存在だとしています。

今やAppleは創造的な企業ではない
創造性はカール・ペイ氏がこの業界に入ったきっかけでもあったとのこと。若い頃にiPodやiPhoneを通じてAppleに強い影響を受けたようです。
しかし、今のAppleについては「もはや創造的な企業ではない」と断言。Apple Intelligenceについても、壮大なストーリーを語ってはいるものの、実態は絵文字生成程度にとどまり、消費者も懐疑的になっていると手厳しく評価しています。
AIに関してはメーカーも消費者も正解を持ち合わせていませんが、カール・ペイ氏に不正解は見えているようです。
それは焦ってAIの実装に追われることです。
ポータブルメディアプレイヤーとして成功したiPodを例に挙げ、成功した要因について、最高のデザイン、スクロールホイールによる優れた操作性、ハードウェアとソフトウェアの統合、iTunesとの連携、ビジネスモデルなど、総合的に優れていたからと語ります。
AIも同様で、単に搭載すればいいものではなく、より良い製品を創造するための新たな技術であるべき、というのが同氏のスタンスです。
スマホはAI時代の覇権も握る
AIの登場によって、スマートグラスやAI専用デバイスなど、さまざまなジャンルのハードウェアが注目を集めています。
しかし、カール・ペイ氏はどれも市場が小さく、短期的に新たなハードウェアが普及するとは考えていないようです。
その一方で、スマートフォンは年間約10億台以上が出荷される、最大かつ最も多様な市場です。AIにとって最も重要なのはデータであり、その点においてスマートフォンに代わる存在は当面現れないと語ります。
また、1年前にも語っていたようにスマートフォンからアプリがなくなる未来を見据えているようです。
OSがユーザーをよく理解し、行動や状況に合わせて今やるべきことを先回りして提案・実行することで、ユーザーは面倒な作業に取られず、本当に大切なことに集中できる――そんな世界です。

ただし、それをいきなり実現して受け入れてもらうのは難しく、一歩ずつ進めていく必要があり、実現までには7~10年ほどかかるという見通しを示しています。
スマートフォンのホーム画面に何百ものアプリが並ぶ今、OSにすべてが集約される未来はイメージしにくいかもしれません。
ただ実際、筆者自身もここ数年で使うアプリの数や種類が減ってきたと感じています。特にサードパーティ製のアプリは減っていて、AppleやGoogleがそれらの機能をOSに統合していく流れが顕著です。
さらにOSと深く統合されていけば、ゼロにはならなくてもアプリが減っていく未来も想像できなくありません。

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