Apple、AI需要拡大でSamsung製iPhoneチップを検討か。よぎる過去のハズレ騒動
Yusuke Sakakura
Yusuke Sakakura
ブログメディア「携帯総合研究所」を運営しています。学生時代に開設して今年が16年目。スマートフォンの気になる最新情報をいち早くお届けします。各キャリア・各メーカーの発表会に参加し、取材も行います。SEの経験を活かして料金シミュレーターも開発しています。

Appleが、AシリーズやMシリーズといった自社デバイス向けチップの製造について、SamsungやIntelへの委託を検討していると報じられています。
BloombergのMark Gurman氏による最新レポートによると、Appleは長年のパートナーであるTSMCに加えて、第2の製造先を確保するため、SamsungやIntelと初期段階の協議を行っているとのことです。
背景にあるのは、爆発的に拡大するAI需要です。NVIDIAやAMDなどが先端半導体の生産枠を大きく押さえるなか、AシリーズやMシリーズの安定供給を考えれば、AppleにとってTSMCだけに依存し続けるリスクは無視しにくくなっています。
一方で、古くからiPhoneを使っている人ほど、Samsungの名前に少し引っかかるところがあるはず。というのも、Appleは過去にもiPhone向けチップの製造をSamsungに委託していましたが、iPhone 6sシリーズでいわゆるChipgateが話題になり、その後はTSMCへの一本化が進んだからです。
Samsung製チップへの不安は「Chipgate」の記憶
Chipgateは、2015年に発売されたiPhone 6sシリーズに搭載されたA9チップで話題になった問題です。
A9チップそのものはAppleが設計していましたが、製造はTSMCとSamsungの2社が担当。Samsung製は14nm、TSMC製は16nmプロセスで製造され、ダイサイズもSamsung製の方が小さく、数字だけを見るとSamsung製の方が有利でした。
プロセスルールの数字はメーカー間で単純比較できるものではありませんが、当時の検証ではTSMC製の方が処理性能でやや有利、バッテリー持ちでも約1〜2時間ほど長いとする結果が多く見られたことで、同じiPhone 6sでもSamsung製のA9チップを搭載する個体は、ハズレと受け止める声が広がりました。
Appleは当時、重い負荷をかけ続けるベンチマークは実際の利用シーンを反映していないと説明し、実使用におけるバッテリー性能の差は2〜3%程度に収まるとしていました。
それでもユーザー目線では、同じ価格で購入したiPhoneなのに、チップの製造元によって電池持ちに差が出るかもしれない、しかもユーザー側には選択権がない、という状況は気持ちのいいものではありません。
実際、当時はベンチマークアプリを使って、自分のiPhoneにどちらのチップが搭載されているのか確認する動きも広がりました。
その後、AppleはA10 FusionからSamsungを外し、TSMCに製造を一本化します。Chipgateだけが理由と断定することはできませんが、Samsung製チップに対する不安を強めた出来事だったのは間違いありません。
さらに、近年のスマホ業界では、SamsungとTSMCの製造技術の差もたびたび話題になってきました。
たとえばNothingは、Phone (2a)に搭載するチップを選ぶ際、候補のひとつだったSnapdragon 7s Gen 2について、Samsung製造であることを理由に「TSMCほど進んでいない」と評価していました。一方で、採用したMediaTek Dimensity 7200 Proについては、TSMCの第2世代4nmプロセスで製造されていることを強調しています。
また、Samsung製造のSnapdragon 8 Gen 1では、発熱や消費電力の問題が多く指摘された一方、TSMC製造に切り替わったSnapdragon 8+ Gen 1では評価が大きく改善しました。GoogleもPixel向けのTensorでSamsung製造からTSMCへ移行しており、少なくともスマホ向けチップの世界では、「TSMC製であること」自体が安心材料として見られてきた面があります。
品質管理についてはAppleが徹底し、実際に採用する場合もかなり慎重に判断するはず。それでも重要なのは、ユーザーに余計な疑念を抱かせないこと。そして、かつて広がった「Samsung製チップはハズレ」という印象をどこまで払拭できるかです。なお、今回の協議はまだ初期段階であり、最終的に見送られる可能性もあります。























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