販売低迷のApple Vision Pro、開発は凍結状態か。Apple Storeのデモで感じた熱量のなさ
Yusuke Sakakura
Yusuke Sakakura
ブログメディア「携帯総合研究所」を運営しています。学生時代に開設して今年が16年目。スマートフォンの気になる最新情報をいち早くお届けします。各キャリア・各メーカーの発表会に参加し、取材も行います。SEの経験を活かして料金シミュレーターも開発しています。

AppleがiPhone 17シリーズやMacBook Neoといったヒットを飛ばす一方で、苦戦が続いているのが空間コンピューター「Apple Vision Pro」です。
Vision Proは発売から2年以上が経った今も、販売台数はわずか60万台にとどまっていると報じられています。さらに、約60万円という価格に見合う体験だと感じられなかったのか、返品率についても、近年のApple製品と比べて異例の高さに達していると報じられています。
販売不振と高い返品率の大きな要因が価格にあることは間違いないでしょう。より手ごろなモデルの登場が期待され、そうした噂もありましたが、昨年10月に投入されたのは、M5チップに刷新しただけの小幅なアップデートにとどまりました。
そして今、AppleはVision Proのような密閉型ヘッドセットの開発を凍結状態にしていると伝えられています。
AppleはVision Proを諦めたのか
BloombergのMark Gurmanは、AppleがvisionOSや空間コンピューティングそのものを諦めたわけではないとしつつも、Vision Proのようなゴーグル型のヘッドセットは現時点で凍結状態にあり、開発の優先順位はグラス型デバイスへ移っていると説明しています。
また、visionOSのソフトウェアチームの大部分は、Siriの立て直しに再配置されたとのことです。
Incredible amount of false info right now on AVP. Truths: Glasses are the priority; Enclosed headsets are on ice for now; visionOS isn't dead; the Vision Products Group was split up and many parts of it were moved elsewhere; no hand control on first display-less glasses/AirPods. https://t.co/WHPQaYGoWM
— Mark Gurman (@markgurman) May 1, 2026
こうした報道に対して、国内外のVision Proユーザーからは強い反応も出ていますが、Gurmanは、Vision ProがApple製品の中でも特に熱量の高いファンを抱えているのではないかと指摘しています。
高額なVision Proを購入したユーザーや、空間アプリ、空間コンテンツ事業に取り組む人たちにとって、製品の成功を強く願うのは当然だ、という見方です。
この指摘はほとんど正しいと思います。ただ、もうひとつ付け加えるなら、Vision Proで得られる体験そのものが本当に優れていることも、強く擁護される理由になっているのではないでしょうか。
筆者もApple Storeで何度かVision Proを体験していますが、短いデモの時間でも、没入感のある体験はかなり魅力的でした。Apple製品で体験できるコンテンツの中でも、最も驚きがあることは間違いありません。
少なくとも、60万円という価格に見合うだけの体験の質は用意されているように感じます。
一方で、Apple自身がVision Proの魅力を本気で届けようとしているのかについては、疑問を感じる場面もありました。
Apple Storeのデモで感じた熱の低さ
今年、Apple StoreでVision Proのデモを予約したときのことです。
スタッフは、Vision Proのデモで何を体験できるのか、逆に何を体験できないのかをほとんど把握していませんでした。
たとえばAppleは昨年10月、Vision Proを通じて、まるでNBAのコートサイドにいるかのような臨場感と試合の熱気を味わえる「Apple Immersive」のライブ配信とフルリプレイ視聴を可能にすると発表しました。2026年には配信もスタートしています。
筆者はこの体験を目的にデモを予約しましたが、Apple StoreにはApple Immersiveのデモが用意されていませんでした。それだけでなく、スタッフはその存在すら把握しておらず、こちらからAppleのプレスリリースを見せて、ようやく内容を確認するような状態でした。
ただ、それでもどういったコンテンツなのかは理解されておらず、Apple TVで配信されている別のNBAコンテンツを案内されました。結局、それもデモとして体験することはできませんでした。
Vision Proは真正面から空間コンピュータです、と訴求しても、広い層に関心を持ってもらうのは難しい製品です。多くの人は価格だけで拒否反応を示すはずです。だからこそ、NBAやF1のようなコンテンツを入り口にして、より多くの人に、より多面的な魅力を届けて、価格の妥当性を訴えることが大切なはずです。
AppleもそのためにNBAと組み、コートに専用カメラを設置したのでしょう。
それにもかかわらず、少なくともApple Storeのデモ体験からは、Vision Proの魅力を本気で伝えようとする熱量は感じられませんでした。コンテンツは用意されているのに、店頭でそれを体験できない。スタッフにも共有されていない。魅力どころか不安さえ感じました。
Appleが空間コンピューティングそのものを諦めたわけではないようですが、あのデモ体験を振り返ると、Vision Proの優先順位が下がっていると言われても、不思議ではないと感じます。Appleが本気でこの製品を広げたいのであれば、まずは製品そのものだけでなく、その魅力を伝える現場の体験から見直す必要があります。




















コメントを残す