いらないものが付いて値上げはWin-Win?──ソフトバンク、料金の値上げに慎重な姿勢。付加価値型に疑問も
Yusuke Sakakura

Yusuke Sakakura
ブログメディア「携帯総合研究所」を運営しています。学生時代に開設して今年が16年目。スマートフォンの気になる最新情報をいち早くお届けします。各キャリア・各メーカーの発表会に参加し、取材も行います。SEの経験を活かして料金シミュレーターも開発しています。

ソフトバンクの宮川社長が5月8日に行われた決算説明会で将来的な料金プランの値上げを示唆しました。
宮川氏は社会全体ではインフレが問題になっている一方で、通信業界では(実質的な)値下げが続くデフレ構造が業界全体の課題であると指摘。そのうえで、ドコモとKDDIという業界上位2社の“お兄ちゃん”が値上げに踏み切ったことをチャンスと表現。
ただし、値上げの時期と手法については慎重な姿勢を示し、特に付加価値を付けて値上げする手法については、いらないものが付いてきたり、一部の利用者を優先することで、他者が犠牲になるようなものをつけて値上げになるようであれば、事業者とユーザーの双方がWin-Winではないと述べ、否定的な見解を示しました。
ドコモとKDDIは付加価値で料金を値上げ
ドコモはDAZN見放題や国際ローミング30GB無料、長期利用割などを盛り込んだ「ドコモMAX」シリーズを発表するなど、料金プランを一新。
現プランのeximoの後継となるドコモMAXは、段階性を引き継ぎながらも、各段階の料金は1,000円程度の値上げとなっています。その代わりに、月額4,200円のDAZN for docomoをセットにするほか、割引も充実化させました。
ドコモMAX | eximo | |
---|---|---|
1GBまで | 5,698円 | 4,565円 |
3GBまで | 6,798円 | 5,665円 |
3GB以上 | 8,448円 | 7,135円 |
割引 |
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KDDIも新プラン「auバリューリンクプラン」を発表。
6月3日から提供を開始するプランは、衛星通信と海外データ使い放題、混雑時でも快適に利用できるバリューを盛り込んで月額8,008円に設定しています。
ドコモと異なり、既存プランの新規受付を継続しつつ、新たな選択肢として提供しますが、既存プランについても、同様の付加価値を付けて最大330円値上げを行います。
宮川社長は「付加価値をつけての値上げ」に否定的
ソフトバンクの宮川社長は、以前から通信業界全体の健全な成長のために、いずれは料金改定が必要だと述べてきました。
特に、電気代が年間100億円単位で増加するなど、大きな負担となっており、これまでは企業努力で吸収してきたものの、限界があると説明。また、従業員の賃上げや、取引先への配慮も含め、業界全体を支える必要があるとしています。
その一方で、「4社の中で1社だけが先に動くのは相当勇気がいる。ソフトバンクだけが増収増益となると“なぜ値上げに踏み切るのか”という話になってしまうので、今は動くつもりはありません。」と述べるなど、慎重な姿勢を取っていましたが、2社が値上げに踏み切った今は絶好のタイミングです。
決算説明会では、スマートフォンの契約が100万件以上純増するなど、堅調な実績が紹介され、5Gの通信品質や接続率の高さもアピールされました。一方で、料金プランについて具体的な発表はありませんでした。
- 2024年度のスマートフォン累計契約数が100万純増を達成
- ワイモバイルからソフトバンクへの移行がプラスに転じて定着
- 5G端末の比率が70%を超えた
- 5G端末が増加するなかで5G接続率は他社を上回る
- 5Gのデータ量はこの1年で1.8倍に増加したものの、スループットは変わらず
料金プランへの言及があったのは質疑応答の場で、業界の健全な成長のためにも必要なタイミングであり、方向性としては他社と同じであるとしながらも、すぐに行動に移すのではなく、ベストな内容や時期を検討するとしました。
一方で、競争環境の視点では、現在は顧客獲得が好調でARPU(1人あたりの平均収益)が下げ止まりしていることから、あえて値上げせずに、数が取れる構造の方が中長期的には収益性が高いとも述べ、慎重な姿勢を崩していません。
ドコモとKDDIが新料金プランと値上げを発表した今、ソフトバンクは影響を見てから動く構えのようです。
また、付加価値を付けて料金を値上げする業界構造については、「わかりづらい料金メニューをどんどん作ることが業界パターンになってしまっている」「いらないものが付いてきて値上がりする構造や、優先接続ができると言いながら他の利用者が犠牲になるような構造のものをつけた形で、値上げになるとしたらWin-Winではないのでは?」と指摘。
同じような商品を作ることはできるものの、それで満足してもらえるとは思えず、利用者が本当に納得できるサービスを検討するなど、じっくりと戦略を練ってから次のアクションに移りたいとの意向を示しました。
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