ソフトバンクと東京大学が最先端のAI研究機関を目指す「Beyond AI 研究所」を設立すると発表した。
研究所には海外の著名AI研究者を招いて、AIの基礎研究と事業化を念頭に置いた応用研究も行う。
AIが起こす世界変化
登壇したソフトバンクの宮川副社長は、AIによって様々な産業が変化する時代にあると説明。モノがインターネットに繋がるIoT化によって膨大なデータが集められ、AIを活用することで世界変化が始まっているとした。
様々な分野で活用されているAIの画像認識では、すでに人間を超える認識率を実現。
AIを活用した犯罪予測においては発砲事件が多いアメリカ・シカゴ市警において、時間・季節周期・天候・地域経済・過去の犯罪などのデータをAIで学習・解析してヒートマップを作成し、犯罪率が高くなる地域のパトロールを強化することで発砲事件が最大29%も減少するなど具体的な成果も獲得している。
脱AI後進国のカギは大学との強力コラボ
人々のライフスタイルを根底から変えるAIだが、熾烈な競争が繰り広げられている。
2006年〜2016年におけるAI関連の取得特許数ではアメリカがトップ、伸び率においては中国がダントツだ。一方で、日本とヨーロッパはほぼ横ばいで孫正義氏が語ったように日本はAI後進国になっている。
AI後進国から脱出するにあたって参考となるのが中国だ。AIの特許数が急激に伸びている中国では、大手通信企業が150〜160件前後を取得したのに対して、北京大学が442件、南京大学が385件など大学が一般企業を大きく上回る特許を取得している。
宮川氏はこれからの日本を作っていくにあたってAIの起点である大学との強力なタッグが必要と説明。ソフトバンクと東京大学が世界に打って出る強力なタッグを組み「Beyond AI 研究所」を設立することを発表した。
研究所では、基礎研究領域である「Super-AI」「Hybrid-AI」だけでなく、応用研究領域である「JV Platform」の3つを研究テーマに掲げる。
CIP制度を活用して事業化に繋げていく応用研究においては、人口流動データを活用した都市開発やMaaS、データ駆動型医療やマイクロバイオーム、ゲノム解析といった健康医療を行い、得られた収益は次世代のAI研究や人材育成に還元していく。
CIP制度:企業と大学が共同で研究開発を目的とした事業準備会社を立ち上げ、その研究成果を円滑に会社化して事業を立ち上げられるよう整備された制度
孫氏は基礎研究だけでは情熱や資金が続かないとして事業化を目指した応用研究と、得られた研究成果を次世代のAI研究や人生育成に還元するエコシステムの必要性を説明した。
なお、ソフトバンクは今後10年で200億円規模を支援(事業益の還元分を含む)し、2020年春までに基礎研究を行う研究所が東京大学本郷キャンパスで開設。さらに、2020年春までに応用研究を行う研究所がソフトバンクの竹芝新オフィスに設置される。
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