もう2022年もあと1ヶ月で終わりですが、今年の携帯業界を振り返ると最も大きなできごとは7月に起きたauの大規模な通信障害だったと思います。
60時間以上にわたって3091万人以上が音声通話やデータ通信が使いづらい状況になった長期かつ大規模な障害で社長自ら「歴史上一番大きな障害」と表現するほどでした。
障害によって通信が使えなかっただけでなく、障害の周知が不十分かつ適正でなかったことが大きく問題視されました。そこで総務省は障害の発生から原則30分以内に、利用者に対して最初の報告を求める取りまとめ案を示しました。
通信障害の発生報告だけでも混乱の軽減に繋がる
総務省によると、通信障害の発生時において、利用者への周知がない、利用者への最初の報告が遅い、必要とする情報の発信ができていない、混乱を生じさせる表現など、携帯電話事業者など電気通信事業者による周知広報に多くの課題があるとのこと。
通信障害が社会全体に与える影響が大きくなるなかで、利用者への報告に関して改めて検討していくことが急務としています。
実際に7月に起きたKDDIの大規模障害では、利用者への最初の報告までに1時間41分かかり、約15時間30分の間、更新内容に変化がなかった、復旧作業終了と発表したものの使えない状況が続くなどわかりづらい表現で混乱が生じたことなどが大きく問題視されました。
利用者への最初の報告は原則30分以内に
では、どうやって改善するのか、総務省は政府がガイドラインを策定する鉄道、電力、ガス、水道といった他のインフラにおける周知広報のルールを参考にするようです。
例えば、現在利用者への最初の報告については、具体的な時間が規定されていないものの、電力分野を参考に原則30分以内に公表することが望ましいとしています。
障害の発生報告だけでも重要な意義がある
総務省は、利用者が利用者側に原因があるのか事業者側に原因があるのか判別できず混乱することから、通信障害が発生していることだけを速やかに公表することが混乱の軽減に繋がり、障害に遭遇した利用者と連絡を取る予定があった人にも安心感が与えられ、障害の発生を速やかに公表することには重要な意義があるとしています。
個人的にはTwitterなどのソーシャルメディアが発達した今、通信障害をいち早く把握することはそう難しい話ではなく、事業者が速やかに報告を出すことにどれだけ効果があるのか疑問です。実際に運用された時も「あぁやっぱりね」ぐらいのものでしょう。
それよりも障害発生を把握してから次の情報発信ーーKDDIの障害であれば更新内容に変化がなかった15時間30分もの時間にどのような情報を提供するのかこそが大切だと思います。
そこで総務省は、利用者の最初の報告では、最低限、障害が発生していることを公表した上で、判明したものから順次公表していくことが適当としています。
判明したものから順次公表していく内容とは、現行のガイドラインに加えて、110番や119番など緊急通報に影響があるかどうか、無料Wi-Fi/検討段階にある事業者間ローミングなどの代替手段、復旧に必要な操作方法、利用者への依頼内容についても周知することが適当とし、これら全てが揃っていない段階でもその時点で知りうる範囲内で発表することが望ましいとのこと。
情報を伝える新たな手段の検討案
さらに重要な情報を伝える手段については、既存の方法に加えて、携帯ショップなど販売代理店におけるデジタルサイネージや報道機関への情報提供、放送事業者へ情報提供(Lアラート)、CM枠の活用、災害時に地方公共団体が利用できる情報発信ツールの活用、他社の障害を自社で掲載する案をあげています。
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