Ankerの信頼性が揺らぐ?リコール台数は100万台超、経産省がモバイルバッテリーなど全製品総点検の行政指導
Yusuke Sakakura

Yusuke Sakakura
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経済産業省が、人気ガジェットメーカーのアンカー・ジャパンに対して行政指導を行いました。
指導内容には、日本国内で販売しているリチウムイオン蓄電池搭載製品すべての総点検と報告が含まれています。
国内で50万台超をリコール。火災例も
アンカー・ジャパンは、国内外の販売数が600万台を超える人気製品「Anker PowerCore 10000」を含む、4製品の自主回収を発表しました。
対象製品はモバイルバッテリーとBluetoothスピーカー。発煙や発火のリスクがあるとしています。
経産省の発表によれば、リコールの対象台数はモバイルバッテリーの「Anker PowerCore 10000」が410,124台で、スピーカーも合わせると522,237台になります。
また、製品使用時に火災など、一般消費者の生命または身体に対する重大な危害が発生、または発生するおそれがあるものを指す重大製品事故の報告は41件とされています。
ほかにも昨年9月に2製品、今年6月にも追加で2製品の自主回収を発表。合計台数は478,415台と発表されていました。筆者が調べたところ2024年から現時点まで遡ると、リコールの対象台数は100万台を超えています。
製品名 | 対象台数 |
---|---|
Anker PowerCore 10000 | 410,124台 |
Soundcore 3 | 91,933台 |
Anker PowerConf S500 | 8,980台 |
Soundcore Motion X600 | 11,200台 |
Anker Power Bank (10000mAh, 22.5W) | 401,771台 |
Anker MagGo Power Bank (10000mAh, 7.5W, Stand) | 15,018台 |
Anker 334 MagGo Battery (PowerCore 10000) | 36,946台 |
Anker Power Bank (20000mAh, 22.5W, Built-In USB-C ケーブル) | 24,680台 |
Anker PowerConf S3 | 2,256台 |
Anker SoundCore | 2,420台 |
揺らぐ?Ankerの信頼性
今回のリコールを受けて、今後もAnker製品を安心して使っていいのか不安に感じている人も少なくありません。
まず気になるのがリコール対象台数の多さです。

しかし、これは製品の不良率が高いというよりも、圧倒的な販売実績があるからこそ生じる現象とも言えます。
Ankerのモバイルバッテリーは、自社サイト・Amazon・家電量販店などで広く流通しており、国内市場でもトップクラスの認知を獲得しているブランドです。
実際、充電関連製品の国内販売台数は2022年までに3,000万個以上を記録。2024年秋の発表会では、オンラインおよびオフライン各チャネルにおけるモバイルバッテリーの販売数量シェアが1位になったと発表していました。
重大製品事故の報告数で比較すると、今年7月にJR山手線の車内で発火した他社製モバイルバッテリーでは、対象台数39,300台のうち18件の重大製品事故(うち16件の火災)が報告されています。
一方、Ankerの今回のリコールは、対象台数約52万台に対して41件の重大製品事故が報告されており、事故報告率は0.008%と5分の1です。
もちろん、これはあくまでリコール対象台数に対する報告数であり、販売台数や実際の使用状況までは反映されていません。それでも、同じ前提で比較できる数少ない指標で参考にはなるはず。
さらに、今回のリコールは製品設計そのものに問題があったわけではなく、バッテリーセルの製造過程における不備が原因とされています。
こうした製造上のトラブルは、Ankerに限らず、他社でも発生しうるものであり、実際にサプライヤーの不良を理由に自主回収を行ったケースは他のメーカー(1,2)にも見られます。
別のメーカーの製品を選んでいれば確実に避けられた、とは言い切れません。
たしかに大規模なリコールではありますが、それだけをもって「Ankerは信頼できない」と結論づけるのは、少し早すぎる判断かもしれません。
モバイルバッテリーは、自分がどれだけ気をつけていても、周囲の人の使い方によって影響を受けることもあります。
そのため、完全にリスクを回避するのは難しいものの、発火リスクの低いナトリウムイオン電池やリン酸鉄リチウムイオン電池を採用した、安全性の高いモバイルバッテリーを選ぶことを検討してみるのも良いでしょう。
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