衝撃、Safariの検索回数が初めて減少したとAppleが明かす。Google→AI検索への移行が原因か?
Yusuke Sakakura

Yusuke Sakakura
ブログメディア「携帯総合研究所」を運営しています。学生時代に開設して今年が16年目。スマートフォンの気になる最新情報をいち早くお届けします。各キャリア・各メーカーの発表会に参加し、取材も行います。SEの経験を活かして料金シミュレーターも開発しています。

空前の生成AIブームとビッグテックの支配力を抑えるための法改正によって、検索業界が過去にないほど慌ただしくなっています。
これまでの20年近く、ITの中心にあったのは検索サービスです。
Googleは、インターネット上の膨大なコンテンツを集約し、最適な情報を高精度で提供する検索エンジンを武器に、市場を長年にわたって支配してきました。
しかし今、反トラスト法(独占禁止法)に基づく訴訟やビッグテック規制の強化、そしてChatGPTやPerplexityといったAI検索サービスの台頭によって、その構図に変化が起きようとしています。
Safariのデフォルト検索エンジンに採用することを条件に、Googleから年間約200億ドルを得ていたAppleも例外ではありません。
Appleのサービス部門を率いるエディ・キューが、Googleの反トラスト法訴訟にて2025年4月にSafariの検索数が22年間で初めて減少したことを明かし、主な要因としてAI検索への移行を挙げています。
SafariにAI検索エンジン採用へ
今後、AI検索の普及によってGoogleを利用しなくなる可能性を指摘したエディ・キューは、AppleがChatGPTやPerplexityなどのAI検索エンジンをSafariに追加することを「積極的に検討している」と述べています。
ただし、AI検索がデフォルトに設定されることはなく、ユーザーが自ら選択できるオプションとして導入するそうです。
現在、各国では独占的な検索エンジンのプリインストールを問題視する動きが進んでおり、特定のサービスを最初から設定しておくのではなく、ユーザーの判断に委ねるよう法整備が進められています。AI検索も例外ではありません。
近い将来、SafariやChromeといったブラウザでは、初回起動時に検索エンジンを選ぶ画面が表示されるようになるでしょう。そこにはGoogleだけでなく、ChatGPTやPerplexityといったAI検索サービスが並び、ユーザーの選択肢はこれまで以上に広がっていくはずです。
なお、Appleは6月に「WWDC2025」の開催を予定しており、iOS 19やApple Intelligenceへの新機能とともに、SafariへのAI検索エンジンの追加も正式に発表される可能性があります。
AI検索エンジンへの移行、Googleに大打撃か
Googleは長年、ウェブ検索と広告を核に巨大なエコシステムを築いてきました。しかし、AI検索サービスの登場はその収益構造を根本から揺るがしかねません。
とくに大きな影響が出るのは、検索結果に広告を表示して収益を得るGoogleのビジネスモデルです。
Appleとの提携によってGoogleはSafariユーザーの膨大な検索トラフィックを得てきましたが、今後はその恩恵も受けられなくなる可能性があります。
また、米司法省はGoogleにChromeの売却を提案しています。ChromeがGoogleの手を離れれば、デフォルト検索エンジンとしてGoogle検索を優遇する理由はなくなります。
日本では、AndroidにGoogle Playをプリインストールする条件として、Chromeをデフォルトブラウザに設定したうえで、検索エンジンの変更を規制する行為が違反と認定されました。
こうした各国で進む法的規制の影響によって、iPhoneやAndroidを含むあらゆるデバイスからGoogle検索へのトラフィックが大きく減少し、Googleの検索ビジネスを支えてきた仕組みそのものが、根本から見直しを迫られるかもしれません。
AI検索がもたらすもの
Google検索からAI検索への移行は、すべての人にとって大きな変化になりそうです。
利用者はもちろん、AppleやGoogle、そして筆者のようなメディア運営者にとっても例外ではありません。
思い返せば、Googleは2023年夏から秋にかけて、個人メディアを大きく冷遇する検索アップデートを実施。多くの個人運営者が深刻な打撃を受けました。筆者も例外ではありません。集客も収益もあの時期を境に右肩下がりを続けており、回復傾向はありません。
では、もし今後Googleが検索市場で支配力を失い、AI検索エンジンが主役となれば、こうした状況は改善するのでしょうか?個人的には、そうは思えません。
現在AIに求められているのは、単なる情報の多さではなく、「正確で信頼性のある知識」だと思います。そうした情報源として優先されるのは、多くの場合、企業メディアや大手サイトになるでしょう(企業メディアもAI検索の登場でトラフィックを失っているとの指摘もある)
個人発信の情報がAIの回答に反映される可能性は(少なくとも検索や調べるといった行為においては)低く、たとえ採用されたとしても、その優先順位は低くなると考えられます。
それよりも深刻なのは、AI検索に採用されたとしても、個人メディアがそれを収益化する術がほとんどないということです。
AI検索エンジンの提供元と直接契約できるような大手であれば別ですが、個人単位では現実的とは言えません。
このままいけば、個人のテキストメディアは早晩消えていくでしょう。検索に取り上げられず、取り上げられても収益に繋がらない──そんな未来が現実になりそうな予感がします。