NetflixがiPhone・iPad向けに提供するアプリにおいて、長らく禁止されていた外部決済への誘導リンクをiOSアプリに追加しました。筆者が確認したところ、日本版のNetflixアプリにもすでに反映されています。
これにより、Netflixは各ユーザーが支払う月額料金の最大30%をAppleに収めるーーいわゆる“Apple税”を回避しつつ、アプリから効率的に有料会員を獲得して収益性を高めることが可能です。
面倒な作業の一部を省略
これまでのNetflixアプリはログインボタンが用意されていて、メンバー登録が必要と案内されているだけでしたが、最新版のNetflixアプリでは「netflix.com/join」というボタンが用意されています。
このボタンをタップすると、リーダーアプリ用に用意された新しいAPIによって「アプリを離れて外部のウェブサイトに移動します。Appleとの手続きは、ここで終了となります。」との注意画面が表示されて、契約が開発元によって管理されることや支払い方法、サブスクの管理、返金のリクエストなどはApp Storeの機能が利用できず、プライバシーやセキュリティに関する事項についてAppleが責任を負わないことが説明されます。
さらに、「続ける」をタップすると、Netflixの公式サイトが表示されてアカウントの作成や有料登録の手続きを進めることができます。
かつてNetflixもApp Storeのシステムを使ってユーザーから月額料金を集金していましたが、最大30%のApple税を嫌って、App Storeを経由した集金システムを2018年12月に削除しました。
2019年当時のNetflixの有料会員数は1億6000万人。莫大な収入源が失われることに危機感を感じたAppleは、NetflixがApp Storeを経由した集金システムを削除するテストを開始した時期に、App Storeの集金システムを復活するよう懇願していたことが、フォートナイトを開発するEpicとの裁判のなかで判明しています。
App Storeを経由した集金オプションが削除されて以降、Netflixの有料プランに加入するには、Safariなどのブラウザを立ち上げてNetflixの公式サイトにアクセスして、クレジットカードやギフトカードの情報を打ち込むなど、相当面倒な手続きが必要になっており、多くのユーザーが不満の声をあげていました。
Appleはアプリから独自決済に誘導するリンクの設置さえも禁止していましたが、反トラスト法の観点で問題視されたことで、独自決済への誘導を許可。今回、Netflixが独自決済への誘導オプションを追加したのもこれを受けたものです。
実際に独自決済への誘導機能を利用してみましたが、面倒な手続きはほぼそのままです。Netflixアプリを閉じる→Safariを起動→Netflix公式サイトに移動するというごく一部の手続きが省略されただけのことで、契約者の情報やメールアドレス、パスワード、クレジットカードやギフトカードなど支払い情報を打ち込むといった大半の作業は残されたままです。
それでもアプリを起動して登録方法が明示されていないことを理由に迷子になって登録手続きをやめてしまうユーザーは相当数いると予想されます。そういったユーザーにとって登録画面にショートカットできるボタンが追加されたのはありがたいことでしょう。
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