AppleがEUのデジタル市場法(DMA)を遵守するために、他社のアプリストアや外部決済システム、ブラウザエンジンを開放するなど大幅な変更を発表しました。
これを受けてEpic GamesやSpotifyなどが設立したApp Storeを含むアプリストアのルール改善を求める非営利団体のCoalition for App Fairnessは、Appleは明らかにDMAを遵守するつもりがなく、発表した変更内容についてもDMAの目的を達成するものではないと猛烈に批判しています。
新規ダウンロード1件につき80円が必要な新しいApple税
AppleはDMAに遵守するために、他社のアプリストア参入を認めると同時に、App Storeで配布するアプリの開発者から徴収する手数料ーーいわゆるApple税を最大30%から最大17%まで引き下げ、アプリ内課金を利用する場合は+3%の追加手数料を徴収する新たな契約を追加しました。
開発者はこれまでの契約と、新しい契約のどちらかを選ぶことになります。
新しい契約を選んで、他社のアプリストアでアプリを配布し、アプリ内課金を外部決済システムで処理することで開発者がAppleに支払う手数料はゼロまたは低く抑えらえる、、、と思われましたが、Appleは開発者がアプリをどこで配布しようが(TestFlightやApp Clipなども対象)、アプリ内課金をどこで販売しようが関係なくApple税を徴収する新たな「コアテクノロジー手数料」を設けています。
Appleはセキュリティリスク等からユーザーを保護するために、他社のアプリストアで配布されるアプリに対しても審査を行うと説明しており、コアテクノロジー手数料が妥当とする見方もあります。
ただ、コアテクノロジー手数料は年間100万回以上ダウンロードされる人気アプリを対象に、新規ダウンロード1件(再ダウンロードは含まれない)につき0.50ユーロを求めるもので、Appleが公開している試算ツールでシミュレーションしたところ、200万回ダウンロードされた場合は総額543,480ドル(約8,020万円)、月換算で45,290ドル(約660万円)と莫大なApple税の支払いが必要になります。
これは基本プレイが無料でアプリ内課金で収益を得るフリーミアムを破壊し得るもので、新たな取引オプションを選ばない事業者も出てくるでしょう。
また、App Storeに対抗したアプリストア(マーケットプレイス)を立ち上げるには100万ユーロ(約1億6000万円)の信用状も必要です。さらに、マーケットプレイスもコアテクノロジー手数料の支払いが必要で、100万回以上ではなく新規インストールの1件目から0.50ユーロが必要になるため、アプリストアを立ち上げる際も莫大なApple税が必要になります。
ポリシー違反でApp Storeから削除された人気バトルロイヤルゲーム「フォートナイト」を開発するEpicは、オリジナルストアでフォートナイトの配信を年内に再開すると宣言していますが、iPhoneでアプリを配信するために膨大な額のApple税を支払うことになりそうです。
そのEpicも設立メンバーであるCoalition for App Fairnessは、Appleが関与しないアプリのダウンロードや決済に対して手数料を徴収する行為に対してDMAの目的(デジタル市場における競争を促進し、公平性を高めること)を達成するものではないと指摘。また、Appleが開発者に対して現状の酷い取引か、開発者や消費者にとって不利で複雑な取引の2択を迫っていると強く批判しています。
これらのルール変更は3月に適用されますが、欧州委員会の判断によっては却下されたり、新たな裁判を引き起こすかもしれません。
コメントを残す