Apple Intelligenceは“Geminiの弟子”なのか。Googleの力を取り込んだAIの正体
Yusuke Sakakura
Yusuke Sakakura
ブログメディア「携帯総合研究所」を運営しています。学生時代に開設して今年が16年目。スマートフォンの気になる最新情報をいち早くお届けします。各キャリア・各メーカーの発表会に参加し、取材も行います。SEの経験を活かして料金シミュレーターも開発しています。

WWDC26でさまざまな新機能が発表されましたが、やはり大きく注目されたのは、次世代のApple IntelligenceとSiri AIでした。
Appleが約2年前に発表したApple Intelligenceは、セキュリティとプライバシーを尊重しながら、日常の操作に溶け込むようなAI体験を実現するものとして高く評価されたものの、実現は簡単ではありませんでした。
当初の構想どおりには進まず、かつてのAirPowerのように、発表したけど実現できない、ものになりかけていたようにも見えます。
そこで、AppleはGoogleの協力を得ることで、2年前のアイデアを実現させ、さらに大きく進化させました。
撮影後に写真の画角を変えられる「空間リフレーム」、AIを使って画像を拡張する機能、画面の内容を理解してアプリを操作できる機能、画面やカメラの内容を理解して答える機能。どれもAppleらしく作り込まれています。
ただ、こうなると気になるのが、どこまでGeminiが実現しているのかです。実際、Apple Intelligenceの発表直後、国内外で多かった反応は「これ、Geminiやん」というものでした。
ただのGeminiではない。でも無関係でもない
こうした反応に対して、Appleのワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデントであるGreg “Joz” Joswiak氏は、EFTMのインタビューでSiri AIがGeminiアプリやGemini Assistantを包み直しただけのものではないと説明しています。
AppleはWWDC26の基調講演の中でも、Googleとの緊密なコラボレーションによって次世代のApple Foundation Models(AFM)を共同で構築し、その際に「Geminiファミリーのモデルを支えるテクノロジーを活用」したと説明していました。
それでもなぜ、「ただのGemini」と誤解されたのか。
Joz氏は、GoogleにはGeminiという名前のものが多いと説明しています。
例えばAppleの場合、AI機能を支える仕組みに「Apple Intelligence」という名前を付けています。そのApple Intelligenceによって強化される新しいAIアシスタントが「Siri AI」であり、Apple Intelligenceの中核となるモデル群が「Apple Foundation Models」です。
一方で、GeminiはGoogleのAIブランドとして、より広い意味で使われています。
Geminiはアプリの名前でもあり、AIアシスタントの名前でもあり、モデルシリーズの名前でもあります。そのため、「Geminiを使っている」と言っても、それがGeminiアプリを使っているのか、AIアシスタントとしてのGeminiを使っているのか、モデルとしてのGeminiを使っているのかで意味が変わります。
では、実際にはGeminiがどこで関わっているのか。
Joz氏によると、次世代のAFMの開発過程で、Googleのフロンティアモデルが出力した結果の一部を活用したと説明しています。
フロンティアモデルとは、各社が開発する最先端クラスの大規模AIモデルのこと。Geminiで言えば、アプリとしてのGeminiではなく、その裏側にある高性能な基盤モデルに近い存在です。
Geminiに修行をつけてもらったAFM

つまり、GeminiがそのままApple Intelligenceの各機能を動かしているわけではありません。
Apple Intelligenceを支えているのは、Googleと協力してApple向けに構築された完全に新しいAFMです。
ただ、そのAFMの開発にGeminiが関わっています。となると、AFMが生み出す機能は誰の成果なのか。どこまでがApple独自の進化で、どこからがGoogleの力を借りた進化なのか。
Siri AIと次世代のApple Intelligence、とんでもないパワーアップを遂げていてSugeeeee!!となる一方で、モデルにGeminiが使われていることもあって、どこまでの機能がGeminiで実現可能になったのか #WWDC26
— Yusuke Sakakura🍎携帯総合研究所 (@xeno_twit) June 8, 2026
例えば、ドラゴンボールの孫悟飯の父親は孫悟空です。
ただ、幼いころの悟飯はピッコロに修行をつけてもらった影響で、魔閃光を使うことができます。それでも、悟飯は悟空の子供であり、ピッコロではありません。
では、AFMを作ったのはAppleですが、Geminiに修行をつけてもらったAFMが実現する機能は、誰の成果なのでしょうか。これは悟飯の魔閃光と同じで、ピッコロとは言い切れません。かといって、Appleだけの成果とも言い切れません。
Geminiに修行をつけてもらったAFMが可能にした。
今のApple Intelligenceを表現するなら、これが一番近いのではないでしょうか。
ちなみに、ピッコロの修行は一時的なものでしたが、AppleとGoogleは年間約10億ドル規模の契約と報じられていたことから継続的な関係になりそうです。
モデルだけでなく、実行環境にもGoogleの存在
AppleとGoogleが共同で構築した次世代のAFMは、デバイス上だけでなく、クラウド上でも実行されます。
デバイス上で処理しきれない重いAI処理は、クラウド側のモデルが担当します。ここで使われるのが、ユーザーのデータを保存せず、Appleや第三者が中身を見られないようにするための仕組み「Private Cloud Compute(PCC)」です。

Appleは2年前、PCCについて、Apple Siliconを使って特別に作ったサーバー上でモデルを動かすと説明していました。
Apple Siliconサーバーを使うことで、iPhoneで使われてきたプライバシー機能やセキュリティ設計をクラウド側にも拡張。さらに、データを保存しないこと、Apple自身も中身を見られないこと、第三者が検証できることによって、クラウド処理でも高い透明性を確保するという考え方です。
しかし、次世代のApple Intelligenceでは少し状況が変わります。
最も高性能なサーバーベースのモデル、AFM 3 Cloud Proでは、Google Cloud上のNVIDIA GPUが使われます。
Appleは、Google Cloud上でもPCCの保護の仕組みは変わらないと説明しています。データは保存されず、GoogleやNVIDIAを含む運用者が特権的にアクセスできない設計で、第三者が検証できる仕組みも維持される、という説明です。
ただ、少なくとも「Apple Siliconを使って特別に作ったサーバーで動かす」という当初の説明からは、一歩踏み出した形になります。安全性が失われたという話ではありませんが、Appleだけで完結する仕組みではなくなったことは確かです。
モデルの開発にも、クラウドの実行環境にもGoogleの存在がある。だからこそ、Apple Intelligenceは、ただのGeminiではない一方で、完全にAppleだけで作られたAIとも言い切れません。
Geminiに修行をつけてもらい、Googleのクラウドにも支えられる。けれど、ユーザーが触れるのはAppleの体験として作り直されたAIです。次世代のApple Intelligenceは、ただのGeminiではなく、Googleの力を取り込んだAppleのAIなのだと思います。





















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