AppleのティムクックCEOが12月に来日し、熊本にある教育機関やソニーのイメージセンサー製造施設、東京にあるApple Storeや首相官邸、福井にあるApple Watchバンドのサプライチェーンに訪問しました。
このプロモーションを兼ねた来日で特に注目されたのが首相官邸に訪問したことでしょう。報道によれば、技術的に課題のあるiPhoneへのマイナンバーカード搭載に関して岸田首相が協力を要請したようです。
逆にティムクックは非公式アプリストアの解放を求める動きに対して見直しを求めたと日本経済新聞が報じています。これこそが3年ぶりに来日した最大の理由だったのかもしれません。
日本でも問題視されるアプリストア規制
内閣に設置されたデジタル市場競争会議が4月に公表した中間報告書では、AppleがApp Store以外のアプリストアを禁止していることが問題視されました。
iPhone向けアプリストア配信市場をAppleが独占しているため、アプリやデジタルコンテンツを販売するためにアプリストアを利用する際に徴収される手数料について競争が機能せず、競争水準から乖離している可能性がある。また、その手数料率をサードパーティ・デベロッパが受け入れざるを得ず、負担となっていることが懸念される。
Androidでは、Googleが提供するGoogle Playストアだけでなく、AmazonやSamsungなど他社が提供するアプリストアも利用できますが、iPhoneやiPadでは原則App Storeでしかアプリをダウンロードできません。
Appleが強制しているのは公式アプリストアの利用だけでなく、有料アプリやアプリ内課金の支払い方法についても最大30%の手数料を強制的に徴収するAppleのシステムを経由するよう原則強制しています。AppleだけでなくGoogleも自社のストアを利用する場合は、Googleのシステムを経由するよう原則強制しています。
このAppleとGoogleのポリシーは長年容認されていましたが、世界中で高い人気を誇るバトルロイヤルゲーム「フォートナイト」を開発するEpicが大きな抗議の意味も込めて禁止されている独自決済機能を搭載。これに対してAppleとGoogleがフォートナイトを公式のアプリストアから削除するとEpicが両社を訴えました。
多くの開発者が巨大なプラットフォーマーと戦うEpicを支持しており、国や政府が干渉し始めたこともあってAppleとGoogleはわずかながらポリシーを緩和させ始めています。
デジタル市場競争会議は2023年に最終報告はまとめる予定ですが、日本もEUに習い、Appleに対して他社のアプリストアも利用できるように法規制する可能性があります。
EUはAppleを厳しく監視していて実質的にAppleを狙い撃ちしたUSB-Cの搭載を法的に義務付けるだけでなく、ユーザー数や売上高などが一定基準に達した巨大企業に対して、自社のサービスやプラットフォームを他社や開発者に開放することを義務付け、違反した場合は年間売上高の最大10%の罰金、業務停止などの罰則を設けたEUの独自ルールーーデジタル市場法(DMA)が来年5月に適用されます。
Bloombergの報道では、Appleはこれに従う方針を決めたとされていましたが、過去5年間において13.2兆円以上を国内のサプライチェーンに支出している日本においては簡単に容認できず、マイナンバーカードのiPhone搭載で協力を求めてきた岸田首相に対して逆に要求した形です。
他社のアプリストアを容認しても収益に大きな影響はないといった見方もあり、Appleが最も問題視しているのがセキュリティ問題であることを考えれば、国ごとによって方針が異なるのは不思議な話ですが、AppleはEUの法規制に従うものの、他社のアプリストアで配布する場合においても一定のセキュリティ要件を義務付け、何らかの形でアプリを検証して承認したアプリのみインストールすることを検討していると報じられています。
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