ポートレスiPhoneに近づく?Qi 50W標準化が進行中、実現は2028年か
Yusuke Sakakura
Yusuke Sakakura
ブログメディア「携帯総合研究所」を運営しています。学生時代に開設して今年が16年目。スマートフォンの気になる最新情報をいち早くお届けします。各キャリア・各メーカーの発表会に参加し、取材も行います。SEの経験を活かして料金シミュレーターも開発しています。

動画を見ているときやデスクで作業しているときなど、置くだけで充電できるワイヤレス充電は、有線充電よりも手軽です。一方で、充電速度ではまだ有線に及ばず、急いでいるときは有線充電を選ぶことがほとんどです。
Qi2やMagSafeの普及によってワイヤレス充電の出力は底上げされましたが、Galaxy S26 Ultraのように60Wの有線充電に対応するモデルと比べると、まだ大きな差があります。
こうした課題を解消する次の一手として、最大50WのQiワイヤレス充電の標準化が進んでいるようです。
Qi 50Wに向けた技術会議が開催
中国メディアのIT之家によると、Wireless Power Consortium(WPC)が北京のXiaomi本社で「Qi Off-cycle Meeting」を開催しました。
WPCは、ワイヤレス充電の国際標準であるQi規格を策定する団体です。今回の会議では、次世代の高出力ワイヤレス充電となる「Qi 50W」をテーマに、標準仕様の議論、試作機のテスト、メーカー間の相互接続性の検証が行われたと報じられています。
会議にはXiaomiのほか、Apple、Google、Huawei、OPPO、vivo、Honor、Anker、NXP、Renesas、Panasonic Automotive Systemsなど、端末メーカーから半導体、アクセサリ、車載関連企業まで20社以上が参加したとのことです。
現行のQi2 25W、その先にある50W
現在のQi規格では、Qi v2.2.1が「Qi2 25W」として展開されています。
Qi2は2023年に発表された規格で、AppleのMagSafeをベースにしたマグネット機能を導入しました。スマートフォンと充電器の位置ズレを抑えることで、より安定したワイヤレス充電を実現するほか、ウォレットケースや自撮り棒などのマグネットアクセサリにも対応します。
その後、2025年に発表されたQi2 25Wでは、最大出力が従来の15Wから25Wに引き上げられました。実際にGoogle Pixel 10 Pro XLもQi2 25Wに対応しています。
今回の会議で議論されたQi 50Wは、その先にある高出力化に向けた動きです。
IT之家によると、Qi 50Wは現在開発中で、2028年の正式発表が計画されているとのこと。つまり、Qi2 25Wで進んだワイヤレス充電の高速化を、さらに50W級へ引き上げるための標準化が進められていることになります。
Xiaomiが提案する「小インダクタンス、低電圧、高出力」方式
今回の会議で中心的な役割を担っているのがXiaomiです。
Xiaomiはハイパーチャージを冠した独自の高速ワイヤレス充電を展開しており、Qi 50Wの標準化に向けて、コイルモジュールの損失を抑えやすい小インダクタンスと、安全性や充電効率、発熱管理のバランスを取りやすい低電圧アーキテクチャを組み合わせた高出力方式をWPCに提案したと伝えられています。
メーカー独自のワイヤレス急速充電であれば、すでに50W級を実現している製品もあります。ただし、独自規格では対応するスマートフォンや充電器が限られます。
Qi 50Wとして国際標準にまとまれば、スマートフォン、充電器、モバイルバッテリー、車載充電器など、幅広い製品で互換性を保ちながらワイヤレス充電を高速化できる可能性があります。
AppleやGoogleも参加。iPhoneやPixelにも影響か
今回の会議で特に注目されるのが、AppleとGoogleの参加です。
AppleはMagSafeによって、磁石で位置合わせするワイヤレス充電をスマートフォン市場に広げたメーカーです。Qi2にもMagSafeの技術がベースとして使われています。
GoogleもPixelシリーズでQi2対応を進めており、Androidメーカーの中ではQi標準の新しい仕様を取り入れる動きが目立つ存在です。
もちろん、今回の会議に参加したからといって、将来のiPhoneやPixelがQi 50Wに対応すると決まったわけではありません。
それでも、AppleとGoogleはQi2の普及に深く関わってきたメーカーです。両社がQi 50Wの標準化に関わる技術会議に参加していることを考えると、今後のiPhoneやPixelのワイヤレス充電仕様に影響する可能性はあります。
AndroidメーカーのQi2対応を後押しする可能性も
Androidスマートフォン全体を見ると、Qi2の採用はまだ限定的です。
Qi2対応の充電器やモバイルバッテリーは増えていますが、スマートフォン本体に磁石を内蔵し、正式にQi2へ対応するAndroid端末は多くありません。
理由の1つは、スマートフォンケースの存在です。
筆者が某メーカーを取材したところ、多くのユーザーはスマートフォンにケースを装着して使うため、本体側に磁石を内蔵するのではなく、マグネット対応ケースで対応する考え方があるとのことでした。本体に磁石を内蔵しないことで、コストを抑えられるメリットもあります。
さらに、中国メーカーを中心に独自の急速充電技術が発展してきたことも、Qi2対応が広がりにくい理由の1つです。すでに高出力な有線充電やワイヤレス充電を実現しているメーカーにとって、出力面で見劣りするQi2 25Wを採用するメリットは大きくありませんでした。
ただし、Qi 50Wが国際標準としてまとまれば、この点は変わる可能性があります。
アクセサリとの互換性を保ちながら最大50Wのワイヤレス充電を実現できるのであれば、AndroidメーカーにとってもQi2系の磁気アライメントを採用するメリットは大きくなります。
特に、今回の50W標準化にXiaomiが深く関わっている点は重要です。独自規格で高速充電を進めてきた中国メーカーの技術がQi標準に取り込まれる流れになれば、AndroidスマートフォンのQi2対応が進むきっかけになる可能性があります。
ポートレスiPhoneへの布石に?
Qi 50Wは2028年の正式発表が計画されている段階のため、すぐにiPhoneやPixel、Xiaomiスマートフォンで50Wワイヤレス充電が使えるようになるわけではありません。
それでも、Qi2 25Wに続いてQi 50Wが標準化されれば、ワイヤレス充電は有線充電の代替としてより選びやすくなります。
特にAppleにとっては、将来的なポートレスiPhoneを考えるうえでも重要な動きです。ポートレスiPhoneは何年も前から噂されており、iPhone AirでもAppleがUSB-Cポートを廃止し、ワイヤレス充電に完全移行する案を検討していたと報じられていました。
Appleが将来のiPhoneでUSB-C端子を廃止するかどうかは不明です。ただ、Qi 50Wのような高出力ワイヤレス充電の標準化が進めば、ポートレスiPhoneを検討するうえでの技術的なハードルは下がるはずです。






















コメントを残す