Appleが2017年6月6日に開催されたWWDC17で次期「iOS 11」が先行発表された。2017年秋に正式配信される。この記事では「iOS 11」の新機能と変更点を紹介、解説する。
目次
- メッセージ
- Apple Pay
- Siri
- カメラ
- 写真
- コントロールセンター
- 通知画面
- マップ
- Home Kit
- Apple Music
- App Store
- マシンラーニング
- AR
- Dock for iPad
- Multitasking for iPad
- Drag & Drop for iPad
- QuickType for iPad
- Files
- インスタントマークアップ
- インスタントノート
メッセージ
メッセージでは、iOS 10で追加されたメッセージアプリがアップデートされる。具体的にはアプリにアクセスしやすいようにドロワーが刷新される。現在はApp Storeのアイコンをタップするとようやくアプリが表示されるが、iOS 11ではアプリが常時表示されてバーをスクロールするとアイコンが少し大きく表示され、アプリを選択するとメッセージに挿入できるアイコンなどが表示される。
また、メッセージにiCloudが導入される。iCloudによってメッセージの内容が自動で同期されるため、別のデバイスでメッセージアプリを起動した時でも同じメッセージが確認できるほか、iPhoneでメッセージを開封した時に表示されるアニメーションエフェクトも同期される。さらに、メッセージはデバイスごとに最適化されて容量は小さく、バックアップは素早く可能になる。エンドツーエンドの強力な暗号化にも対応する。
Apple Pay
アメリカで50%の小売店が導入する非接触のモバイル決済としてナンバーワンのApple Pay。これまでウェブやアプリ、レジでの小売店や企業に対して決済ができたが、iOS 11では個人間の送金にも対応する。送金はメッセージのApple Payアプリから操作する、メッセージ上で相手にお金を支払ったり、支払いを要求することもできる。もちろん、送金時にはTouch IDで認証するため、安全に送金できる。
送金されたお金はApple Pay Cashとしてチャージされ、iCloudを通じてiOSデバイス間で共有できる。チャージした金額はApple Payの決済に使ったり、友だちや家族に送金したり、銀行に預けることも可能だ。
Siri
21言語と36ヶ国で1ヶ月に3億2500万人が利用するSiri。iOS 11ではディープラーニングよって作られた自然で表現豊かな音声にアップグレードされる。例えば、同じ「Sunny」でも異なる感情で発音、表現することが可能になる
Siriのインターフェースも大幅にアップデートされる。うまく結果が表示されない場合は「こんなことも試してみて」とフォローアップしてくれたり、複数結果の表示、翻訳機能にも対応する。翻訳機能は発音機能も利用できる。例えば、英語から中国語に翻訳した結果をSiriが表現豊かになった発音で読み上げてくれる。翻訳機能はベータ版として提供され、最初は英語から中国語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語の翻訳に対応する。日本語は含まれていないが、対応言語は順次拡大していく予定だ。
サードパーティアプリがSiriの機能にアクセスできる「SiriKit」では利用できる機能が増える。乗車予約や決済、メッセージ、写真検索、VoIP、ワークアウト、車の操作、タスクリスト、QRコードなどだ。対応アプリにはOmniFocus 2、Citi Mobile、Evernote、Things 3、WeChatなどだ。
Siriは自分が次に何がしたいか、何をするべきかも理解する。iOS 10でも次に利用するアプリの候補などが利用できるが、iOS 11ではさらに拡大する。例えば、メッセージで「今どこにいるの?」と聞かれたら、Siriが自宅までの距離を調べて検索候補に表示してアシストしてくれる。また、Safariでホテルを予約した場合、自動でカレンダーに登録してくれたりもする。
SiriはiPhoneやiPad、Macなどすべてのデバイスでサポートしてくれる。エンドツーエンドの強力な暗号化によってセキュリティを心配する必要もない。
カメラ
iOS 11でカメラも進化する。iOS 10では動画圧縮規格にH.264を採用しているが、iOS 11ではさらに進んだH.265/HEVCをサポートする。写真でもJPEGに対してHEIFを採用する。これによっていずれも2倍の圧縮効率を実現し、iOS 10に比べて写真と動画のサイズが半分になる。iPhoneの空き容量を大幅に増やすことができる。
iPhone 7 Plusで利用できるポートレートモードは画質の向上、暗い場所でのパフォーマンス改善、光学式手ブレ補正、自然な色合いでフラッシュが利用できるTrue Tone flash、HDRを新たにサポートする。また開発者には「Depth API」が提供される。具体的なことは明かされなかったが、iPhone 7 Plusで記録した被写界深度のデータにサードパーティのカメラアプリがアクセスできるようになる。
写真
写真を撮影日や場所でまとめてくれるメモリーはペットやスポーツ、アウトドア、結婚式、赤ちゃんなどイベントや被写体を認識してまとめてくれるようになる。Live Photosはトリム、前後1.5秒からお気に入りのシーンをキー写真として設定したり、ミュート、ループ、逆再生、長時間露光が可能になる。
コントロールセンター
iPhone/iPadのさまざまな機能にショートカットアクセスできるコントロールセンターはデザインと操作性が刷新される。
ロック画面からコントロールセンターを起動すると全ての機能が1枚の画面に表示される。iOS 10のようにページをめくる必要はない。各アイコンをタップすると小さなアニメーションと共に操作できる。3D Touchで操作すると隠れている機能を呼び出すことができる。
最もアクセスするであろう機内モードのエリアを3D Touchで操作すると、AirDropやアクセスポイント共有のON/OFFが表示される。特にアクセスポイント共有は初めてコントロールセンターに追加された機能だ。
通知画面
通知画面もロック画面と同じようなデザインに刷新された。これまでは通知が全部表示されていたが、最初の画面に表示される通知は未読のものだけになった。すべての通知にアクセスするには画面をスワイプアップする。
マップ
マップには新たにモール機能が追加される。これによって店内のフロアマップを確認したり、フロア内の店舗情報を確認できるカード、ディレクトリや検索機能によって屋外だけでなく屋内にも強くなった。提供されるのはボストン、シカゴ、香港、ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨーク、フィラデルフィア、サンフランシスコ、サンノゼ、東京、ワシントンだ。空港でセキュリティゲートが確認できる。対応するのは主要空港で日本では利用できない。
ナビゲーションも進化する。ナビ画面の左上には速度制限が表示される。ジャンクション等で起きやすい進入レーンの間違いもわかりやすくガイダンスを表示してマップでサポートする。新たにドライビングモードも搭載する。iPhoneが運転していることを検知するとドライビングモードがオンになって電話、テキストメッセージ、通知を遮断する。連絡してきた人には運転中であることをメッセージで知らせます。
Home Kit
iPhoneやiPadで家電を操作できるHomeKitはSiriによる家電操作に対応する。対応家電には新たにスピーカーが追加され、AirPlay 2対応製品では複数のオーディオシステムやスピーカーを操作することができる。Apple Music
2,700万人の有料会員を突破したApple Music。iOS 11では友だちが聞いている音楽が「For You」に表示される。また、友だちでなくてもパブリックアカウントを公開することでプレイリストを共有することもできる。開発者にはApple MusicのサービスにフルアクセスできるApple Music Kitが提供される。
App Store
今回発表された中で最もインパクトがデカイのがApp Storeの大幅刷新だ。アプリのアイコンだけでなく、中身もすべて新しいデザインに変更され機能も大幅に追加・削除・変更される。
従来のおすすめ、カテゴリ、ランキングタブは廃止された。新たにアプリの最新情報が確認できる「Today」、人気のあるゲームアプリをまとめて確認できる「ゲーム」、毎日に生活に欠かせない「App」タブが追加され、廃止された機能タブ内に内包される形になったため、カテゴリやランキングにアクセスするには少し手間がかかるようになった。
これまでのApp Storeはアプリを探すのに向いていたかもしれないが、流行のアプリや優れたアプリを探すのは面倒だった。そこで役立つのが新たに追加された「Today」タブだ。App Storeのエディターチームによって世界初公開の情報や舞台裏のエピソードなどが配信されたり、Pokémon GOで一番レアなキャラクターを見つけられる場所などアプリのヒントやコツ、App Storeのエディターによって優れたアプリやゲームがテーマ別にまとめて紹介してくれる。
アプリのダウンロードページではこれまでは1つだったプロモーションビデオが3つまで公開できるようになった。アプリの評価はより見やすくなり、より早く次のレビューを確認できる。
マシンラーニング
すでに標準機能として搭載しているiOSのマシンラーニング(機械学習)。iOSではiPhoneのバッテリー管理やメモリーの顔認識、watchOS 4の新しいSiriのウォッチフェイスで利用されているが、iOS 11では開発者にも解放される。
解放されるのはカメラの顔検出、顔追跡、テキスト・バーコード・オブジェクト検出などが利用できる視覚処理の「Vision API」、テキストの言語識別など自然言語処理の「Natural Language API」などだ。
なお、マシンラーニングはデバイス内で処理され、データのプライバシーも守られる。性能はGalaxy S8やGoogle Pixelに比べて6倍高速な画像認識を実現した。
AR
iOS 11でついにAR(拡張現実)をサポートする。開発者には「AR Kit」が提供され、アプリに組み込むことが可能になる。ARKitを使ったデモではiPhoneのカメラで撮影した机をディスプレイに映し出して仮想的にコーヒーカップや証明を配置していた。
ARKitでは高速で安定したモーショントラッキングや距離の推定などが利用できるほかゲームエンジン、開発キットのUnityやUnreal、SceneKitもサポートする。
ARKitをの導入事例としてわかりやすいのはポケモンGOだ。ARモードで出現したポケモンが地面にリアルに立つように配置されるほか、モンスターボールが地面にバウンドするエフェクトもリアルに表現できる。
Appleが披露したデモは大したものではなかったが、その後、披露されたWingnut ARが参加者や視聴者の度肝を抜いた。何もないテーブルをiPadで映し出すとARでリアルに作られた街が出現。街中を人が歩き、空から飛行機が降り立つと砂が舞うなど動作もリアル。さらに、空中から攻撃を受けて混乱した人々が実際にそこにあるテーブルから飛び降りるといった演出など、ARというよりもVRのような迫力を誇っていた。ARKitにはかなり期待して良いだろう。
なお、Wingnut ARは今年後半にAppStoreにゲームとしてリリースされる。近い将来、ARがゲームの世界を変えることは間違いなさそうだ。また、迫力のあるARゲームはiPhoneよりも画面の大きいiPadの方が向いてるかもしれない。
Dock for iPad
iOS 11はiPadのための過去最大のアップデートになる。その一つが「Dock」だ。
Dockはアプリケーションをショートカット起動するための棚だ。これまではホームボタンをタップしてDockにアクセスできたが、iOS 11では画面下からスワイプアップするだけでどの画面からでもDockが呼び出せる。
Multitasking for iPad
iOS 11ではマルチタスクも進化する。Dockを表示してアプリアイコンをつまんで画面端に持って行くとポップアップ式にアプリを表示できる。そのままSplit Viewとして画面分割してアプリを利用することも可能だ。
さらにアプリスイッチャーも大幅に刷新される。iPhoneとはまったく異なるMacのSpacesに近いインターフェースで多くのアプリが一覧表示され、画面の端に表示されるコントロールセンターに素早くアクセスできる。
Drag & Drop for iPad
テキストやURL、画像などあらゆるもののドラッグ&ドロップにも対応する。複数の写真を一度に選択してメールに添付することも可能だ。
QuickType for iPad
iPadのQWERTYキーボードがフリック操作にも対応する。例えば「S」キーを下にフリックすると「#」をショートカット入力することが可能だ。
Files
新しいアプリ「File」が導入される。Fileでは、階層化されたフォルダやプログレスバー、リストビュー、お気に入り、検索、タブといった機能が利用できるMacのFinderに比べると機能は限られているが、それでも充分な機能が利用できる。
FilesはDropboxやGoogle Driveなどのサードパーティのクラウドサービスとも連携する。Fileアプリからアクセスできるということだ。
インスタントマークアップ
iOS 11ではSafariやPDF(PDFの作成にも対応)、スクリーンショットにカンタンにApple Pencilなどで文字入れができる「インスタントマークアップ」をサポートする。
インスタントノート
メモを取りたい時に指紋認証が必要なiPadはちょっとめんどうだ。そんな時に便利なのが新機能「インスタントノート」でロック画面で簡易メモを作成できる。さらに、文章中に手書きのスケッチを埋め込んだり、カメラで書類を読み取って手書きで署名を追加することも可能。手書きしたメモは検索にも対応する。
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