ソフトバンクの見事な値上げの地ならし、肝心の料金改定は肩透かし
Yusuke Sakakura
Yusuke Sakakura
ブログメディア「携帯総合研究所」を運営しています。学生時代に開設して今年が16年目。スマートフォンの気になる最新情報をいち早くお届けします。各キャリア・各メーカーの発表会に参加し、取材も行います。SEの経験を活かして料金シミュレーターも開発しています。

ソフトバンクが料金プランの値上げに踏み切りました。
ワイモバイルを含む既存プランは6月から順次値上げされ、新たに月額1万円を超える「ペイトク2」も投入されます。値上げそのものは、原価や人件費の高騰を踏まえれば、ある程度やむを得ないと受け止める人も多いでしょう。
ただ、今回あらためて感じたのは、ソフトバンクの値上げの進め方のうまさです。ahamoが料金据え置きのままデータ容量を増やし、実質的な値下げに踏み切った際、宮川社長は、あらゆるものの価格が上がるなかで通信業界だけが値下げしていると指摘し、料金見直しの必要性をにじませていました。
値上げムードを作ったのはソフトバンクだった
その翌年、ドコモとKDDIが値上げに動くと、業界上位2社の“お兄ちゃん”が値上げに踏み切ったことをチャンスと表現し、業界全体の値上げムードを歓迎しました。
一方で、楽天モバイルが値上げしない宣言をして値上げムードをスカすと、ローミングに頼る構造を念頭に、かなり踏み込んだ言葉で批判しています。本人も「言い過ぎ」とするほどでしたが、それだけ値上げの必要性を強く訴えていたとも言えます。
では、ソフトバンク自身はどうだったのか。値上げムードを作りながら、純増を積み上げていきました。
流れが変わったのは昨年9月です。特典目当てで短期解約を繰り返す、いわゆるホッピングユーザーへの対策を進めた結果、わずか3か月で10万人の減少を記録しました。これについてソフトバンクは「最大の純減」としながらも、想定どおりの動きだと説明。狙いは、ホッピングユーザーの流入を抑えつつ解約率を下げ、増収増益を継続できる構造へと切り替えることにありました。
解約率の改善には半年ほどかかるとしていましたが、その半年が経過したタイミングで、今回の値上げが発表されたわけです。
こうして振り返ると、かなり周到です。値上げムードを作りながらも自らは静観し、他社の料金改定については「いらないものが付いてきて値上がりしたという構造はWin-Winではない」と批判する場面もありました。長期利用者向けの割引の可能性にも触れていたことから、どんなプランを打ち出してくるのか期待していた人もいたはずです。
期待を持たせた料金改定、出てきた中身は批判した付加価値型
しかし、実際に出てきたのは、衛星通信や海外データ通信、優先接続といった特典を束ねた、いわゆる付加価値型の料金プランでした。
方向性としてはauの料金改定と大きくは変わりません、というかほぼ同じです。宮川社長がこれまで疑問を呈してきた「いらないものが付いてきて値上がりする構造」に、結局は自らも乗った形です。
もちろん、これらの特典に価値を感じる人にとっては話は別です。衛星通信に安心感を覚える人もいれば、海外データ通信や優先接続を便利だと感じる人もいるでしょう。ただ、日本では日常的に圏外で困る場面がそこまで多いわけではなく、海外データ通信も使う人と使わない人がはっきり分かれます。優先接続については、他の利用者が犠牲になると批判していたものです。
宮川氏が個人的な考えとしながら示唆していた長期割も、今回は実現しませんでした。そうした経緯を踏まえると、やはり期待はずれでした。
結局、ソフトバンクは値上げムードを作って、他社に値上げさせ、批判と影響が少ないタイミングで値上げを発表したことになります。
会見の場には、これまで値上げの必要性を繰り返し語ってきた宮川社長の姿はありませんでした。ワイモバイルが値上げした際も、こうした発表会に立つことはなかったですが、あれだけ料金改定について発信してきたのであれば、今回は自ら説明の場に立ち、真正面から語ってほしかったところです。値上げそのものに理解はあっても、そこは少し物足りなさが残りました。
先に値上げに踏み切ったドコモやKDDIがどう感じたのかも聞いてみたいところ。次回の決算説明会では各社の考えが聞かれるでしょう。
結局のところ、この1年あまりの料金改定の流れを通じて感じたのは、ソフトバンクと宮川社長のしたたかさでした。必要性を訴え、空気を整え、他社の動きも見極めたうえで、最も値上げしやすいタイミングで自らも動く。今回の改定は、反発をできるだけ抑えながら実行した、かなり計算された一手に見えました。
























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