Appleが6月6日に開催した開発者向けのイベントWWDC2023で、“初の空間コンピュータ”と名乗る新製品「Apple Vision Pro」を発表しました。
デジタルの世界と現実の世界をシームレスに融合することで、自分だけの空間にこもるだけではなく、他者ともコミュニケーションを取りながらも使用できるAR/VRヘッドセットで、パーソナルコンピューティングのMac、モバイルコンピューティングのiPhoneに次ぐ、空間コンピューティングもたらすまったく新しいデバイスの登場です。
販売価格は3,499ドル、日本円で約50万円。米国で日本時間1月19日(金)22時から予約受付を開始し、現地時間2月2日に発売されます。米国以外での発売時期は2024年末です。
Apple Vision Proでできること
Apple Vision Proを装着すると、レンズを通して現実空間が広がり、目の前にはホーム画面が表示されます。
ホーム画面はまったく新しいものではなく、Safri、写真、メモ、App Store、メール、メッセージ、Keynote、ミュージック、マインドフルネス、フリーフォーム、Apple TV、設定といったアイコンが並び、その横にはタスクバーのようなタブが配置される親しみのあるデザインです。
まるでそこにあるかのような実在性が感じられるように作り込まれたインターフェースは、立体感があり、光に動的に反応して投影される影によってアプリの大きさや距離を把握することが可能。
ディスプレイという制限から解き放たれたアプリは、大きさを自由に変更して人間より大きく拡大できます。また、リアルな物体を動かすように自然に配置を変更できるほか、複数のアプリを左右または上下に並べたり、前後に重ねられます。
シームレスな体験
デジタルクラウンを回せば、現実世界からデジタル空間に飛び出すこともできます。オン/オフではなくグラデーション的に空間を作り出せるため、部屋の一部を空間化したり完全に別の世界に没入することも可能。
Apple Vision Proは周りの人から孤立させないことが大きな特徴です。
自分から相手が見えるだけでなく、相手からも自分が見えるようにヘッドセットの外側にもディスプレイが設置され、相手が感情を読み取るために重要な装着者の目が映し出されます。Appleはこの技術を「EyeSight」と命名しています。
ユーザーがアプリを使っていたり、コンテンツに集中しているときなどは表示が変わるため、集中して話しかけて欲しくない意思を視覚的に伝えられそうです。
現実世界からデジタル世界に完全に飛び出しているときも他人とのコミュニケーションを断絶しないように相手が近くにいるときは透過して近くにいることを知らせます。知らずに相手が真正面に立っていて恐怖を感じるということもないでしょう。
また、相手が近くにいるときはEyeSightで相手に自分の目を表示するため、ヘッドセットをいちいち外すことなくそのままコミュニケーションが取れます。
FaceTimeでは、相手が実物大で表示され、内蔵されたスピーカーの空間オーディオによって、それぞれのタイルから声が聞こえるため、スムーズにコミュニケーションできます。
Apple初の3Dカメラで思い出を記録
Apple Vison ProはiCloudにも対応しているため、iPhoneで撮影した写真や動画をスムーズに確認できます。壮大なパノラマ写真を表示すれば、撮影の場所に行ったかのような気になることも。
Apple初の3Dカメラを備えていて、シャッターボタンを押すだけで大切な思い出を3Dカメラによる映像と空間オーディオによる音の2つの3次元で記録でき、写真アプリから再生すれば当時に戻って思い出を何回でも体験することができます。
映画館をはるかに超える体験
エンタメも優れています。周囲の明るさを自動的に暗くして自分がいるスペースをほのかに照らし、3D音響の空間オーディオによって自分の部屋に映画館を作り出したり、デジタル空間に飛び出して巨大なスクリーンでお気に入りの映画を楽しむことが可能。
この空間を飛行機の機内に持ち運ぶこともできます。周囲の座席が消え、ノイズキャンセリングによって音も消えた空間で映像が楽しめます。
コントローラーをワイヤレス接続してデジタル空間に巨大なスクリーンを広げてゲームをプレイすることも。発売に合わせて100以上のApple Arcadeのゲームがプレイできます。映画やドラマはApple TV+はもちろん、Disney+のコンテンツにも対応します。
軽量を重視したデザイン
Apple史上最も野心的な製品には、最も先進的で最も軽い素材が使用されています。ヘッドセットには重要なことです。
フロントには3Dガラスが備えられ、内側には現実世界を取り込むカメラとセンサーが内蔵。ガラスを支える軽量な航空宇宙産業レベルのアルミニウムを使用したフレームには3Dカメラ用のシャッターボタンとデジタルクラウンが備えられます。
ハイテクなフロント部に対して、バックは柔らかい繊維部品を贅沢に組み合わせて、装着時の快適さと持ち運びやすさを実現。数千人の頭部を研究・分析して、ひとりひとりに合わせて完璧に調整しフィットするモジュラーシステムを開発。
幅広い形状とサイズを用意する遮光パッドはしなやかに曲がり、ヘッドバンドは一本の3D編みで特殊なリブ構造によってクッション性・通気性・伸縮性を保有。取り付けはシンプルかつ強固でサイズを変更したり、別のバンドにスイッチすることも。また、使用中にフィット感を微調整できるダイヤルも備えられます。
メガネをかけている人のためにZEISSと協力してマグネットで取り付け可能なレンズも用意されます。
電源に繋いで1日中使えるほか、ポケットにスッキリおさまるバッテリーを編み込み式のケーブルで接続すれば最大2時間の連続動作または最大2.5時間のビデオ再生が可能。バッテリーを本体から切り離したことで軽量化されています。
コントローラーなし。目・手・声で操作する魔法の体験
AR/VRデバイスはコントローラを使って操作するものがほとんどですが、Apple Vision Proにコントローラーやハードウェアは必要ありません。
ヘッドセットに搭載された膨大なセンサーによって、最も直感的なツールである目・手・声で操作できる魔法の体験をもたらします。
例えば、視線を動かしてアプリのアイコンを見つめると、選択中のアプリが視覚的に浮き上がったり、動画などのコンテンツがハイライトされ、2本の指を摘むようにタッチすると起動、指を上下させるとスクロールできます。
こういったすべての操作ジェスチャーはさりげなく自然になるようにデザインされていて、手を足の上やソファに置いたままでも自然な流れで操作できるとのこと。
文字入力の際はボックスを見つめて声を発するだけ。さらにSiriを使ってアプリをすぐに起動したり、メディアを再生することも。
仕事などで細かな作業や高速な文字入力が必要になる場合は、Magic TrackpadやMagic Keyboardなど既存のBluetoothアクセサリでVR/AR空間またはアプリを操作することもできます。
Appleの集大成。究極のハードウェア
開発にあたってAppleはほぼすべての構成要素の開発が必要だったと語っています。
コンパクトなボディと膨大な処理能力の両立。先進的なリアルタイムセンサーシステム、圧倒的なクオリティの空間オーディオ。なかでもディスプレイは、これまでAppleが販売してきた製品とは大きく異なるものです。
切手サイズの4K超ディスプレイ
PCやスマートフォン、ウェアラブルと違ってAR/VRヘッドセットでは、瞳とディスプレイが超接近することで、1つの1つのピクセルが目立ちやすくなります。目の前からピクセルを消し去るために必要なのは高解像度を超えた超解像度のディスプレイ。そこでAppleは左右2枚合わせて2,300万といった膨大な数のピクセルを持つマイクロLEDディスプレイを開発。片眼あたりのピクセル数が4Kテレビを超える技術を切手ほどの小ささで実現しました。
切手ほどのサイズのディスプレイを幅30メートルにも感じられる巨大なスクリーンにする3枚構成のレンズは驚異的なシャープさと鮮明さをもたらし、小さな文字はどの角度から見ても超鮮明で広色域とHDR対応でドラマや映画も楽しめます。
オーディオでは耳の横ではなく周りの空間から音が出ているように感じられ、現実の世界と融合することを実現するためにまったく新しい空間オーディオシステムが搭載されています。
ユーザーの頭と耳の形に合わせてパーソナライズされた空間オーディオに加え、周囲の空間の特徴と素材を分析して空間に合わせて音を最適化するオーディオレイトレーシングに対応。Apple Vision Proを装着するだけで、どこにいても自分だけの映画館に移動して目の前の巨大なスクリーンと空間オーディオに包まれながら映画、テレビ番組、スポーツを見たり、ゲームを楽しめます。
M2チップによる静音と新しいR1チップによる超低遅延
6つのカメラと奥行きを認識する2つのカメラ、LiDARスキャナで現実の世界で起きていることを正確に捉えて遅延なく内側のディスプレイに映し出し、4つのIRカメラと投光イルミネーターで目の動きを素早く検知して解析して操作に反映するには、膨大な処理能力を長時間キープしつつ静音を実現する必要があります。
そこでAppleはM2チップを搭載します。耐発熱に優れたチップによってApple曰くほとんど無音のままで動作するとのこと。
まったく新しいチップとしてR1チップも搭載されます。このチップが12個のカメラセンサーと5つのセンサー、6つのマイクからの入力を処理してリアルタイムに反映します。ヘッドセットデバイスでありがちなセンサーとディスプレイ間の遅延が映像酔いを引き起こすことがありますが、R1チップを搭載したApple Vision Proは、目の瞬きの8倍の速さである12ミリ秒以内にセンサーからの入力を処理してディスプレイに送り出すことを可能にしています。
世界初の空間型OS:visionOS
Appleは世界初の空間OSとしてmacOS、iOS、iPadOSがベースの「visionOS」も開発しました。
ネイティブアプリはもちろん、サードパーティアプリもサポート。Apple Vision Proを自分専用のプラネタリウムとして肉眼では見られない星空を見てリラックスできるアプリやExcel、WordといったMicrosoftアプリに対応。TeamsやZoomといったコミュニケーションアプリでは3Dのペルソナも使用できるとのこと。
開発環境はXcodeを使用できるほか、Swift UIやRealityKit、ARKitといったおなじみの開発ツールを使ってアプリを開発できるほか、3Dコンテンツを作成するためのReality Composer Proも提供されます。
iOSとiPadOSで使えるフレームワークはvisonOSにも含まれているため、膨大な数のアプリを発売直後からApple Vision Proで利用できます。例えば、Adobe Lightroomでは、巨大なスクリーンに写真を表示しながら目と手だけで操作が可能に。
これらのアプリはApple Vision Pro向けのApp Storeからダウンロードできます。専用のApp Storeでは100万超のアプリがApple Vison Proで動作します。
指紋と顔の次は瞳。Optic ID
指紋のTouch ID、顔のFace IDに続いて、瞳を使ったOptic IDがApple Vision Proに搭載されます。
瞳の虹彩を使った新たな認証システムは一卵性の双子でさえ本人との見分けが可能で、厳重にプライバシーを保護します。
Optic IDはApple PayやApp Storeでの購入に対応。パスワードの自動入力の際にも利用できます。
また、Appleはユーザーが何を見ているか、どこを見ているか視線情報が大切であるとして使用中のアプリにもウェブサイトにもわからないように保護します。取得されるのは他のAppleデバイスと同じようにクリックやタップといった情報だけです。
販売価格と発売日
Apple Vision Proの販売価格は3,499ドルです。
これは米国での販売価格ですが、日本円に単純換算(為替レートは発表当時のもの)すると488,544円でおよそ50万円。Appleが販売するハードウェアとして最も高額な製品の1つになります。
発売日は米国時間で2月2日。日本時間1月19日(金)22時から予約受付がスタートします。また、2024年末までに他の国でも販売される予定です。
- ソロニットバンド
- デュアルループバンド
- ライトシール
- ライトシールクッション2個
- Apple Vision Proカバー
- ポリッシングクロス
- バッテリー
- USB-C充電ケーブル
- USB-C電源アダプタ
- ツァイスの度付きレンズ:99ドル〜
アンケート:Apple Vison Pro買う?
Apple初のAR/VRデバイス「Apple Vision Pro」の価格は3499ドル!! 日本円で約488,544 円。#WWDC23
— Yusuke Sakakura🍎携帯総合研究所 (@xeno_twit) June 5, 2023
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