2023年は約15機種のスマートフォンをレビューし、そのほとんどが高価格帯のフラグシップモデルでした。ただ、機種代金が高額化し10万円を大きく超えるのが当たり前になった現在、Androidスマートフォンの売れ筋商品は中価格帯に集中しています。
今回レビューするスマートフォンは記事執筆時点でauオンラインショップで1位、ドコモオンラインショップで3位、楽天モバイル公式サイトで7位と売れまくっている中価格帯のスマートフォン「AQUOS sense8」です。
docomo Online Shop
中価格帯のスマートフォンには10万円を超える高価格帯の機種と同じチップやカメラを搭載している機種もいくつかありますが、AQUOS sense8は手から足の先まで中価格帯、ど真ん中のスマートフォンです。
アルミ削り出しのフレームとマットな背面のアルミパネルで構成されるボディは高級感も安っぽさもない品質。ただ、前面のデザインは水滴型のノッチ、太めで上下の幅がそろっていないベゼルなど、それほど優れたものではありません。
カラーはコバルトブラック、ペールグリーン、ライトカッパーの3色にドコモオンラインショップ限定カラーのブルーを加えた4色。
今回レビューするコバルトブラックはネイビーのような青寄りの黒で、ペールグリーンはかなり明るめの緑です。
幅71mmはちょうどいいサイズです。片手操作モードにも対応していますが、使わなくても片手で半分ぐらいのエリアを操作できます。
音量ボタンは奇妙な場所にあります。位置が高すぎて左手持ちは届きません。
同じ側面には指紋認証センサー内蔵の電源ボタンが配置されていて、右手持ちであればスムーズに画面ロックを解除できます。またマスク対応の顔認証もサポートしています。
ただ、筆者のような左手待ちユーザーは親指で認証できず、電源ボタンを押して画面がロックされた後も指紋認証センサーに指を乗せ続ける持ち方をしていると、画面ロックが解除されてしまう再現性のある現象にストレスを感じました。
快適な操作に大きく影響するチップはミドルレンジ向けのSnapdragon 6 Gen 1。普段フラグシップスマートフォンを使っている筆者からすると性能は物足りないと感じました。
例えば、オンラインゲームのDead by Daylight Mobileをプレイすると、発電機に触れるタイミングや走り出しなど、ところどころで操作がもたつきます。Notionを使ってこのレビューの下書きを書いている時でさえもわずかな引っかかりを感じることがあります。
また、6GBのメモリが足りないのか、カメラがバックグラウンドに回ったり、複数のアプリを行き来しながら操作している時にもたつくこともありました。
性能を数値化したベンチマークスコアは以下のとおりです。
Geekbench 6 | 3D Mark Wild Life Extreme |
3D Mark WLE Stress Test |
3D Mark WL Stress Test |
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カメラは広角レンズと超広角レンズの2眼構成です。
利用機会が最も多い広角レンズは縦持ち時に画角の中心を捉えて撮影しやすいよう本体の中心に配置。光学手ブレ補正にも対応しています。
競合機種と同じように劣化なしでズーム撮影できる望遠レンズはなし。ただ、50MPの高画素センサーを活用した2倍のクロップズームを利用できます。
背景をぼかして撮影できる写真のポートレートにも対応していますが、残念ながら動画のポートレートモードは利用できません。
肝心の画質は広角カメラによる等倍撮影は高精細でクリアに撮れます。明るい場所に限定すればフラグシップに手がかかるクオリティ。ただ、超広角レンズに切り替えると、ディテールが突然失われてボヤけた写真になってしまいます。
2倍のクロップズームも解像感が失われるため、光学相当とは言えません。もう少しAIやソフトウェア補正が頑張って欲しい。
ポートレート撮影は細かな髪の毛の先と背景を切り分けてボカすことはできません。また、夜景モードも明るく撮れるもののノイズが目立ち、白く明るい電飾は光量を抑えられず周囲がぼやけてしまいます。総じてソフト補正に課題ありですが、ミッドレンジならこの程度でも許容範囲と評価する人がほとんどでしょう。
次はスマホ選びで最も重要な電池持ちです。
AQUOS sense8は159gという軽さながらバッテリーは大容量の5000mAhを搭載しています。
バッテリーテストでは、常時表示やなめらか表示をオンにした状態で10時40分に充電器から外して100%の状態で利用を開始し、電車で移動中にストリーミングで30分間のNBA観戦、1時間のカメラテスト、さらに1時間のストリーミングによるNBA観戦、夜に再び数枚の写真撮影、Googleマップのルート案内、30-40分のDead by Daylightプレイで19時ごろに残量30%になりました。ヘビーユースでも寝る前に1回の充電で十分です。
USB Type-Cで充電できるバッテリーは160分間でフル充電になります。残念ながらワイヤレス充電には対応していません。
バッテリーは約2年ほどで性能が80%まで低下しますがAQUOS sense8は3年間使っても90%以上をキープします。最大3回のOSアップデート、5年間のセキュリティアップデート保証と合わせて長期間利用できます。
AQUOSならではの機能も充実しています。なかでもSNSのタイムラインのような縦長のコンテンツを読む時に便利な自動スクロール機能「スクロールオート」、画面ロック解除後も指紋認証センサーに触れ続けるとPayPayなどのコード決済アプリを起動できる「Payトリガー」は便利。おサイフケータイにも対応しています。
AQUOS sense8の販売価格は6万円程度。競合機種はPixel 7a、Xperia 10 V、Galaxy A54 5Gで、AQUOS sense8の価格は約1万円程度安く設定されています(auのPixel 7aは47,500円👀)
4機種のうちベストな選択は何を重視するかによって変わるでしょう。
“カメラ”を最も重要視するのであれば、2000万票を集めたカメラテストで最も優秀だと認定された「Pixel 7a」がおすすめ。このなかではチップの性能も頭ひとつ抜けています。ただ、バッテリーの容量からもわかるとおり電池持ちは物足りないです。
“コンパクトさ”で選ぶのであれば、幅68mmかつ159gの軽量なボディが特徴の「Xperia 10 V」がおすすめ。ただ、チップの性能が低いため、高い処理能力を要求するゲームなどには不向き。このなかで唯一、アップデートが保証されていない機種でもあります。
“長期アップデート”で選ぶなら、最大4回のOSアップデートと最大5年間のセキュリティアップデートが保証されてる「Galaxy A54 5G」を選びましょう。また、6.4インチ/120Hzのリフレッシュレートのディスプレイは他の3機種よりも大画面かつなめらかな映像で動画やゲームを楽しめます。
AQUOS sense8は他3機種の良いところを取ったような機種です。
この価格帯では品質の優れないプラスチックフレームを採用する機種もありますが、当機種はアルミフレームを採用することで安っぽさなし。
重さは4機種のうち最軽量ながらバッテリーは最高値で電池持ちも十分。
カメラはソフト補正が甘くズーム、ポートレート、夜景撮影はイマイチですが、明るい環境での等倍撮影に限ればフラグシップモデルで撮影した写真と比較しても大きな遜色はありません。
6.1インチのディスプレイはリフレッシュレート90Hzのため、画面のスクロールやゲームもなめらかに楽しめます。明らかに劣っているのはモノラルスピーカーによる左右不均等のサウンドです。そこを妥協できるのであれば、AQUOS sense8は多くの人が最も優先すべき選択肢になります。
AQUOS sense8と競合機種の比較まとめ
AQUOS sense8 | Galaxy A54 5G | Pixel 7a | Xperia 10 V | |
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デザイン | ||||
価格 |
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素材 |
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大きさ |
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重さ | 159g | 201 g | 193.5 g | 159g |
ディスプレイ |
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メインカメラ |
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フロントカメラ |
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チップ | Snapdragon 6 Gen 1 | Exynos 1380 |
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Snapdragon 695 5G |
メモリ | 8GB | 6GB | 8GB | 6GB |
バッテリー |
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ワイヤレス充電 | X | X |
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X |
Wi-Fi |
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Bluetooth | 5.1 | 5.3 | 5.3 | 5.1 |
防水・防じん | IP68 | IP67 | IP67 | IP68 |
セキュリティ |
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アップデート |
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