通信品質に不満の声が聞かれるドコモが、体感品質の向上を目指した強化策を発表しました。
ドコモの通信品質については、2023年ごろから電波やデータ容量があるにもかかわらず繋がらない「パケ詰まり」や「パケ止まり」といった不満の声が増加しています。これまでに何度か強化策が発表され、継続的に実施されていますが、劇的な改善には至っていません。
こうした状況を受け、前田社長は6月の社長就任式で2025年3月までにOpensignalの品質調査でナンバーワン獲得を目指すと宣言していました。
Sub6と4G周波数の5Gエリアをさらに拡大
ドコモのネットワーク強化策は大きく2つです。
1つは、超高速・大容量の「5GのSub6エリア」のさらなる拡大。もう1つは、「4G周波数による5Gエリア」の拡大です。
具体的には、関東地区の1都3県において、2025年3月までにそれぞれの基地局数を1.3倍および1.4倍(2024年3月末に比べて)にするとのこと。
また、東名阪や福岡などの主要都市中心部ではSub6基地局数を1.9倍、山手線や大阪環状線などの主要鉄道動線では1.7倍に増やすなど、特定のエリアを対象に集中的に基地局数を増やします。
これらはすでに実施されている強化策をさらに推し進めるもので、これまでの強化によって受信時の実効速度はすでに向上しており、すでに主要都市中心部の3分の2以上で100Mbps以上を達成。渋谷駅や大阪駅、名古屋駅周辺、山手線では10〜40%の向上を実現しています。
短期間でのナンバーワン獲得は実現できるのか
5Gのエリア構築において、ドコモは通信速度が4Gと変わらないにも関わらず、スマホの画面上に5Gと表示されることを理由に、4G周波数による5Gエリアを“なんちゃって5G”と揶揄し、5GのSub6エリアを優先して展開しました。
一方、Opensignalの品質調査で高い評価を獲得しているKDDIとソフトバンクは、カバー範囲の広い“なんちゃって5G”を優先し、その上に高速なSub6を展開する逆の方針でエリア構築しています。
KDDIが先月開催した説明会では、ドコモが欲しがるOpensignalの品質調査においてナンバーワン(一貫した品質部門)を獲得した理由を明かすと共に、ドコモについては、4G周波数による5Gエリアが狭いため、カバー範囲の狭い5G Sub6にエリア展開が依存し、速度低下や品質劣化に結びつくと分析。具体的にはSub6のエリア端で弱い電波を保持したり、5G Sub6への過剰な誘導によって混雑が発生すると解説していました。
これに対して前田社長は「(Sub6を優先する基地局の打ち方で)エリア品質が保てているところもあるため、特に間違っていると思っているわけではない」としつつも、「都市のような人口が集中するところでは、もっと密に打たなければならないという課題認識がある。4Gの転用周波数が埋められていないことも事実」と反応しています。
ドコモは残り約5ヶ月程度でKDDIから通信品質ナンバーワンの座を奪う目標を掲げていますが、発表された強化策は特に新しいものではなく、地道に時間とコストをかけて基地局数を増やすしかないように思います。
ところがSub6の基地局数はKDDIの38,669局に対して、ドコモは19,998局と大差があります。全体の5G基地局数でもKDDIが約9.4万局でトップ。KDDIが優先して構築してきたことから、4G周波数による5G基地局数にも、大きな差があると予想されます。
決算会見の質疑応答にて、短期間での実現が難しいのではないかと問われた前田社長は、急ピッチで進めており、大幅な向上を見込んでいるとしながらも「チャレンジングな部分はある」と反応するなど、簡単ではないことがうかがえます。
コメントを残す