3月30日、総務省の有識者会議はSIMカードの挿し替えが不要でダウンロードで代替できるeSIMを今年夏ごろをめどに導入する方針を示した。
eSIMではカードの郵送が不要で、電子本人確認を導入したサービスでは契約からすぐにサービスを使えるため、事業者をのりかえやすく競争が促進されると見られているが、今月スタートしたソフトバンクの新ブランドではトラブルが多発するなど課題は多い。
eSIMの普及が進まない日本
スイッチング円滑化タスクフォースの報告書によると、欧米を中心に55カ国以上でeSIMの導入が進んでいて、対応スマートフォンも29種類が発売、2024年には全体出荷数のうち3割以上がeSIM対応と予測されるなど今後の普及が見込まれている。
日本国内の消費者向けサービスでは、楽天モバイルがいち早く提供を開始したが、KDDIとソフトバンクは今月スタートした新ブランドpovoとLINEMOでの提供に限定しており、auやソフトバンクといったメインブランドでは提供していない。ドコモはセキュリティ上の懸念があるとして安全性が確保された一部の端末に限定している。
また、端末面では日本国内におけるスマートフォンの出荷台数に対して56%がeSIM非対応。SIMロック解除後に利用できるのは40%で、発売時にeSIMを利用できるスマートフォンはわずか3.1%にとどまっている。
2021年夏ごろの導入が適当。しかし課題も
有識者会議ではeSIMの導入によって事業者間ののりかえが円滑化され、海外旅行者の利便性向上などが見込めることから「携帯3社は新型コロナウイルス感染症の収束を見据えつつ、できるだけ早期に導入する必要があることから、2021年夏頃を目途として導入することが適当」と方針を示した。
また、eSIMの導入にあたっては格安SIMを提供するMVNOと同時期にスマートフォン向けのeSIMを提供できる環境を整備することが適当としている。さらに、eSIMは申し込みから設定までユーザー自身が行うため、申込から開通までの一連の手続に関する利用者へのサポートの充実化が必要とした。
KDDIとソフトバンクはpovoとLINEMOでeSIMの提供を開始したが、特にソフトバンクのLINEMOではサービス開始直後から回線が使えなくなるなどのトラブルが多発した
オンライン・電話ともサポートのeSIMに関する知識や対応は不十分で、多くのユーザーが混乱して不満の声があがるなど、今のままメインブランドで導入すればサポートを求めたユーザーが店舗に殺到することは容易に想像できる。店舗サポートを必要するのであればeSIMの存在意義は大きく薄れてしまう。
KDDIのpovoではeSIMを入れ替えるための再発行手続きがウェブからできず電話で申し込みが必要になる。新型iPhoneの発売日などは電話窓口がパンクするのではないだろうか。
また、電話窓口は9:00~20:00までとなっていて、eSIMのダウンロードリンクが送られるのは1日後。LINEMOも9:00~21:00までに限定されている。eSIMの再発行が即時行えない場合は、端末の買い替え時に旧端末を下取りに出すなどして手放すとと一時的に回線を失うことも考えられる。
いち早く導入した楽天モバイルがeSIMの再発行を24時間ウェブで受け付けているため、KDDIとソフトバンクがこのような時間制限や窓口制限を設けている意味がわからない。
有識者会議がeSIMの早期導入を目指すのであればこういった問題にも目を向けるべきだ。
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