ドコモオンラインショップで機種代金218,680円/負担金122,320円、1ヶ月分の給料のような価格で販売されているデバイスはソニーの最新スマートフォン「Xperia 1 V」です。
4K HDRディスプレイ、Snapdragon 8 Gen 2、世界初の2層トランジスタ画素積層型センサーを搭載したカメラ、可変式望遠レンズ、5000mAhの大容量バッテリーなどスペックを書き出すと間違いなくプレミアムな位置付けですが、体験価値は価格に見合っているでしょうか。
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ボックス型のデザインは今年も継続していますが、新たに独自開発のきめ細やかなテクスチャーを施したフロスト強化ガラスを採用し、金属製のフレームにグリップ力を高めるローレット加工を加え、カラーの刷新も含めて雰囲気を変えました。
ザラザラした質感の背面と溝が掘られた側面はグリップ力を高める意図があったはずですが、手触りは良いもののグリップ力が向上するほどの効果は感じられず。そもそもXperia 1 Vは幅が71mmしかないため、1 IV以前でも持ちにくいと感じたことはなく、このデザインアップデートは機能性よりも見た目に大きな変化を生んだを感じます。
カラーはブラック、プラチナシルバー、カーキグリーンの3色。今回レビューするカラーはプラチナシルバーです。カーキグリーンはソニーストア限定カラーでキャリアから購入することはできません。
本体の右側面には指紋認証センサーが搭載されています。多くの機種がディスプレイ指紋認証を搭載するなか、Xperiaは指紋認証センサーを側面に配置することにこだわり続けています。
スマホを操作する利き手に関わらずスムーズに画面ロックを解除できるように、と背面に一度移動したにも関わらず、再び側面に戻ってきたのは見た目の問題だと思いますが、やはり筆者のような左利きはセンサーに指を乗せるために、一度持ち直す必要があるため使いづらい。
ポケットに入れる際に意図せずセンサーに触れてしまい、画面ロックが解除されて気づかずにポケットの中で勝手に操作されるといった問題も引き起こしています。
その設定もオンにしましたが、ボタン押しながらポケットに入れるからなのか結構な頻度でボケットに収まったあとも画面ロックかかってないことがありました><;
私も左手で起動なので左手中指と人差し指で登録しています。 あと、押し込み認証をONにしたら誤起動無くなりました。(押し込む動作が面倒だと思う人は我慢しなければならないんですけど。。。) 背面に有った頃は便利だったんですけどねぇ。
見た目の問題で側面にセンサーを再び移動したのであれば、ディスプレイ指紋認証に変えても良いはず。何らかの問題でそれが実現できないのであれば、せめて顔認証ぐらいは対応して欲しいところ。他社の5万円ぐらいのスマートフォンでも用意されているような機能が20万円もするXperiaに用意されていないのは不思議な話です。
人差し指ではなく中指の指紋を登録すれば?という声も聞きます。もちろん中指も登録していますが、右手親指のスムーズさには敵いません。
右手の親指で認証したら?という声も聞きますが、左持ちの場合、左のポケットに入れるので右手で左のポケットからスムーズに取り出すことはできません。左手で取り出して認証のために右手を添えるのも右手持ちであれば不要なアクションを強いられることになります。吊り革を持っている時など両手でスマホを持てない時もあります。
マイナーアップデートのボディには、Xperia史上最速CPUを謳う「Snapdragon 8 Gen 2」が搭載されています。
昨年発売されたXperia 1 IVに搭載されたSnapdragon 8 Gen 1は酷いものでした。少し高い負荷をかけた瞬間に発熱し、カメラを起動して数分経過しただけで悲鳴をあげてカメラアプリが強制終了し、撮ったはずの写真も記録されないこともありました。
同じチップセットを搭載していたGalaxy S22シリーズにそういった不具合はなかったので、チップセットだけの問題ではなく、Xperiaの発熱処理にも問題があったはずです。
Xperia 1 Vでは、発熱問題が解消されたチップセットへの変更に加えて、約60%も体積が拡大した熱拡散シートを搭載することで問題を解消しています。
猛暑日の屋外でカメラを構えても発熱の警告が表示されることはなく、カメラを起動して数分経過しただけで悲鳴を上げる現象もなし。まったく発熱しないわけではないものの、長いレビュー期間のなかで発熱に対して不満を感じることは一度もなかったです。
チップセットの進化によって消費電力が改善され、電池持ちは抜群です。これまでのXperiaも優秀でしたが、さらに優秀。電池持ちに不満を感じる人はいないでしょう。
ディスプレイの画質は鮮やかで申し分なし。十分な音質・音圧のスピーカーとの組み合わせでドラマや映画を鑑賞できます。画面の輝度にも不満はなく日差しの強い屋外でも快適に利用できます。
ただ、4K解像度が必要なのかは疑問で、なぜ搭載されているのか理由がわかりません。これが20万円超えの機種代金に影響しているのであれば、フルHD+またはqHDレベルに落として価格を下げて欲しいという人は多くいるでしょう。
アスペクト比 21:9の超縦長な画面形状も本当に必要でしょうか。横に向けて動画を再生すると左右に大きな黒い余白が生まれ、ゲームではパッド位置の調整が必要になって正直面倒です。画面上部に表示されるクイック設定パネルや通知を表示するには指が届かず、片手モードの利用が欠かせません。
ソニーは超縦長の画面を活かした16:9のアスペクト比で動画を見ながら9:16のアスペクト比でSNSを見て実況する21:9マルチウィンドウを推していますが、ほとんど使わない機能です。アプリの同時表示自体は超縦長の画面でなくても実現可能で、アスペクト比の組み合わせに絶対的なこだわりを持っている人がどれほどいるでしょうか。
さらに、ディスプレイにはゴーストタッチが存在しています。ふと気づくとディスプレイが暴走していて止められなくなる事象を何度も経験しました。暴走中は勝手に電話をかけたりしないか、緊急通報しないか心配になるほどです。
お化けのような現象から抜けるには端末を再起動するしかありませんが、タッチを受け付けないためそれも困難です。
UPDATE:2023/09/14 19:089月14日に配信された最新版のアップデートでゴーストタッチやタッチパネルが反応しなくなる不具合が改善されています。
最後はカメラです。
背面の左上に超広角レンズ、広角レンズ、望遠レンズを溝を作ることなく縦に並べたミニマルなデザインで、ソニーは主要なスマートフォンメーカーのなかで最も綺麗にカメラをデザインしています。
最大の特徴は広角レンズに新開発の2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサー「Exmor T for mobile」を搭載したこと。センサーの画素数は前作の4倍に向上、4つの画素を1つにまとめるピクセルビニングによってノイズが大幅に低減され、オートフォーカスも強化されています。
これまではAF精度を向上させるために3D iToFセンサーを搭載していましたが、AI強化によってAFの性能を落とさずにセンサーを廃止にしています。
画質は飛び抜けたものではないもののフラグシップレベルの写真を撮影できます。過度にHDRを効かすことなく、全体的にナチュラルな仕上がりで見た目をそのまま記録できるカメラ専用機思考の人にとっては最適な選択です。
カメラアプリの作りも他のスマートフォンとは大きく異なっていて、しっかり腰を据えて撮ることが前提にされているようなインターフェースです。
多く人がスマートフォンのカメラに求めているのは、ポケットからサッと取り出して目の前で起きている瞬間を逃さず記録することですが、Xperia 1 Vでは、それが少し難しいと感じることが多々ありました。
例えば、背景をぼかして写真を撮りたいと思ってもポートレートモードは存在せず、オプションとして用意されているボケ効果を追加選択する必要があります。Xperiaを初めて経験する人にとっては少しストレスを感じるかもしれません。
これを解消するには別のカメラアプリが必要です。
もともと分離されていたBASICモードを再びPhotoProから引き離しても意味はなく、ボケ効果をオプションとして提供するのではなく、1つの撮影モードとして提供するようなBASICよりももっとシンプルなカメラアプリが必要です。
4Kディスプレイ、世界初のイメージセンサーと可変式の望遠レンズを搭載したカメラ、独自開発のきめ細やかなテクスチャーを施した背面パネルを採用したデザイン、電池持ち・バッテリー、チップセットなど、ほぼすべてが優秀でプレミアムで最大の問題だった発熱が解消されたXperia 1 Vはファンにとってはたまらない1台でしょう。
一方で、Xperiaファンでなければ20万円前後の価格を正当化できず、やりすぎだと感じるかもしれません。
また、Google、Galaxy、Nothingなどのメーカーが長期のOSアップデートを保証するなかで、ソニーの短いアップデートポリシーに不満を抱いている人も多く、新しいOSがリリースされて各キャリアがアップデート予定機種を発表すると、携帯総合研究所のコメント欄でもXperiaユーザーから不満の声が多く寄せられます。
2020年に発売されたXperia 1 IIがAndroid 13へのアップデート対象外となり、OSアップデートが2世代で終了になったのに対して、同時期に発売されたGalaxy S20にアップデートが提供されていることを考えれば不満も当然でしょう。
最新のチップセットと大容量のメモリを搭載しながら最新版にアップデートできないことが不思議でなりません。XperiaはAndroidを派手にカスタムしているわけでもなく、GalaxyのOne UIのようにオリジナルの名前がついたインターフェースが存在するわけでも無いのでなおさらです。
価格とソニーのアップデートポリシーさえ妥協できるのであれば、Xperiaファン以外も買って後悔はしないでしょう。
ドコモオンラインショップでの販売価格は機種代金が218,680円。いつでもカエドキプログラムの特典を利用して23か月目に機種を返却すると、122,320円の支払いが不要になり負担金は122,320円になります。