なぜ?AndroidでAirDropが使えるようになった理由。EU説と異なる“有力説”
Yusuke Sakakura
Yusuke Sakakura
ブログメディア「携帯総合研究所」を運営しています。学生時代に開設して今年が16年目。スマートフォンの気になる最新情報をいち早くお届けします。各キャリア・各メーカーの発表会に参加し、取材も行います。SEの経験を活かして料金シミュレーターも開発しています。

AndroidがAirDropに対応しました。それでもiOSとAndroidのシェアは変化しないとも言われていますが、iPhoneとAndroidの両ユーザーにとってはメリットしかありません。
現時点では、Google Pixel 10シリーズ限定ですが、GoogleはAndroidの機能として発表し、対応機種の拡大も明言しています。
NothingのCEOカール・ペイがいち早く興味を示し、QualcommのSnapdragon公式アカウントも対応に意欲を示しているため、手元のAndroidで利用できるのはそんなに遠い時期ではないかもしれません。
ただ、今回のAirDrop対応には3つの懸念と疑問があります。
- AppleがAndroidのAirDropをブロックするのか、できるのか
- GoogleはなぜPixel 10シリーズに先行提供したのか
- 最大の疑問:GoogleはどのようにAirDrop対応を実現したのか
最大の疑問であるGoogleがどのようにAirDropに対応したのかについては、EUとデジタル市場法の影響を指摘する声もありますが、これを否定する声もあります。
AndroidのAirDrop対応は、EUでもWi-Fi Awareのおかげでもない
Androidのリバースエンジニアリングで有名なMishaal Rahmanは、“EUがAppleに「AWDL」を放棄させたから対応できた説”について、否定的な意見を表明しています。
AWDL(Apple Wireless Direct Link)は、Appleが高速な近距離通信で使っている独自のP2Pプロトコルで、AirDropの高速ペアリングやファイル転送の土台になっているものです。
これはクローズドな規格であるため、Appleのデバイスでしか使えません。AirDropがAndroidで使えない理由はここにあります。
これをこじ開けようとしたのかEUはAppleに対して、Wi-Fi Allianceが策定した標準規格「Wi-Fi Aware」を実装するか、あるいはAWDLをWi-Fi Aware互換にするか、あるいはAWDLを外部に公開するかという趣旨の選択肢を突きつけたようです。
Wi-Fi AwareはAppleが開発に大きく関わった標準規格で、基礎技術の一部はAppleが開発したものですが、AppleがWi-Fi AwareをiOSに実装することはありませんでした。しかし、今年9月に公開されたiOS 26/iPadOS 26で、Wi-Fi AwareのAPIが開発者に公開されています。
これをもとにArs Technicaは、AWDLの代わりに標準規格のWi-Fi Awareがサポートされたことで、AndroidがAirDropに対応できたとしています。
しかし、Rahmanは関係者から聞いた話として、AirDropは今もWi-Fi Awareを使っておらず、AWDLはWi-Fi Awareとの互換性もないと説明します。
筆者はRahmanの指摘に同意します。
というのも、Ars Technicaは、Wi-Fi AwareのAPIがiOS 26/iPadOS 26で追加されたことをもとに、AndroidでAirDropできるのはこれ以降のバージョンで、Wi-Fi Awareに対応していないmacOSでは利用できないと伝えていますが、筆者はiOS 18でも、macOSでも、Androidとの間でAirDropできることを確認しています。
GoogleはAWDLを実装した
では、どのようにGoogleはAirDropに対応したのか。
RahmanはGoogleがクリーンな方法でリバースエンジニアリングしたのではないかと予想しています。
Appleの独自規格AWDLは、BluetoothとWi-Fiというオープンな技術をベースにしていることから、条件さえ満たせば他社デバイスでも実装できるとします。
ただし、AWDLはAppleの完全な独自規格であることからリバースエンジニアリングには法的リスクが伴うと指摘します。
正式な確認は取れていないものの、関係者の話が本当であれば、Googleがクリーンな方法でリバースエンジニアリングしたことになるとRahmanは話しています。
なぜPixel 10シリーズ先行なのか
冒頭でも書いたように、Androidの標準機能として発表したにもかかわらず、対応機種がGoogle Pixel 10シリーズに限定されている理由は気になるところです。
Rahmanは、関係者の話として、Wi-Fiまわりのファームウェアアップデートが関係している可能性があると指摘しています。
Googleと言えども、ハードウェアに深く関わるアップデートを幅広い端末に配信するのは容易ではありませんが、自社で開発しているPixel 10シリーズであれば、必要なファームウェアを含めたアップデートを容易にコントロールできます。
また、AirDrop対応には、Google Playシステムアップデートとして配信されるQuick Share Extensionアプリも必要ですが、このアプリをPixel 10以外の端末にインストールしても動作しません。
この挙動からもWi-Fiファームウェアが前提になっている可能性が高まります。また、RahmanはWi-Fiスタック側にも何らかの変更が加わっている可能性もあると推測しています。
これらが事実であれば、ほかのAndroidがAirDropに対応するのは、各メーカーが必要なWi-Fiファームウェアを提供できるようになってからとなる見込みです。
端末メーカーではないQualcommがAirDrop対応に意欲を示したのは不思議にも見えましたが、チップベンダーがファームウェアを更新しなければ他社メーカーは対応できないことを考えると、この動きにも説明がつきます。





















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