NHKが関係者からの話として総務省が携帯料金の値下げに向けてeSIMの推進を行うと報じた。
ネットから携帯電話会社をのりかえる際に後日発送になるSIMカードに対してeSIMでは回線の即時切替が可能とのこと。
総務省はeSIMを普及させることで競争を促進して携帯料金の値下げに繋げる方針とのことだが効果には疑問が多い。
競争からの値下げに繋がるほどのインパクトはない
契約者の情報が書き込まれている物理的なSIMカードに対して、eSIMはスマートフォンやタブレットなどの端末内に同等の機能を内蔵したもの。混雑するキャリアショップに行かなくてもeSIMであれば自宅から携帯電話会社をのりかえることも可能だ。
eSIMが持つ“のりかえのしやすさ”を活用して競争を促進し、携帯料金の値下げに繋げることが総務省の狙いのようだが、はっきり言ってeSIMにそこまでの効果はないだろう。現時点でeSIMには課題が多い。
eSIMを利用した契約はキャリアショップに行く必要がないため手軽なのは間違いないが、オンラインでの契約、その先にあるeSIMの設定は誰もができるほどカンタンではない。iPhoneでさえ多くの手順が必要だ。カードを差し替えてAPNを設定するだけで通信できるSIMカードの設定でさえ苦労する人も多いなかでeSIMをスムーズに設定できる人は多くない。
eSIM対応のスマートフォンやタブレットにはiPhoneやiPad、Pixelなどがあるが、対応端末が充実しているわけではなく携帯電話事業者もeSIMの提供に乗り気ではない。積極的なのはeSIM対応のオリジナルスマートフォンを発売している楽天モバイルだけ。今月12日からはeSIMカードの交換・再発行の手数料を無料化している。
総務省はキャリアに対してeSIMの積極的な提供とカンタンな契約手順の実現を働きかけ、キャリアはメーカーに対してeSIM対応デバイスの開発とカンタンなeSIMの設定手順を求めなければ(求めても?)、競争に影響が起きるほど多くのユーザーが積極的にeSIMを利用することはないと思う。
携帯料金の値下げとは別にキャリアに対してeSIMの普及を求めるのは大賛成だが、競争促進からの料金値下げには繋がらず、かなり遠回りの施策になるのではないだろうか。
なお、総務省はeSIMとは別にMNP手数料の廃止を行う方針のため、eSIMによる事務手数料の値下げが期待できるのは新規契約と機種変更だけではないか。
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