EUは消費者の利便性向上と環境保護を目的としてスマートフォンなどの電子機器を対象にUSB-C端子の搭載を法的に義務付けることを決定しました。
この規制は2024年12月28日以降から順次適用されますが、Appleは先行して今年発売する新型iPhone(仮称:iPhone 15)からLightningを廃止し、USB-Cに移行すると可能性が高いと報じられています。AirPods Proの充電ケースについても同様に報じられています。
EUの次の標的はバッテリーです。スマートフォンを含めた幅広いデバイスを対象にバッテリーを簡単に交換できるよう、電子機器メーカーに義務付ける規制を採択したと発表しました。
ガラケーレベルの利便性は実現せず?
EUがバッテリーの規制強化に乗り出した目的は安全性・持続可能性・EUの競争力を確保することです。
脱炭素化に向けてバッテリーは重要な鍵を握っているとし、廃棄バッテリーに多く含まれている貴重な資源の供給を第三国に頼るのではなく、再利用できるようにしなければならないとEUは説明しています。
規制対象のバッテリーは、廃棄されるすべてのポータブルバッテリー、電気自動車向けのバッテリー、産業用バッテリー、主に自動車や機械で使用されるSLIバッテリー、電気自転車・電動バイク・スクーター。明示されていないものの、スマートフォンやタブレットはもちろん、OverkillはEUの情報筋の話として携帯ゲーム機も含まれると報じました。事実であれば当然ながらNintendo Switchも対象になるでしょう。
この規制強化によって各メーカーは2027年までに内蔵されたポータブルバッテリーを消費者の手によって交換できる設計が義務付けられます。
これを受けて国内外のメディアが将来的にスマートフォンのバッテリーが交換可能になると報道されると、消費者から歓喜の声があがる一方で、防水・防塵性能の低下や端末価格が再び値上がりするのではないかといった不安の声も聞かれています。
そもそもの話としてEUの主張がそう簡単に通らないのではないかといった指摘もあります。
おそらくほとんどの消費者はかつてのガラケーのように裏蓋を開けてバッテリーを交換できるようなイメージを持っていると思いますが、9to5Macはそのようなイメージをしている人は「間違いなく失望することになる」と主張しています。
昨年、AppleはiPhone、Mac、Studio Displayを対象にしたセルフサービス修理プログラムの提供を開始し、Apple純正パーツや工具、マニュアルを使用した修理を可能にしましたが、これをもとにAppleがすでにEUの規制に準拠していると主張する可能性が高いと見ているようです。
これが許されるのであれば、AppleがEUの規制のためにやることは現在一部の地域に限定(日本でも未提供)されているセルフサービス修理プログラムをEU全体に拡大し、対象のデバイスを拡大するだけのことで、本体の設計を大きく変える必要はありません。
ただし、重要なのはEUが定める「簡単に交換できること」に準拠するのかどうかです。
文書によれば「無償で提供される場合を除いて、特殊な工具や独自の工具、熱エネルギー、製品を分解するための溶剤を使用することなく、市販の工具を用いて取り外しできる場合、ポータブルバッテリーが容易に取り外しできるものとみなされる」とのこと。
ガラケーのように工具を必要とせず裏蓋を手で外してバッテリーを交換できるレベルまでは求められておらず、おそらく電池切れになったバッテリーパックを取り外して、フル充電にしておいた予備のバッテリーパックに交換するレベルまで実装するメーカーはいないでしょう。
9to5Macはセルフサービス修理プログラムによる適合を求めるAppleの主張にEUが満足しない場合は裁判で争い、仮にAppleが裁判で負けたとしてもAppleはiPhoneのバッテリーを交換するために必要な37の工程を減らしたり、バッテリー交換に必要な工具を無償で貸し出すなどの対応をするだけで、それ以上のことはせず、EUがそれでも満足しない場合は再び裁判で争って決着をつけることになると予想しています。
コメントを残す