Googleが高性能なAI処理を特徴とする独自チップGoogle Tensorを2021年に発表してから2年が経過しました。
Pixel 6シリーズに搭載された初代チップのCPU性能は3年前に発売されたiPhoneにも及ばず、GPUの性能は当時のAndroidトップクラスになった一方で、長時間の性能テストでは本体温度が大幅に上昇するとともに、サーマルスロットリングによって大幅な性能低下を示していました。
サーマルスロットリングとは、CPUやGPUの動作温度が高くなりすぎると性能を自動で低下させ、温度上昇を抑える機能のことです。メリットとしては発熱による機器の故障を防いだり、バッテリー消費を抑えて動作時間を長くしたりする点が挙げられます。ただし、性能が低下するため、処理速度が遅くなることがあります。
当時から発熱と熱対策について低く評価されてきたGoogle Tensorですが、最近の報告ではチップの熱を拡散する部品が焼け焦げたと報告されています。
Redditに投稿されたzybernau氏のレポートでは、マザーボードの一部が変色している画像(当記事トップ参照)が添付されています。
変色しているのはGoogle Tensorチップの熱を拡散させるグラフェンフィルムのようで、変色した原因は不明ですが、各分解レポートで確認できる写真と見比べると明らかな違いがあり、Wccftechも指摘するようにチップから発生した熱による焦げ付きのように見えます。
zybernau氏は上記のレポートを投稿する6日前に、2023年11月のアップデートを適用した12時間後に画面が点灯しない状態になった(文鎮化)と報告しています。チップの熱がもたらした焼き付けと文鎮化の関係は不明ですが、文鎮化したことによってPixel 6 Proを分解したのでしょう。
Google Tensorチップがスマートフォンを文鎮化させるほどの熱を生み出したのであれば明らかな問題です。Googleがどのように対応したのか気になるところ(すでに分解してしまったため今後のサポートは期待できない)ですが、zybernau氏のレポートは途絶えています。
このレポートに対する反応には、熱問題が多数報告されるGoogle Tensorチップをからかうように「たった10分間の通話でこうなったんだろう」というコメントやベイパーチャンバーがないことを危惧するコメントが投稿されています。
最新のGoogle Tensorはどうでしょうか。
筆者は毎年、最新のGoogle Pixelを購入していますが、最新のGoogle Tensor G3を搭載したPixel 8 Proは、Pixel 7 Proに比べて熱問題が改善されたと感じています。Pixel 7 Proでは、デッドバイデイライトをプレイすると、十分にプレイしないままオーバーヒートしていましたが、Pixel 8 Proでそういったことはありません。
それでも性能や熱に対する不満の声が聞かれるため、少なくない人が改善を望んでいるはず。
Googleが来年発売予定のPixel 9シリーズに搭載するTensor G4はマイナーアップデートが噂されていることから大きな改善は2年後のTensor G5とPixel 10シリーズになりそうです。
Tensor G5では、製造メーカーをSamsungからTSMCに変更し、フルカスタムチップによる大規模なアップデートが予想されていますが、期待どおりに改善されるのでしょうか。
そもそもGoogle Pixelはゲームをどれだけ快適にプレイできるかを競うレースからはいち早く降りていて、新しいカメラ体験をもたらしたり、新しい高性能AIモデル「Gemini Nano」によって、音声メモの書き起こし要約やボタン一発で文脈に応じた返信ができるなど、AIがもたらす優れた体験を提供する方向に舵を切っているため、Google Pixelにゲームの性能を求めるのは違うのかもしれません。
ただ、現時点でスマートフォンを購入する際に高性能なAIモデルが動作することを理由にする人は多く存在しないことも確かです。
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