JR山手線で発火したモバ充、過去16件の火災を起こしたリコール対象の製品だった
Yusuke Sakakura

Yusuke Sakakura
ブログメディア「携帯総合研究所」を運営しています。学生時代に開設して今年が16年目。スマートフォンの気になる最新情報をいち早くお届けします。各キャリア・各メーカーの発表会に参加し、取材も行います。SEの経験を活かして料金シミュレーターも開発しています。

今月20日、JR山手線の電車内でモバイルバッテリーが発火し、乗客5人がけがをし、運行に大幅な遅れが生じました。
モバイルバッテリーの所有者によると「充電中にバッテリーが熱くなったので外したが、熱が冷めずに30秒ぐらいで発火した」とのことです。
こうした発火事故が起きるたびに「発火したのはどの製品なのか」と特定しようとする動きが起こりますが、実際には製品名まで販売することは少ない気がします。
しかし、今回、NHKが捜査関係者に取材した内容として、モバイルバッテリーに関するより詳しい情報が報じられています。
発火したモバイルバッテリーは「cheero Flat 10000mAh」か
警視庁が焼けたバッテリーの型番などを調べたところ、発煙や発火のおそれがあるとしてリコール対象になっていたことがわかりました。
2021年8月までの1年8ヶ月のあいだに約39,000台が出荷され、これまでに16件の火災が相次いで発生していることも伝えられています。
こうした情報から製品を特定する動きが起きています。実際、消費者庁のリコール情報サイトにはアクセスが集中し、一時的に利用しづらい状態になっていました。
筆者もNHKの報道にある販売開始および終了時期から検索したところ、ティ・アール・エイの「cheero Flat 10000mAh」がヒットしました。
対象台数も39,300台と一致しており、この製品の可能性があります。

販売会社は2023年6月の時点で全数回収を発表しており、対応を呼びかけていました。
しかしながら、リコールがすべて消費者に届くとは限らず、届いたとしても使用を中止して返却するかどうかは個人の判断に委ねられます。結果として使い続けてしまい、今回のような発火事故につながった可能性があります。
もし、リコール対象の製品が発火を引き起こしていたのであれば、メーカーは注目が集まっている早い段階で積極的に情報を公開して欲しいところ。それによって再度、回収が促されてこのような被害も減るはずです。
安全なモバイルバッテリー選びと安全に使い続けることは別
筆者は、モバイルバッテリーの発火リスクを避けるためには、信頼できるメーカーやブランドの製品を選ぶことが、最もシンプルで効果の高い方法だと考えています。
とはいえ、今やモバイルバッテリーは日常的に持ち歩く人も多く、調査によれば約半数の人が日常的に持ち歩いているというデータ(1,2,3)もあります。
これだけ普及していると、たとえ自分が信頼できるメーカーの製品を使っていたとしても、周囲の全員がそうであるとは限りません。
最近では、TikTokで正体不明の格安モバイルバッテリーが“コスパ最強”としてバズっているのを見るたびに、「もしこの人が自分の隣に乗っていたら、、、」と、想像して恐怖を感じることも少なくありません。
また、今回の発火事故は信頼されていたブランドのモバイルバッテリーが原因であった可能性があります。
実際、過去3年間のリコール情報を見ると、Anker、CIO、IKEA、ノジマといった、大手や知名度、評価の高いメーカーでも発火のおそれがあるとしてリコールを行なっていることがわかります。
つまり、安全なモバイルバッテリーを購入するために、信頼できるブランドから選ぶのは大切ですが、それだけでは安心とは言い切れず、購入後は各社のSNSアカウントをフォローするなどして、リコール情報を逃さずチェックし、適切に対応することが重要です。