
初代Pixelの登場から3年。ようやく日本で2018年11月1日に発売された最新モデル「Pixel 3 XL」をレビュー。
最新のUIによって大型のボディながら片手操作に優れたAndroid 9 PieやiPhoneを超えたシングルレンズカメラを搭載。おサイフケータイにも対応するなど日本にも最適化されたGoogleのフラグシップモデルをレビューする。
It's GOOOOD!!
- iPhoneを超えたカメラ
- 優れた質感のボディ
- 薄型のベゼル
- Android 9 Pieによる優れた操作性
- 発売から3年間のOSアップデート保証
- 無制限で使い放題のGoogleフォト
- 待望のおサイフケータイ対応
TOUGH...
- 背面の指紋認証
- 片手で操作しにくいサイズ感
- 少ないストレージ
- microSD非対応
デザイン・カラー

Pixel 3シリーズのデザインは、大きく変化したともほとんど変わっていないとも言えない加減で絶妙に姿を変えた。Pixel 3 XLで言えば大きな変化はディスプレイのデザインだろう。
ディスプレイの形状はPixel 2 XLと変わらず18:9の縦長仕様だが、ベゼルがさらに薄くなり、“ノッチ”が付いたことでボディの大きさに対して画面が占める割合を表す画面占有率が格段にアップしている。
発表前から悪い意味で注目を集めていたのが巨大なノッチだ。ただでさえ嫌悪感を示されることが多いブサイクなノッチがデカすぎると話題になった。

ただ、実際に手にしてみるとそこまでの大きさを感じず、iPhone XS(iPhone XS Maxとノッチの大きさは同じ)と比べてもノッチが特に大きいとは感じない。iPhone XSに比べてPixel 3 XLのノッチは縦に深いものの、横幅は短いことが理由ではないだろうか。ここまで使っていてノッチが邪魔になると感じたことはまったくない。なお、ベゼルの幅はiPhone XSよりも薄くてスタリッシュな印象に仕上がっている。

黒で統一されたフロントに対してバックはクリアリーホワイト・ジャストブラック・ノットピンクの3色が用意されている。今回はシンプルなクリアリーホワイトを選んだ。なお、Pixel 2 XLのホワイトはブラック&ホワイトの名前で上下に分割されたパンダカラーだったが、Pixel 3 XLでは白に統一されている。
バックの素材はアルミとガラスの組み合わせからガラスに統一。ガラスはツートン素材で、カメラやフラッシュライトなどトップに光沢のある素材を、手に触れる部分にはサラサラなマットな質感の「ソフトタッチガラス」を採用している。ガラスへの統一によって見た目や質感が向上するだけでなく、Pixelシリーズとして初となるワイヤレス充電にも対応した。

カメラはシングルレンズを採用。最近のスマートフォンは突起型のデュアルレンズを採用しているため、机に置きながら操作するとガタついてしまうが、Pixel 3シリーズのカメラはシングルレンズでわずかな突起のため、机に置いてもガタつきがなく快適に操作できる。

サイドにはアクセントとしてカラーリングされた電源ボタンとボリュームボタンが配置。ボディをグッと握ると、対話型のAI「Googleアシスタント」を起動できるアクティブエッジに引き続き対応している。残念ながら好きなアプリを起動したり、ランチャーを起動するなど割当の変更には対応していない。ソフトウェア・アップデートで対応できるため、Android 10以降での対応に期待。なお、SIMカードトレイはボトムに移動し、ボディはIP68防水に対応している。

劇的に向上した操作性とインターフェース

Pixel 3 XLが搭載するAndroid 9 Pieでは操作方法とインターフェースが大きく変更された。システムナビゲーションに配置されていたアプリ履歴ボタンは姿を消し、ホームボタンと戻るボタンはデザインが刷新されてシンプルになった。
さらに大きな変化はホームボタンにジェスチャー操作が加わったことだ。これまでホームボタンは短いタップと長いタップの2種類の操作方法しかなかったが、生まれ変わったホームボタンは従来のタップ操作に加えて、上・左・右方向のジェスチャー操作が追加されている。
ホームボタンを上にスワイプすると上段には起動中のアプリが表示され、さらにホームボタンを左右にスライドするとアプリを切り替えることができる。画面のデザインはホームボタンが廃止されたiPhoneとほぼ同じだが、スライドしたままホールドすると、本のページをパラパラとめくるようにアプリを切り替えできる操作性はオリジナルでiOSよりも優れている。


下段にはすぐにググれる検索バーと共に機械学習によってユーザー行動を分析し、次に起動すると予測されたアプリが5つ表示される。これまではインストールしたアプリがすべて表示されるドロワーに表示されていたが、頻繁に利用する画面にも表示されるようになったことで利便性が向上して利用機会がかなり増えた。

最も便利だと感じたのは画面回転の新しい操作方法だ。画面回転は、スマートフォンを横に向けるとジャイロセンサーが動きを検知して画面を縦または横に回転するというものだが、必要ではない時に画面が回転し、必要な時に画面が回転しないことが多い。ストレスになるため画面回転をオフにしている人は多いはずだ。Android 9 Pieでは画面回転のストレスと煩わしさが見事に改善されている。
これまでは機能にロックをかけた状態から画面を回転させるには、クイックパネルを表示→画面回転のロックを解除→クイックパネルを非表示にする、といったように面倒な作業が多かったが、Android 9 Pieではスマートフォンを縦または横に向けると、センサーが動きを検知してシステムナビゲーションに画面回転のアイコンを表示される。画面を回転させたい場合はアイコンをタップすれば良い。シンプルな改善方法だが、これこそユーザーが求めていたものだろう。
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
片手操作

スマートフォンの画面サイズは相変わらず大型化が進み、さらにディスプレイが縦長化されたことで片手操作が難しくなってしまった。6.3インチのビッグディスプレイを搭載するPixel 3 XLもすべてを片手で操作するのは難しい。
iOSと違って指が届きやすい下側から詰めてホーム画面にアプリを配置できるほか、機械学習によって提案されたアプリが画面下部に表示されるなど片手操作もケアされたインターフェースにはなっているが、残念ながら片手モードに対応していない。iPhoneでも当たり前のように使える片手モード(簡易アクセス)はAndroidスマートフォンが作り出したものだが、Googleは頑なに片手モードをAndroidの標準機能に取り込もうとしない。
「Pixel 3 XL」は両手操作が基本となるため、スマートフォンを片手で操作したいのであれば、5.5インチのディスプレイを搭載した「Pixel 3」をおすすめしたい。
カメラ

カメラはPixel 3/Pixel 3 XLの最も魅力的な機能のひとつだ。iPhoneやGalaxy、そしてXperiaまでも2つのレンズを搭載したデュアルカメラを採用するなか、Pixel 3シリーズはシングルカメラを採用した。
レンズが1つ少ないからといって写真のクオリティは他のスマートフォンに引けを取らず、ハードウェアxソフトウェアxAIの組み合わせによってiPhone XS/iPhone XS Max/iPhone XRよりも優れたカメラ機能と画質を実現している。
以下で紹介するPixel 3シリーズのカメラ機能ほぼすべてにAIや機械学習が使用されている。
ポートレート
特に優れているのは多彩なカメラ機能だ。同じシングルレンズを搭載するiPhone XRのポートレートは人物撮影でしか機能せず利用用途が限定されるのに対して、Pixel 3シリーズのポートレートは人物撮影だけでなく、ペットや料理などにも対応。ボケ具合もiPhone XSよりもずっと自然で美しい。
ポートレートは特に使い勝手において大きな差がある。iPhone XSでは被写体から2.5mも距離を取らないとポートレート撮影ができないが、撮影場所や被写体によっては2.5mも距離が取れないときがある。距離を取っている間に子どもが目を覚ますなど、決定的な瞬間を逃してしまうことも少なくないはず。Pixel 3シリーズのポートレート撮影なら自分の好きな距離とベストなタイミングでシャッターボタンを押すことができる。
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

ポートレートはクオリティが素晴らしいだけではない。ポートレートモードで撮影した写真をGoogleフォトで開いて調整ボタンをタップして「カラーポップ」を選ぶと、被写体はカラーに、背景はモノクロにすることでより被写体が際立てることができる。
さらに、調整タブを選択してフォーカスの合わせたい場所をタップしたり、「奥行き」のスライダーを左右に調整するとボケの量を調整することも可能だ。Googleフォトにこういった優れた編集機能が備わっていることはあまり知られていないため気づいていない人も多いかもしれない。
ナイトサイト
驚きとも言えるカメラ機能が「ナイトサイト」だ。暗い場所で明るく撮影するにはフラッシュを使う必要があるが、公共の場や店内などではフラッシュは使いにくく禁止されているところも少なくない。また、スマホのフラッシュを使って撮影した場合はいかにも“フラッシュ使ってます!!”な写真になってしまうため利用機会が非常に限定されてしまう。
そんな時に役立つのが機械学習を活用した「ナイトサイト」で、暗い場所と明るい場所を自動認識してソフトウェアで色を補正する。色の補正は機械学習によって正しく、自然な色に補正されるため、フラッシュを使うことなくバーや夜の公園など暗い場所でも明るく、ブレのない写真が撮影できる。
これまではスマホのカメラで暗い場所を撮影すると何が写っているかもわからない仕上がりになることが多かったが、Pixel 3シリーズなら撮影が難しい夜景でも撮影前に諦めることなく撮れるのが嬉しい。


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超解像ズーム
iPhone XSなど2つのレンズを搭載したスマートフォンでは、広角レンズと望遠レンズを切り替えることで画質を落とさずにズーム撮影ができるが、Pixel 3などシングルレンズのカメラを搭載したスマートフォンでは、画像を拡大して切り取るデジタルズームの利用が強制されるため、画質が大幅に落ちてしまう。
そこで、Googleは地球から7528万キロメートルも離れた火星の表面を撮影する技術をPixel 3シリーズのカメラに導入することでズーム撮影時でも鮮明なディテールを保持したままの写真撮影を実現した(複数の写真を合成することで鮮明な写真を作り出している)
以下の2倍ズーム時の写真は画質の劣化がないiPhone XSで撮影された写真と比較しても画質の差は感じられない。
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HDR+、トップショット
Pixel 3シリーズのカメラは、逆光など明暗差が激しいシーンで発生する黒つぶれや白飛びを解消する「HDR+」に対応する。
輝度や絞りなどの異なる写真を同時に7枚撮影し、内部で1枚に合成することで黒つぶれや白飛びを抑えた写真を作り出す。HDRはスマホカメラの代表的な機能も言える機能だが、GoogleはHDR+で行っている複数枚の写真を合成する技術をナイトサイトや超解像ズームに応用。さらに、注目の新機能「トップショット」にも応用されている。
「トップショット」は、シャッターボタンを押した前後1.5秒の写真を記録して目が閉じたり、くしゃみをしていたり、髪をかいた手など被写体を邪魔してうまく撮影できなかったものをAIが認識してベストなタイミングの写真をおすすめとして表示する新しいカメラ機能だ。
まぶたを閉じる動作は一人だけでなく、カメラに写っているすべての人に適用されるためセルフィーだけでなく、グループショットにも有効。なお、記録した写真はすべてHDR+で記録されているため、シャッターを切るだけでタイミングも画質もベストな写真が撮影できる。
作例
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Googleレンズ
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Pixel 3シリーズの登場時にメディアが最も多く取り上げたのが「Googleレンズ」だった。
Googleレンズは、カメラで写したものを認識して関連情報を表示するというもの。例えば、ランドマーク(建物)の情報や服・靴などの価格や販売ページ、類似商品を表示したり、花や動物の種類を特定したり、テキストをコピーしたり、Google翻訳を使った翻訳機能が利用できる驚くべき機能だ。
Googleレンズ自体は1年以上も前に開催された開発者向けのイベントGoogle I/Oでお披露目されたもので新しい機能ではない。ただ、Pixel 3シリーズの発売と共にようやく日本語に対応。さらに、これまではカメラで写真を撮影して認識する必要があったが、新たにリアルタイム認識にも対応したことで別物といえるほど使い勝手が向上している。

快適なパフォーマンスと優れた電池持ち
Pixel 3シリーズは今季のフラグシップモデルの多くが採用しているSnapdragon 845を搭載している。性能を数値化するベンチマークを計測したところAnTuTuでは283,777を記録した。これは、Xperia XZ2やGalaxy S9、HUAWEI P20 Proを上回り、Galaxy Note9やOPPO Find Xに並ぶレベル。高い負荷を要求するゲームアプリも快適にプレイできる。発熱はあるが性能が急激に落ちたり、ストレスを感じることはなく、パフォーマンスと発熱はiPhoneも含めた他のスマートフォンに引けを取っていない。
購入前に気になっていたのが搭載するメモリ(RAM)の容量だ。フラグシップモデルとしては物足りない4GBのため、多数のアプリを起動して動作が遅くなったり、アプリを切り替えた時にメモリがクリアされて画面の状態が保持されずリフレッシュされてしまうなどの影響が考えられる。実際に利用してみてメモリ不足を感じることはほぼないが、カメラを起動しながら他のアプリを併用するシーンにおいてはアプリの切り替え時に一瞬もっさりと感じることもあった。
なお、11月14の時点でGoogleはメモリ管理にバグがあることを認識しており、バックグラウンドで動作しているアプリが落ちてしまう事象を報告している。今後数週間以内に提供されるアップデートで改善されるようだ。メモリに関して正しく評価できるのはこのバグが解消された後になるだろう。

バッテリー容量は大容量の3,430mAh。画面の明るさを最大にしてYouTubeを連続視聴したところ約8時間後にバッテリーが切れた。これはiPhone XS Maxを1時間も上回る記録で動画視聴における電池持ちは非常に優秀と評価できる。実利用においても昼に出かけて移動中にマップやニュースアプリ、SNSを起動。数時間カメラを使って写真を撮影するなど、ヘビーに7時間利用したが40%も電池が残っていた。無操作状態でも電池の減りが速いのが気になるところだが、全体的な電池持ちは非常に良い。
大容量のバッテリーは充電に時間がかかるが、Googleは急速充電が可能なPowerDelivery対応の充電器をパッケージに同梱している。これは異例の対応だ。純正の充電器を使用して充電したところ1時間50分でフル充電できた。なお、Pixel 3/Pixel 3 XLはシリーズ初のワイヤレス充電に対応しているが、今のところ純正のワイヤレス充電スタンド「Pixel Stand」を利用した時のみ急速充電が利用できる。その他のワイヤレス充電では10W出力をサポートしていても低速充電になってしまうため、フル充電までに5時間以上かかってしまった。
なお、GoogleはMade for Googleプログラムで認証されたサードパーティ製品についてはPixel Standと同じように10Wで高速充電できるよう進めているとコメントしているため、これから急速充電に対応したサードパーティ製品が多数出てくるはずだ。
セキュリティ

セキュリティはPixel 3 XLのウィークポイントかもしれない。精度やスピードに問題があるわけではないが、トレンドの顔認証ではない上に、指紋認証センサーは使い勝手が悪い背面の配置になっているため、机に置いたままPixel 3 XLの操作を始める場合は一度端末を持ち上げて指紋認証を利用するか、いちいち長いパスコードを入力しなければならない。
これがわずらわしい場合は、おすすめの設定でも紹介した自宅やPixel 3がスマートウォッチの近くにある場合など特定の条件下で画面ロックを常に解除しておけるスマートロック機能を使う必要がある。
おサイフケータイの驚きとiDの罠

Pixel 3/Pixel 3 XLの日本発売だけで十分だったはずだが、なんとFeliCaを搭載し、おサイフケータイにも対応するという大きなオマケが付いてきた。
電子マネーの「QUICPay」、交通系電子マネーの「Suica」、セブン-イレブンやイトーヨーカドーなどセブン&アイグループでおトクに使える「nanaco」、イオンやダイエー、マックスバリュで使える「Waon」、楽天ポイントが貯められる「楽天Edy」など幅広く対応している。
ドコモのiDは少し複雑だ。iDアプリはキャリア版とSIMフリー版の2種類が用意されているが、Pixel 3/Pixel 3 XLは、購入先に関わらずSIMフリー版のアプリしかダウンロードできない。ドコモから購入してもだ。そして、SIMフリー版のiDアプリでは、dカード/dカード GOLD/dカード miniのiDを登録できないというdカードユーザーにとって非常に残念な制限がある。
まとめ:「Pixel 3」と「Pixel 3 XL」の選び方

「Pixel 3 XL」の素晴らしい機能を1つ上げるならばやはりカメラだろう。ハードウェアxソフトウェアxAIの組み合わせによってシングルレンズながらデュアルレンズの「iPhone XS」を上回るほどのポートレート撮影を実現。暗い場所だけではなく暗闇のような場所でも明るく撮影できる「ナイトサイト」、デジタルズームながら圧倒的に画質の劣化が少ない「超解像ズーム」など、他のスマートフォンにはない魅力的なカメラ機能が1つだけでなく複数備わっている。
優れたカメラで撮影した写真や動画を映し出す有機ELディスプレイも素晴らしい。6.3インチ・極薄ベゼルによって迫力のある映像が楽しめるだけでなく、色彩が鮮やかで陰影がくっきり表現されるPixel 3 XLの表現力はiPhone XSよりも優れている。
容量は64GBと128GBの2種類しかなくmicroSDにも対応していないが、最も容量を喰うPixel 3 XLで撮影した写真や動画はオリジナルの画質のまま無制限に2022年1月31日までGoogleフォトに無料で保存できる。
なお、今回はディスプレイが大きく、大容量のバッテリーで電池持ちの良い上位モデルの「Pixel 3 XL」をレビューしたが、片手操作を妥協できない場合や電池持ちを気にしないのであれば、チップセットやカメラの性能は同じで価格が安い「Pixel 3」をおすすめする。
今季最高のスマホの1つに違いない「Pixel 3 XL」は、SIMフリー版が64GBは11.9万円、128GBは13.1万円。ドコモとソフトバンクから販売されるキャリア版も端末価格はほぼ同じ。ドコモ版は月々サポートで実質6.5万円〜に、ソフトバンク版は25ヶ月目に機種変して現在使っているスマホを返却すると半額になる。
また、片手で操作しやすい「Pixel 3」は、SIMフリー版が64GBは9.5万円、128GBは10.7万円。ドコモ版は実質2.7万円、ソフトバンク版は64GBが9.8万円、128GBが10.8万円となっている。