総務省は6月11日に開催された「モバイル市場の競争環境に関する研究会」で、事前に報じられていたとおり2年契約の違約金を9,500円から1,000円以下にすること、さらに2年契約あり/なしのプランの価格差が月額170円に抑える方針を明らかにしたようだ。
違約金1,000円の根拠は安易なアンケート
携帯各社は契約期間に縛りのないプランに加えて、2年契約を条件に料金を割引するプランを提供している。
後者のプランは“2年縛り”とされ、更新期間外でプラン変更または解約すると9,500円の違約金がかかるが、研究会ではアンケートを元に違約金の上限額を1,000円までにすることが提案された。1,000円であればキャリアを乗り換えるといった回答率が8割を超えたそうだ。
アンケートがどういった取り方をされたのかはわからないが、例えば「違約金がいくらであれば事業者をのりかえますか?」と問い、選択肢が1,000円未満、1,000円以上、2,000円以上と並ぶ場合、ほとんどの人間が1,000円未満を選ぶに違いない。0円が選択肢にあれば大多数が0円を選ぶだろう。わざわざ高い違約金を選択肢を選ぶ人は聖人だ。
違約金の変更で料金プラン値上げか
研究会では違約金を変更することで2年契約あり/なしプランの価格差を調整することについても言及されたそうだ。
そもそも違約金はなぜ存在するのか?極端な話、違約金がなければ全員が料金の安い2年契約ありプランを選ぶ。そこで携帯各社は違約金を設定することでユーザーが一定期間は実質的に解約できないようにしている。
各社が損をしないにように設定された違約金が9,500円だ。2年契約あり/なしプランの価格差はキャリアや料金プランによって様々だが、ドコモの「ギガホ」は1,500円*に設定されているため、ユーザーに6ヶ月以上*利用してもらうことを前提に違約金を9,500円に設定している。
ギガホ – 定期契約あり: 月額6,980円、定期契約なし: 月額8,480円
違約金(9,500円) / 価格差(月額1,500円) = 6.3ヶ月
1,500円の価格差のまま違約金を1,000円に値下げすれば、多くの人が料金の安い2年契約ありプランを選んで1ヶ月で解約するだろう。新規契約と解約を繰り返すようなユーザーも出てくれば各社は損をする。そのため価格差を調整しなければいけない。
違約金が1,000円であること、現在と同じく6ヶ月以上の利用を前提にすると、価格差は170円になる。
2年契約あり/なしプランの価格差が1,500円から170円になることで、2年契約なしプランの値下げだと思う人もいるようだ。そのため2年契約ありプランは今後なくなるだろうと予測する記事もあるが、それはどう考えてもおかしい。
前述したとおり、各社は2年契約を条件に料金を割引しているため、価格差のベースラインは2年契約なしプランにある。つまり、2年契約ありプランが月額1,330円分値上げされるということだ。
総務省は今年秋に楽天モバイルが第4のキャリアとして新規参入することを受けて事業者間の競争を促進させることにやっきになっているが、その結果料金プランが値上げになる可能性がある。前回もいい加減な根拠を元に「4割値下げの余地がある」と言って各社に料金値下げを迫ったが、結局は一部のユーザーにしか影響がなく期待ハズレに終わった。期待ハズレならまだいいが、今回の内容では値上げになってしまう。総務省はあまり口を出さない方が良いのではないだろうか。