AppleのフルワイヤレスイヤホンAirPods 2が2019年3月26日に発売された。第1世代のAirPodsは大ヒットを記録。街で見かけない日はなくなった。
この記事では、まったく新しいApple H1ヘッドフォンチップを搭載することで大きな進化を遂げたAirPods 2のデザイン、音質、音漏れ、音の遅延をレビューする。
目次
デザイン
賛否あったデザインはAirPods 2でもまったく変わらなかった。変わらないデザインは良いことも悪いことも次の世代へそのまま引き継いでいる。
良いところは初代モデルを愛用していた人ならばこれまでとまったく同じフィット感でさらに良くなったオーディオ体験を得られることだ。
進化したオーディオ体験は、Appleが設計した最新のヘッドフォンチップ「H1」がもたらす。新たに「Hey Siri」に対応し、音の遅延や電池持ちも向上した。もちろん、AirPodsを耳から外すと音が一時停止され、もう一度、耳に付けると自動で音楽が再開する機能は新しいAirPodsでも利用できる。
それでもコンパクトなサイズとわずか4gの重さはこれまでと変わらない。
一方、悪いところは初代モデルが耳に合わずポロポロと落ちてしまい、第1世代のAirPodsを諦めた人は今回も諦めなければいけないことだ。
個人的に気になるのはプラスチックの継ぎ目だ。この溝には使用するごとに耳垢が詰まってしまう。あまり気持ちのいいものではない。
AirPods本体のデザインに変化はなかったが、充電ケースには小さな変化があった。
新しいAirPodsと共に発売された「Wireless Charging Case」は、ワイヤレス充電をサポートするために充電コイルを内蔵したことで2g重くなり、セットアップボタンの場所が変更された。ヒンジはツヤのあるステンレススチールからツヤのないアルミニウムに変わっている。第1世代と第2世代を見分ける数少ないポイントだ。
音質と音漏れ
第1世代AirPodsの音質はiPhoneに同梱されている有線イヤホンのEarPodsとほとんど同じだった。音質について物足りないという声も多いが個人的に不満はない。
新しいAirPodsの音質はどうか。第1世代と比べて明らかな音圧の違いを感じるが、2年間ヘビーに使ったAirPodsとのフェアじゃない比較だ。第1世代も購入した直後は同じ音圧だった可能性ある。
何よりも信頼できるのはAppleが音質が良くなったと説明していないことだ。おそらく変わってないのだろう。実際に聴き比べても音圧以外の違いは感じなかった。変わったという人もいるかもしれないが、大半の人はそう感じないはずだ。
一般的なフルワイヤレスイヤホンが耳の穴に挿れて使用するカナル型を採用するのに対して、AirPodsは耳に引っ掛けるインナーイヤー型を採用している。
インナーイヤー型のメリットは耳への負担が少なく長時間音楽を聴いていられることだ。ポッドキャストや先日開催されたAppleのスペシャルイベントなどAirPodsを数時間使用することもが多い自分にとっては嬉しいポイントだ。
一方、スピーカーから出た音が外部に漏れやすい。ほかにも外部の環境音がAirPodsで再生される音楽に混ざる。耳から抜けやすいといった弱点もある。
これらの弱点はAirPods 2でも変わっていない。
ただ、耳が痛くなるような爆音にせず、適切な音量にしていれば音漏れは気にしなくていいはずだ。音漏れが気になる場合はAirPodsと同じ形状の「EarPods」で音楽を聴き、友だちなどに隣に座ってもらってどれぐらいの音量で音が漏れるのか試してみてはどうだろうか。
「耳から外れない?」と聞かれることも多いAirPodsだが、不思議と頭を激しく振っても耳から外れることはない。ただ、上下運動には弱くランニング中にAirPodsが耳から飛んでいったこともあった。初めてAirPodsを購入する人は自分の耳に合うかどうかもiPhoneに同梱されている「EarPods」を使って確かめた方が良いだろう。
音の遅延
映像に対して音が遅れて聞こえてくる音ズレは、AirPodsだけでなくすべてのワイヤレスイヤホンに共通する弱点だ。
ワイヤレスイヤホンの中でも遅延しにくい製品はある。AirPodsはまさに音が遅延しにくいイヤホンだ。第1世代のAirPodsを2年以上も使ったが音の遅延にストレスを感じたことはあまりない。
ただ、AirPodsは音楽を聴いたり、動画を見るのがメインで音ゲーはほとんどプレイしていなかった。AirPods 2ではゲームをプレイするときの遅延が最大で30%も低減されているがその効果はどうだろうか。
第1世代と第2世代のAirPodsでミュージックリズムゲーム「Deemo」をプレイしてみるとどちらでも遅延を感じる。ただ、AirPodsをシャッフルしてプレイしても耳に装着しているのがAirPods 2なのかそうでないのかを百発百中で当てられるほど遅延に違いがある。
「音ゲーマーは安心して」とは言えないが、小さくない改善がされていることは間違いない。
魔法のようなワンタップ接続
一般的なワイヤレスイヤホンは、スマホの画面を何度もタップして設定画面の奥深くに行き着いたものの、買ったばかりのイヤホンが見つけられず、最も大切な最初の体験が台無しになってしまうことが普通だった。
AirPodsにこのストレスは存在しない。AirPodsを箱から取り出して充電ケースの蓋を開けてiPhoneの画面を1回タップするだけ一瞬で接続が完了。充電ケースからAirPodsを取り出して耳に付ければ音楽が再生される。
AirPodsの設定が完了すれば、設定情報がiCloudを通じて各デバイスに共有されるため、それぞれのデバイスで同じことを繰り返す必要はない。コントロールセンターやメニューバーからAirPodsを選ぶだけでいい。
H1チップを搭載した新しいAirPodsでは、デバイスの切り替えが最大で2倍もスピードアップした。
AirPodsを使っている人には通勤時にiPhoneで音楽を聴いて、職場のMacで音楽を聴いて、ワークアウト中にApple Watchで音楽を聴くという人も多いはず。そんな人には嬉しいアップデートだ。
優れた電池持ちとワイヤレス充電
第1世代AirPodsの電池持ちも非常に優れていたが、新しいAirPodsはH1チップを搭載することで音声通話時の電池持ちはさらに長くなった。残念ながら音楽の再生時間は最大5時間で第1世代から変わっていない。なお、Apple Musicを使って検証したところ1時間で15%ずつ減少することを確認。約6時間で0%になった。
AirPodsはケースに戻すだけで充電される。わずか15分で約70%まで充電され、3時間の音楽再生または最大2時間の連続通話が可能だ。
新しいAirPodsの登場と同時に登場したワイヤレス充電ケース「Wireless Charging Case」を選択すれば、AirPodsをケースに入れてパッドの上に置くだけで充電できる。充電がスタートするとLEDインジケーターがオレンジに点灯するが、点灯するのは数秒間だけ。AirPodsを置く位置がズレて充電されてなくても気づかないだろう。
AirPodsとデザインの相性が良いBelkinのワイヤレス充電器「Belkin Boost Up Wireless Charging Pad」(レビュー記事)に、充電ケースを置くと30分で20%の充電ができた。Lightningケーブルで充電すると30分で36%まで充電されるため、急いでいる時はLightningケーブルで充電した方が良いだろう。
「Wireless Charging Case」の価格は通常の「Charging Case」に比べて5,000円も高く設定されている。その価値はあるだろうか。
AirPodsは本体・充電ケースともに電池持ちが良く充電する機会がiPhoneやApple Watchよりも圧倒的に少ない。多くの人にとってその価値はないだろうが、充電を忘れがちな人にとっては魅力的なオプションだろう。
というのもAirPodsをワイヤレスで充電できることで、カギは玄関の棚に、服はクローゼットに、靴は下駄箱に、といったようにAirPodsの定位置がワイヤレス充電器の上になり、置くという動作が充電を兼ねるため充電を忘れる回数は大幅に減るはずだ。
自分がワイヤレス充電のオプションを選択した理由は「AirPower」にある。
AirPodsとの同時販売が計画されていたであろうApple純正のワイヤレス充電器は、iPhone/Apple Watch/AirPodsといった日常的に利用するすべてのデバイスを同時に充電できる。
今はiPhoneとAirPodsで使うワイヤレス充電器、Apple Watchで使うワイヤレス充電器がデスクの上にあるが「AirPower」はこれらを1つにまとめられる。「AirPower」の存在を考えればワイヤレス充電ケースを選ばない手はなかった。
UPDATE:2019-03-30 5:14Appleが「AirPower」の開発を中止し、発売を断念することを発表しました。
もう1つは次期iPhoneだ。
今年秋に発売されるiPhoneは、GalaxyやHUAWEIのスマートフォンのようにワイヤレス充電に対応したイヤホンを背面に乗せるだけで充電できると噂されている。つまり、iPhoneが持ち運びできる「AirPower」になる可能性があるということだ。実現しないかもしれないが、実現した時に充電ケースを買い直すことはしたくない。
Hey Siri
H1チップを搭載した新しいAirPodsは声でSiriを起動できる「Hey Siri」にも対応した。
「Hey Siri、音量を上げて」「Hey Siri、自宅までナビして」「Hey Siri、お父さんに電話して」「Hey Siri、Instagramを起動して」といったさまざまな操作を完全にハンズフリーでこなせるようになった。
第1世代のAirPodsでSiriを起動するにはスピーカーの部分を2回タップする必要があったが、うまくいかないことが多くあまり使わないようになっていた。新しいAirPodsでは、イヤホンに手を伸ばす必要がなくなったことで、ワークアウト中などiPhoneやApple Watchを操作できない時に重宝するはずだ。
「ヘイシリ!」と口にするのが恥ずかしいという人も多いだろう。ただ、AirPodsは長いSiriへの命令も加速度センサーとビームフォーミングマイクによって、声の発生元の音だけを強調して拾い、周りのノイズを取り除くことで高い精度で聞き取る。周辺の音がうるさくなければ小さな声でもしっかりと拾ってくれる。
なお、Her Siriに対応したことでダブルタップを曲送りや曲戻し、再生・停止に割り当てやすくなったことも嬉しいポイント。割り当ての変更はiPhoneの設定画面から可能だ。
まとめ: AirPods 2を買うべき人は?
2年前に発売されたAirPodsを今や見かけない日はない。今、電車でこの記事を書いてるが前の人もAirPodsで音楽を楽しんでいる。
AirPodsは特に若い世代を中心に人気で女性のユーザーも多い。これはデザイン性に優れ、イヤホンに詳しくない人でもカンタンに使えるということだ。
イヤホンは目につきやすくピアスやイヤリングのようにアクセサリとしても見られてしまう。ただ、AirPodsのデザインはファッションに敏感な若者に受け入れられた。2年前に「耳からうどん」「ダサい」と言ってた人も今はAirPodsを愛用しているという人も少なくないはずだ。
デザインでAirPodsの食わず嫌いになっていた人は今一度、検討するべきだろう。
初めてフルワイヤレスイヤホンを買うという人や今使っているイヤホンの買い替えを検討している人は、iPhoneやMacを使っているのであればAirPodsを第一候補にすることをオススメする。魔法と表現できる音楽体験は他の製品では味わえない。
第1世代のAirPodsを愛用していた人は無理に買い換える必要はないだろう。音の遅延改善/Hey Siriによるハンズフリーの実現/音声通話の電池持ち改善といったアップデートが自分に必要かどうか考えて検討しよう。
なお、新しいAirPodsの登場と同時にワイヤレス充電に対応するケース「Wireless Charging Case」が単体で販売されている。この充電ケースは第1世代のAirPodsにも対応しているため、AirPods 2はいらないけどワイヤレス充電に魅力を感じるのあればチェックしてはどうだろうか。
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