Appleの新しいフルワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」が2019年11月2日に発売された。
この記事では圧迫感のないアクティブノイズキャンセリングや耳から落ちないカナル型を採用するなど“Pro”レベルに進化した「AirPods Pro」の音質、音漏れ、音の遅延などをレビューする。
目次
- デザイン
- 最高のノイズキャンセリング
- 耳から外さず会話もできる「外部音取り込み」
- 操作性を格段に進化させた「感圧センサー」
- 音質・音漏れ・遅延
- 空間オーディオ・ダイナミックヘッドトラッキング
- 自動切り替え
- 電池持ち
- まとめ
デザイン
「ダサい」という声も少なくなかったデザインは「AirPods Pro」で大きく変化した。
ヘッドフォンは耳に引っ掛けるインナーイヤー型から耳に入れるカナル型にチェンジ。さらに、ヘッドフォンから伸びる軸が短くなったことでデザインに対するほとんどの不満は解消されている。
デザインの変化は良いことばかりではない。
「AirPods Pro」は通常のAirPodsよりもヘッドの部分が大きくなっている。プラスチックの硬いヘッドと耳の軟骨の触れる面積が広くなったために使用していると耳が痛くなる。耳に入れてから10分ぐらいで痛み出して2時間足らずで外したくなるほど。自分だけかと思ったが、Twitterでも耳が痛くなるとの報告が相次いでいる。日本人の小さい耳には合わないのかもしれない。
通勤や通学など短い時間に音楽を聴くだけなら問題はないが、作業や勉強しながら長時間利用することは難しい。インナーイヤー型からカナル型になったことで耳から抜け落ちる心配はなくなったが、“Pro”になっても耳との相性を気にかけなければいけない。
店頭で気軽に試せるものではないため厄介な問題だが、Apple公式サイトやApple Storeで購入して受け取りから14日以内であれば開封済みでも使用済みでも返金してもらえる。
なお、充電ケースは「AirPods Pro」のサイズが短くなったこともあるのか縦長から横長に変わった。重さは40gから45gに変わったが大した違いではない。電池持ちや充電時間などの仕様もほぼ同じだ。
最適なイヤーチップ選びをサポート
カナル型イヤホンでは密閉性を高めるために、耳の大きさ・形に合わせて最適なイヤーチップを選ぶ必要があるが、“なんとなく”でイヤーチップを選んでいる人や買ったそのままで使っている人も多いはず。
「AirPods Pro」にもS/M/Lのイヤーチップが同梱されているが、iPhoneの設定画面から「イヤーチップ装着状態テスト」をすると、正しいサイズか、しっかり装着されているかをわずか数秒で教えてくれる。
自分では最適と思って選んでも実は最適じゃないチップを選んでいる人もいるはず。自分もその1人だった。。。
最高のノイズキャンセリング
“Pro”ならではの機能として「アクティブノイズキャンセリング」が新たに搭載されている。これが「AirPods Pro」最大の目玉機能
どれほどの効果があるのか―結果から言えば素晴らしいデキだ。
通常のAirPodsは外部音が耳に入りやすい形状のため音や作業集中しづらい。外部音を消すためにボリュームを上げることも多く、音漏れが気になるところだったが、アクティブノイズキャンセリングを搭載した「AirPods Pro」は装着した瞬間にほぼ無音の世界が広がる。
電車に乗っていてもホームで待っていても走行音が気にならないレベル。人が多くて騒がしいカフェでも周りの声を気にせず音と作業に集中できる。無音に近い世界で音楽を聴けるため、小さい音量でもしっかり耳に届く。無意味に音を上げて音漏れや音響性難聴になる心配がない。
一般的なノイズキャンセリングとカナル型のイヤホンには独特の圧迫感があって頭が痛くなるという人も多いが、「AirPods Pro」は“革新的な通気システム”によってこの問題を見事にクリアしている。さすがに圧迫感なしとはいかないが、他社のノイズキャンセリングと比較すると格段の差がある。
耳から外さず会話もできる「外部音取り込み」
超優秀なノイズキャンセリング機能だが、電車のアナウンスを聞きたい時やコンビニなどのレジ、人と会話する時などノイズキャンセリングが必要にない事も多い。そんな時は軸の部分を長くつまむだけでノイズキャンセリングから外部音取り込みモードに変わる。
重要なのはノイズキャンセリングがオフになるわけではなく外部音を取り込むという点。カナル型の「AirPods Pro」は耳栓の役割を果たすため、ノイズキャンセリングをオフにしただけでは聞き取りづらい。そこで外部音を取り込むことでAirPodsを耳から外さなくても電車のアナウンスなどを聞くことができるというわけだ。
操作性を格段に進化させた「感圧センサー」
AirPodsは操作性が悪かった。ヘッドをダブルタップすると再生/一時停止・スキップ・Siriのなかから2つだけ選ぶことができたが、操作項目が足りない上に感度が悪くランニングなどワークアウト時には役に立たなかった。
この操作性の悪さを解消するために「AirPods Pro」には軸部分をつまむようにして操作する「感圧センサー」が搭載されている。
左右のセンサーを1回つまむと曲の再生/一時停止/電話応答、2回つまむと次の曲にスキップ、3回つまむと前の曲にスキップ。長くつまむとアクティブノイズキャンセリングと外部音取り込みを交互にオンにできる。設定画面から変更することでSiriを割り当てたり、ノイズキャンセリングと外部音取り込みの両方をオフにすることも可能。
ダブルタップ操作から“つまむ”というホールド感のある操作に変わったことでAirPodsの操作性は格段にアップしている。
不満はいまだにボリュームの変更ができないこと。「Hey Siri, 音量下げて」と口にするか、ポケットからiPhoneを取り出すか、Apple Watchで操作しなければならない。
音質・音漏れ・遅延
肝心の音質はどうか。
通常のAirPodsと聴き比べてみると「AirPods Pro」はカナル型とアクティブノイズキャンセリングによる密閉性によって没入感がまったく異なる。快適な装着感と引き換えにノイズが乗ってしまうインナーイヤー型とは勝負にならない。音漏れについても同様だ。
音質をより良いものにする新機能として「アダプティブイコライゼーション」も搭載されている。これは「AirPods Pro」が耳の形を認識してそれに合わせて自動的に音楽の低位音域部分と中音域部分を自動で調整するというもの。確かに通常のAirPodsに比べてバスがしっかり効いてて低音域は聞き応えがある。
Appleのホームスピーカー「HomePod」には部屋の形や設置場所によって音質を最適に調整する機能が搭載されていたが、アダプティブイコライゼーションはそれに近い機能だ。
そしてワイヤレスイヤホンの永遠の課題である音の遅延。
第2世代AirPodsにおいてゲームプレイ時の遅延を最大30%も低減したH1チップは「AirPods Pro」にも引き継がれている。ただ、そのまま引き継いだわけではなくH1チップをベースにしたシステムインパッケージとして搭載されている。10個のオーディオコアを採用することでオーディオ処理の遅延が驚異的に抑えられ、リアルタイムのノイズキャンセリングが可能になったとしている。
チップの進化が音の遅延と直接的に関係しているかは不明。遅延が少なくなったという声もあるが、比較対象が初代AirPodsなのか第2世代AirPodsなのかわからない。手元の第2世代AirPodsと比較してみたが遅延に関して大きな差は感じられなかったし、そもそも第2世代AirPodsでも大きな遅延を感じたことはなかった。
空間オーディオ・ダイナミックヘッドトラッキング
2020年9月17日に配信開始となった「iOS 14」でAirPods Pro向けの新機能が追加された。1つはイヤホンで映画館のような音楽体験が楽しめる「空間オーディオ」だ。
この新機能は空間の自由な場所に音を配置することで臨場感あふれるサラウンドサウンド体験を楽しめるというもの。前、左右、後方左右から音が飛び出すサラウンド効果は非常に高く、音が空間化されることでこれまでのAirPodsとは別物になる。
もう1つは「ダイナミックヘッドトラッキング」で、頭やデバイスの動きを加速度センサーとジャイロセンサーで追跡してそれに応じて音場がリマップされる。カンタンに言えば頭を左右に動かしてもスピーカーの位置が変わらない。
例えば空間オーディオが有効な状態では前から音が出てくる。通常は頭を横に動かすと追従してくるがダイナミックヘッドトラッキングによって音がリマップされて指向性が固定されるため音も横から出てくるように聞こえる。ただし、頭を動かしたときに指向性が保てるのは前方の音のみで左右、後方の音は頭の動きに追従するように感じた。それでも効果は高い。
なお、いずれも5.1ch/7.1chやDolby Atmosに対応したコンテンツでのみ有効になるAirPods Pro限定の機能だ。
自動切り替え
空間オーディオとダイナミックヘッドトラッキングと同じようにiOS 14でデバイスの自動切り替え機能が追加された。
これは利用しているデバイスに合わせて接続先を自動で切り替えるというもの。例えばiPhoneで通話を終えてMacでテレビ会議に参加するとiPhoneからMacに自動で接続先が切り替わり、Macでテレビ会議を終えてiPadで映画を見ると自動でMacからiPadに接続先が変わる。面倒だった接続先の切り替え作業から解放される便利な機能だ。
電池持ち
電池持ちは初代AirPodsから変わらず最大5時間の連続再生。アクティブノイズキャンセリングを利用すると最大4.5時間になる。ノイズキャンセリングをONにした状態でYouTubeとApple Music、ゲームを使い分けながら検証してみたところ、4時間で右が0%に、5時間で左も0%になった。購入した直後の第2世代AirPodsと比べると1〜2時間短い。そしてなぜか右だけ電池持ちが悪い結果になった。
AirPodsは付属のケースに収めるだけで充電される。ケースと併用した場合は24時間以上の使用が可能。わずか5分間で約1時間分の充電ができる。
充電ケースはLightningはもちろん、ワイヤレス充電に対応しているため、Qi対応のワイヤレス充電器にケースを乗せるだけで充電できる。充電のスピードはLightningの方が早いため急いでいる時は有線での充電がオススメだ。
まとめ: AirPods Proを買うべき人は?
It's GOOOOD!!
- 新しいデザイン
- 明らかに向上した音質
- 圧迫感のないノイズキャンセリング
- 装着したまま会話できる外部音取り込み
- 耐水・耐汗
- 感圧タッチによる操作性の改善
TOUGH...
- 高額な価格設定
- 改善されなかった電池持ち
- 耳が痛くなるヘッドのデカさ
「AirPodsが気になっていたけどデザインが。。。」
「AirPods前に使ってたけど耳からポロポロ落ちて使うのやめた」
「AirPodsは音質が…」
「AirPodsってノイズキャンセリングないじゃん」
こう言っていた人は「AirPods Pro」の購入を検討した方が良い。
発売から3年が経ったことで街で見かけないことはなくなったデザインに対して拒絶していた人は少なくなっているが、新しいデザインを採用した「AirPods Pro」ではうどん感がなくなったことでさらに選びやすくなった。
カナル型を採用することで耳から落ちにくくなっただけではなく、ランニングなどの激しいワークアウトでも使えるように。さらに、IPX4の耐水・耐汗性能も備えているため、汗が吹き出る暑い日でも雨の降る日でも安心して使用できる。
無音の世界でお気に入りの音楽を流せる「アクティブノイズキャンセリング」とユーザーの耳の形にあわせて音質を最適化する「アダプティブイコライゼーション」によって劇的に音質が向上。ノイズキャンセリング“革新的な通気システム”によって嫌な圧迫感は無くなっている。
iOS 14では映画やテレビも映画館のようなサラウンドサウンドで楽しめる「空間オーディオ」と「ダイナミックヘッドトラッキング」にも対応した。
デザイン・音質・操作性・耐水などあらゆる面で進化した「AirPods Pro」の販売価格は税込30,580円。決して安くはないがそれだけの価値が確かにある。