日本時間9月4日、GoogleがすべてのPixelスマートフォン向けに「Android 10」を正式にリリースしました。
この記事では「Android 10」の新機能や変更点、使い方をまとめています。
目次
- 配信スケジュール
- アップデート対象モデル
- 5Gに対応
- 2ボタン/3ボタンナビゲーション
- ジェスチャーナビゲーション
- GPSへのアクセス許可に“アプリの使用中のみ”が追加
- 外部ストレージのサンドボックス化
- バックグラウンド→フォアグラウンドの制限
- TLS1.3のサポート
- 折りたたみデバイスの標準サポート
- スピードアップされたデータ共有
- アプリから離れず設定変更できる「設定パネル」
- サードパーティがカメラの被写界深度情報を取得可能に
- 新しい音楽・ビデオコーデックをサポート
- 目と電池に優しい「ダークテーマ」
- スマートリプライがアクションにも対応
- Wi-FiのパスワードをQRコードで共有可能に
- 誤って削除したアプリを戻すことが可能に
- 動画などに字幕を自動付与する「Live Caption」
- 集中したい時にアプリを制限する「フォーカスモード」
- 子どものスマホ管理機能「ファミリーリンク」を標準搭載
配信スケジュール
「Android 10」の配信スケジュールは上記のとおり2019年3月14日にBeta 1が公開され、6月まで毎月初旬にアップデートが提供されました。
Beta 2〜Beta 3では機能の追加・改善が実施され、Beta 4でAPIが最終版になったことで、開発者はベータプログラムの参加者にアップデートをいち早く提供可能に。Beta 5〜Beta 6では最終的な試験段階に入り、小さな改善・修正を行ったのち、9月4日に正式版が配信されています。
なお、サードパーティのデバイスでは5月8日に公開されたBeta 3からベータプログラムに参加できるようになりました。
アップデート対象モデル
正式版の配信時点で「Android 10」にアップデートできるのは、Pixel/Pixel XL/Pixel 2/Pixel 2 XL/Pixel 3/Pixel 3 XL、Essential Phoneの6機種。
ベータ版の段階では以下のサードパーティのデバイスにもインストールできたので、より速くアップデートが提供されるかもしれません。
- ASUS Zenfone 5Z
- Essential Phone
- Huawei Mate20 Pro
- LGE G8
- Nokia 8.1
- OnePlus 6T
- Oppo Reno
- realme 3 Pro
- Sony Xperia XZ3
- TECNO SPARK 3 Pro
- Vivo X27
- Vivo NEX S
- Vivo NEX A
- Xiaomi Mi 9
- Xiaomi Mi MIX 3 5G
ベータ版「Android 10」の導入方法は以下の記事で詳しく解説しています。
5Gに対応
Android 10は、圧倒的なハイスピードと低遅延が特徴の次世代通信規格「5G」を標準でサポートします。
なお、日本では5Gのプレサービスがスタートしており、2020年から本格的に開始となります。開始直後は一部の都市に限定され、徐々にエリアが拡大するはずです。
2ボタン/3ボタンナビゲーション
アップデートを重ねるたびに操作方法を変えてきたAndroid
長く愛用されてきた戻る/ホーム/アプリ履歴の3つのボタンを操作する「3ボタンナビゲーション」は、2018年にリリースされたAndroid 9 Pieで廃止になり、代わりにアプリ履歴ボタンを削除して一部操作をジェスチャー化した「2ボタンナビゲーション」が搭載されました。
「Android 10」では、2ボタンナビゲーションの挙動が変更され、3ボタンナビゲーションが復活。設定画面から好きな操作方法を選ぶことができます。
Android 10 Beta 2でアプリを切り替える時のジェスチャー操作がiOSライクになりました
— Yusuke Sakakura🍎携帯総合研究所 (@xeno_twit) 2019年4月3日
これまでのように連続的にページをめくることができなくなっています #Android #AndroidQ pic.twitter.com/UprKKQxD7E
使い方
- 1. 設定画面で「システム」に進む
- 2. 「操作」をタップ
- 3. 「システムナビゲーション」をタップ
- 4. いずれかの操作方法を選択する
- 4-1. ジェスチャーナビゲーション: 大半をジェスチャー化した操作方法
- 4-2. 2ボタンナビゲーション: 一部がジェスチャー化した操作方法
- 4-3. 3ボタンナビゲーション: ボタン式で操作する旧式の方法
ジェスチャーナビゲーション
「Android 10」では、アプリ履歴ボタンと戻るボタンを削除して、多くの操作をジェスチャーで行う新しい「ジェスチャーナビゲーション」が追加されました。
ボタンが画面下部に配置されるナビゲーションバーがなくなったことで画面をより大きく使うことが可能に。最初は操作に戸惑うかもしれませんが、慣れればボタン操作よりも快適です。
Android 10 Beta3で追加されたフルジェスチャーナビゲーション
— Yusuke Sakakura🍎携帯総合研究所 (@xeno_twit) 2019年5月7日
・戻るボタンを削除
・画面端から中央に向かってスワイプすると戻るボタンと同じ操作が可能
・進むことはできません🤭
→ https://t.co/OZiHyx9GpP #io19 #io19jp #AndroidQ pic.twitter.com/ygEm8qD8Wx
使い方
- 設定画面で「システム」に進む
- 「操作」をタップ
- 「システムナビゲーション」をタップ
- 「ジェスチャーナビゲーション」を選択
- 設定アイコンをタップすると感度を調整することも可能
- ホームに戻る: 画面下から上にスワイプ
- アプリを切り替える: 画面下から上にスワイプして止める
- 前の画面に戻る: 左端または右端から中央にスワイプ
- Googleアシスタント起動: 画面左右コーナーに表示されるハンドルを中央にスワイプ
現在地のアクセス許可に“アプリの使用中のみ”が追加
Androidアプリが要求できる現在地へのアクセス権限は許可する/しないの2択で、アプリが裏側で起動しているバックグラウンド状態で現在地を取得するかどうかは開発者次第でユーザーに選択権はありませんでした。
Android 10ではアプリの使用中のみ現在地へのアクセスを許可するオプションが追加されたことで、常に許可/アプリが使用中の場合のみ許可/許可しないの3つから選ぶことができます。
ようやくiOSと同レベルで現在地へのアクセス権限を許可・管理できるようになり、プライバシー保護の向上はもちろん、省電力化も期待できます。
外部ストレージのサンドボックス化
現在地のアクセス許可に加えて、Android 10では、プライバシーやセキュリティがより厳重に保護されます。
プライバシーの高いデータが保存される外部ストレージ(/sdcard)は、従来のAndroidの場合は1つでした。Android 10ではアプリごとに領域が作られて他のアプリが管理する領域に直接アクセスすることが原則不可能に。複数のアプリ共有領域は写真とビデオ、音楽、ダウンロードのみとなっています。
開発者は対応が必要。ユーザーが気にする必要はありませんが、非対応アプリで従来の操作や機能が正常に動作しないこともあります。
バックグラウンド→フォアグラウンドの制限
バックグラウンドで動作していたアプリがフォアグラウンドとして起動する挙動が制限されます。わかりやすいのはLINEの無料通話や音声通話を着信した時に表示される着信画面。
従来のAndroidではスマホの操作中でも全画面にアプリが表示されていましたが、Android 10では画面の上部にだけ通知が表示されるようになりました。なお、ホーム画面を表示している時はこれまでと変わりません。
TLS1.3のサポート
現行のTLS 1.2よりも40%高速なTLS 1.3(安全に通信するためのセキュリティの決まりごと)がサポートされ、パフォーマンスの向上とセキュリティが強化されています。
折りたたみデバイスの標準サポート
今春、Samsungの「Galaxy Fold」、HUAWEIの「Mate X」といった折りたたみ式のAndroidスマートフォンが登場しました。
折りたたみ式のAndroidスマートフォンはこれからも増えていくと見られていますが、その上でAndroidのサポートは必須。
Android 10では、折りたたみ式のデバイスやビッグスクリーンを搭載するデバイスをサポートするために多くの改良が実施されています。
例えば、1つの画面に複数のアプリを起動できるマルチウィンドウをサポートするデバイスでは、アプリのレジューム/ポーズといった状態管理が難しく現在は開発者の判断に委ねられていますが、Android 10ではOSレベルでサポートされます。
さらに、以下の動画のように画面を開閉することによって生じる表示方法の切り替えもシームレスに行えるとのこと。
スピードアップされたデータ共有
Androidで写真や動画などのデータを共有すると処理が遅く、多くのユーザーが不満の声を上げていましたが、Android 10ではより速く、よりカンタンにデータを共有することが可能になりました。
アプリから離れず設定変更できる「設定パネル」
Android 10では、Android 9 Pieで追加されたばかりのスライス機能(Wi-Fiや機内モードなどを設定項目を個別に切り出す機能)を使った新機能「設定パネル」が追加されます。
設定パネルはユーザーが必要とするインターネット接続やNFC、音量コントロールといったシステム設定をフローティングUIでアプリ上に表示できる機能。例えば、ブラウザアプリからWi-Fi(近くのネットワーク検出も可能)やモバイルデータ通信、機内モードといったスライス機能を表示してアプリから離脱せずに各種設定を変更できます。
なお、設定パネルは開発者がインテント機能を使って用意するもので、ステータスバーから起動できるクイック起動パネルとは役割が異なります。
サードパーティがカメラの被写界深度情報を取得可能に
マルチカメラを搭載したAndroidスマートフォンでは、複数のカメラで測定した被写体と背景の距離データ(被写界深度情報)を元に一眼レフのような背景ぼかしを追加することが可能です。
Android 10では、サードパーティのアプリが被写界深度情報を要求できるようになるとのこと。ただし、Googleはデバイスメーカーと交渉中としており、被写界深度情報を要求できるスマートフォンはある程度限定される可能性があります。
新しい音楽・ビデオコーデックをサポート
新しいビデオコーデックとして「AV1」がサポートされます。現在、ビデオコーデックはHEVCとVP9に2分されていますが、それらを圧倒的な圧縮効率で上回り、ロイヤリティフリーで使用できる点から今後の普及が確実視されているコーデックです。
GoogleはChromeブラウザやYouTubeなどで一部サポートを開始しており、Appleも対応を表明しています。
音楽コーデックにおいてもオープンでロイヤリティフリーの「Opus」がサポートされます。音声からミュージックまで幅広く最適化できるコーデックで、小さい容量でも高い音質を実現します。
目と電池に優しい「ダークテーマ」
ついに「ダークテーマ」が正式サポートされました。
ダークテーマを手動でオンにしたり、バッテリーセーバーによって自動でオンになると、画面の配色が白などのライト系からブラック、グレーなどのダーク系に変化。就寝前にスマホを操作しても眩しくないため、眠りやすく、有機ELディスプレイを搭載したスマートフォンでは電池持ちを節約することもできます。
使い方
- 1. ダークテーマをオン/オフする
- 1-1. ステータスバーを表示
- 1-2. クイック設定パネルから「ダークモード」をタップする
- 2. ダークテーマを自動でオンにする
- 2-1. 設定画面から「電池」に進む
- 2-2. 「バッテリーセーバー」を選択
- 2-3. 「スケジュールの設定」をタップ
- 2-4. 「ルーティンに基づく」または「残量に基づく」をタップして、バッテリーセーバーとダークテーマをオンにする残量を設定する
スマートリプライがアクションにも対応
Android 9 Pieにて、スマートリプライ*が通知に導入されたことで、機械学習によって提案された返信文を通知上でタップするだけでメッセージに返信できるようになりました。
スマートリプライ: 機械学習によって返信文を自動で生成して提案する機能
Android 10では、リプライだけではなくアクションも提案します。例えば、メッセージに住所が含まれていると「地図を開く」といったアクションの提案が表示されてタップすると、住所が検索された状態でGoogleマップを起動できます。
開発者は独自にリプライやアクションを指定したり、オフにすることも可能です。なお、Android 10でスマートリプライがすべてのアプリに対応しています。
Wi-FiのパスワードをQRコードで共有可能に
友だちの家や実家でWi-Fiを利用したい時、iOSではiPhoneを隣同士に置くだけでパスワードを共有できますが、Android 10ではQRコードを使ってパスワードを共有可能になりました。
使い方
- 1. 共有するQRコードを設定画面から「Wi-Fi」に進む
- 2. 接続しているWi-Fiの横に表示される歯車アイコンをタップ
- 3. 「共有」をタップ
- 4. 指紋認証などで本人確認後、QRコードが表示される
誤って削除したアプリを戻すことが可能に
誤ってホーム画面から削除したアプリを元に戻せるオプションが表示されるようになりました。
動画などに字幕を自動付与する「Live Caption」
スマートフォンやタブレットで再生しているビデオ、Podcast、オーディオメッセージなどあらゆるコンテンツに自動で字幕を付与する「Live Caption」が追加されます。
音を出せない環境でも動画が手軽に見られるといった利便性はもちろん、世界中の4億6,600万人の聴覚障害者にとっては必要不可欠な機能です。驚くべきことに「Live Caption」は、デバイス上で動作するためオフラインでも利用できます。
なお、「Live Caption」は今秋提供予定です。
集中したい時にアプリを制限する「フォーカスモード」
Android 9 Pieで追加された脱スマホ機能「Digital wellbeing」が強化されます。
新たに追加される「フォーカスモード」は、仕事中や勉強中など集中したい時についつい気になってしまうアプリの起動を制限することができます。
例えば、YouTubeやInstagram、Twitter、ゲームといったアプリケーションを事前に“気が散るアプリ”として登録しておいてフォーカスモードをオンにするとアプリを起動できなくなります。
フォーカスモードは今秋提供予定。ベータ版の「Digital wellbeing」をインストールすることでいますぐ利用できます。
子どものスマホ管理機能「ファミリーリンク」を標準搭載
アプリケーションとして提供されていた子どものスマートフォンやアプリの利用をカンタンにわかりやすく管理できる「ファミリーリンク」がAndroid 10に標準搭載されます。
なお、Android 10では、利用時間が制限されたアプリなどをもう少し触りたい時にボーナスタイムを与えることも可能になりました。