2018年6月5日、Appleが開発者向けのイベント「WWDC18」の基調講演で次期「iOS 12」を先行発表した。2018年秋に正式配信される。この記事では「iOS 12」の新機能と変更点を紹介・解説する。
目次
- すべてのデバイスのパフォーマンスが改善する「iOS 12」
- マルチプレイに対応した「AR」
- 検索と共有を大幅強化する「写真」
- ルーティーンとアプリを組み合わせて音声で呼び出す「Siriショートカット」
- 「Apple News」にブラウズタブが追加
- 「株価」のデザインが刷新。iPadにも対応
- 「ボイスメモ」がiCloudに対応
- iBooksが「Apple Books」に
- 「CarPlay」がサードパーティーのナビアプリに対応
- 「おやすみモード」にタイマーを追加
- 通知にグループ機能を追加
- 脱スマホ中毒の新機能「スクリーンタイム」
- メッセージ
- 舌の認識に対応した新しい「アニ文字」
- 自分の顔をアニ文字に「ミー文字」
- 最大32人でおしゃべりできる「Group FaceTime」
- 「iPhone X」のアプリ終了方法を変更
- 顔認証「Face ID」、複数の顔を登録可能に
- OSの自動アップデート
- パスワードの自動入力がカンタンに
- SMSで受信した認証コードの自動入力
- Face IDの再認証が可能に
- Apple Musicが歌詞検索に対応
- バッテリー分析機能が追加
- AirDropを使ったパスワード共有が可能に
- 3D Touch非対応機種でもカーソル移動がカンタンに
- 写真/動画をiCloudで共有できるリンク機能が追加
すべてのデバイスのパフォーマンスが改善する「iOS 12」
「iOS 12」ではパフォーマンスが大幅に改善される。iPhone 6シリーズにおいてアプリの起動は最大で40%、文字入力のキーボード表示は最大で50%、カメラの起動はなんと最大で70%も高速化される。さらに、高い負荷がかかっている状態でもアプリ起動とアクションシートの表示が2倍高速化された。
これだけの高速化を可能にしたのはプロセッサの制御改善だ。これまではアプリやシステムの要求に対して徐々にパフォーマンスを上げていたが「iOS 12」では要求に対して時間をかけず、パフォーマンスのピークに到達するまでの時間を短くすることで大幅な高速化を実現した。
なお、「iOS 12」の大幅な高速化によってiOS 11が使えるiPhone/iPad/iPod touchはそのままアップデートすることが可能だ。
マルチプレイに対応した「AR」
iOS 12のメイン機能は拡張現実「AR」になりそうだ。
まずはピクサーと協力して開発した新しい「USDZ」フォーマットをiOS 12がネイティブサポートする。これによりSafariやメッセージ、Apple Newsなどのアプリで対応コンテンツを開いて3Dオブジェクトをアプリ内で回転・拡大/縮小したり、購入したい商品をARで現実世界に映し出すことが可能になる。USDZフォーマットを使ったオブジェクトはAdobeなど様々なツールで制作が可能だ。
開発者向けに提供される「ARKit 2」では、フェイストラッキングの改善、リアルなレンダリング、3Dオブジェクトの検知、永続体験(セーブ機能)、共有体験(マルチユーザーサポート)を提供する。最も大きな機能は共有体験のマルチユーザーサポートで複数ユーザーで同じAR映像を共有することができる。例えばARに対応したゲームを2人で遊ぶことができる。
iOS 12ではARを使った新しいアプリも追加される。新しいアプリの名前は「メジャー」、iPhoneやiPadのカメラを計測したいモノに向けて画面をタップして長さを計測して面積を求めたり、カメラをかざすだけで物体を認識して長さや面積を求めることもできる。
WWDC18の基調講演では今年後半に登場するレゴアプリも紹介された。ARKit 2をサポートしたレゴアプリでは実際にレゴで作った建物にiPadをかざすと、3Dオブジェクトの検知機能によってレゴブロックを認識してARによる創造性を追加することができる。例えば、レゴでできた建物の周りにARによる別の建物やキャラクター、車などを追加したり、建物の中で働いているスタッフをiPadでのぞいたりできる。マルチユーザーにも対応しているため同じレゴの世界を友達と探検することでAR体験を共有することが可能だ。
検索と共有を大幅強化する「写真」
iOS 12では「写真」が大幅に刷新される。画面下に表示されているメニューから「メモリー」と「共有」が削除され、左から写真/For You/アルバム/検索の並びになる。For Youと検索はiOS 12で追加される新機能だ。
新機能「For You」にはメニューから削除された「メモリー」のほか、今日の1枚、共有しているアルバムのアクティビティ(アルバムに更新があった場合にお知らせ)、共有する写真の提案が表示される。共有する写真の提案では飲み会や旅行などで撮影した写真を友達と共有するようオススメされる。共有する友達は写真の顔を検出して提案される。
これまで小さく取り扱われていた「検索」はメニューバーからアクセスしやすくなる。検索画面のトップにはモーメント/人/場所/カテゴリ(アクティビティや犬など)ごとに写真をまとめて表示することで素早く目的の写真を検索することが可能。検索機能も大幅に強化され、「野球」「9月」、「沖縄」「ビデオ」など複数のワード(場所、スポーツ、撮影した写真・動画の種類)をつなげて検索することも可能になる。
ルーティーンとアプリを組み合わせて音声で呼び出す「Siriショートカット」
iOS 12では音声アシスタントの「Siri」にはショートカット機能が追加される。例えば、写真の「検索」タブや特定のウェブサイトを一声で表示することが可能。サードパーティ製のアプリを利用すれば「Hey Siri,カギを失くしちゃった」とSiriに話しかけてカギに付けられたデバイスを鳴らしてカギがどこにあるか探すといったことも可能になる。
今秋、App Storeで公開される新しいショートカットアプリを使えば日常のルーティーンとサードパーティーのアプリケーションを組み合わせて作ったプロセスをSiriを使って音声でカンタンに呼び出すことも可能になる。
例えば、会社から帰宅する時に位置情報を元に「今から帰るよ」のメッセージを家族に送信。ナビゲーションアプリを起動して自宅までのルートを検索して音楽をかけるといった一連の決まった行動を登録してSiriで呼び出すことができる。プロセスは自由に変更することが可能だ。
この機能にはAppleが2017年に買収した自動化アプリ「Workflow」の技術が盛り込まれているようでアプリのデザインはWorkflowに酷似したものになっている。
「Apple News」にブラウズタブが追加
Apple Newsではブラウズタブが新たに追加されて様々な分野から好みのニュースが読めるようになる。お気に入りのチャンネルやトピックに直接アクセスしたり、新しいニュース等をカンタンに発見できるようになる。
「株価」のデザインが刷新。iPadにも対応
株情報を確認できる「株価」アプリが「iOS 12」のアップデートと共にデザインが刷新されてApple Newsのスタッフが選定した株に関するニュースが配信されるようになる。また、iPadでも株価アプリが利用可能になり。大きなスクリーンで経済情報を見ながら株価をチェックできるようになる。
「ボイスメモ」がiCloudに対応
音声を記録できる「ボイスメモ」アプリのデザインが「iOS 12」で刷新される。さらに、ようやくiCloudに対応することでiPhoneで記録した音声データがiCloudを介してiPadやMacに同期される。これに伴いボイスメモアプリがiPadやMacでも利用可能になる。
iBooksが「Apple Books」に
これまでiBooksとして提供されていた電子書籍アプリが「iOS 12」でデザインの刷新と共に「Apple Books」に名称を変更する。
「CarPlay」がサードパーティーのナビアプリに対応
車載モニターとiPhoneを接続して利用できる「CarPlay」がついにサードパーティーのナビアプリに対応する。Googleマップなど使い慣れたお気に入りのナビアプリを使ってドライブできる。
おやすみモード
就寝時間などの通知を制限する「おやすみモード」も進化する。これまではおやすみモードをオンにしていると画面が点灯しないだけでロック画面に通知が表示されていたがiOS 12ではロック画面に通知が表示されなくなる。また、朝起きた時に表示される新しい画面が追加されるようだ。
さらに、一定時間だけおやすみモードを使用したい時、ついついおやすみモードを終了するのを忘れてしまう人が重宝する自動終了機能が追加される。コントロールセンターからおやすみモードのボタンを長タップすると1時間/夕方まで/指定された場所を離れるまで/イベントが終わるまでの4つのオプションが表示されるため好みのものを選択すると指定した時間が経過したり、指定した場所から離れるとおやすみモードが解除される。
通知にグループ機能を追加
通知機能がようやくグループ化に対応する。通知がロック画面にグルーピングされて表示されることでロック画面が通知で埋まることがなくなる。グループ化された通知はまとめて消すことも可能だ。さらに、通知を目立たない形式でお知らせしてもらうこともできる。有効にすると通知センターやAppアイコンのバッジは表示されるが、ロック画面やバナーには表示される通知音も鳴らなくなる。
脱スマホ中毒の新機能「スクリーンタイム」
スマートフォンなどデジタルデバイスを1日中触っていて中毒になっている人も多いはずだ。そこでiOS 12ではどのようにiPhone/iPadを使っているか、アプリを使っているのかを確認できる新機能「スクリーンタイム」が追加される。1週間のアプリ別の消費時間を確認したり、通知がどのアプリからどれぐらい送信されているか確認して今後どのようにiPhoneと付き合っていくかを判断することができる。
レポートを見てスマホ中毒になってることがわかったもカンタンにやめることはできない人が多いはず。そんな人には「AppLimit」が提供される。アプリごとまたはゲームやSNSなどカテゴリごとの利用時間を事前に設定して上限に近づくと「残り5分です」といった警告が表示され、利用時間を超えると「このアプリはもう使えません」といったメッセージが表示されてそれ以降はアプリが利用できなくなる。
これらの機能は自分よりも子どもに使いたいという親の方が多いかもしれない。そんな親の要望を叶える新機能「ForKids」も提供される。親のiPhoneやiPadから子どものiPhoneにアクセスして使い方を監視したり、特定の時間帯での利用を制限することが可能。逆に常に利用を許可するアプリを設定することもできる。
メッセージ
メッセージアプリではカメラを起動してスターのアイコンをタップすると、フィルターやステッカー、アニ文字を合成した写真や動画を撮影して友達にシェアできるようになる。
舌の認識に対応した新しい「アニ文字」
iOS 11の新機能として追加された「アニ文字」では新しいおばけ、コアラ、トラ、恐竜(T-REX)が追加され、新たに舌を検知・認識するようになる。SNOWやSnapchatなどで利用できるマスク機能と同じような機能で自分が舌を出すとアニ文字にも反映される。
自分の顔をアニ文字に「ミー文字」
iOS 11で追加された「アニ文字」は自分がユニコーンやサルなどの絵文字になりきれる機能だったが、iOS 12では自分が絵文字になれる新しい機能「ミー文字」が追加される。自分そっくりのアニ文字を作成してビデオ通話に適用することが可能だ。
WWDC18で行われたデモではベースのアニ文字から肌の色や髪型、髪の色、目の色を変えたり、メガネを付けたり、グラスの色を変えてアニ文字を作ることができる。残念なのはカメラで自分の表情を認識してミー文字を自動で作る機能ではないということ。あくまでも用意された素材から自分に似た顔のパーツや色を選択するため革新性はあまりないが、自分に似たアニ文字を作ってFaceTimeなどのビデオ通話に使うなど新しい体験を実現し、それは間違いなく楽しいものになりそうだ。可能であればLINEなどサードパーティーアプリでも使いたいところだがそこまでの発表はなかった。
最大32人でおしゃべりできる「Group FaceTime」
ビデオ通話機能「FaceTime」に最大32人が参加できる「グループFaceTime」が追加される。参加人数によってインターフェースが変化し、4人以上ではタイル状に参加者が表示されて言葉を発すると大きめのタイルで表示される。なお、参加者が5人以上いる場合は画面下に並び、言葉を発すると画面上に昇格する仕組みだ。リーダーなど発言が気になる人がいる場合、タイルをダブルタップすれば固定表示することもできる。
グループFaceTimeにはアニ文字やミー文字、フィルターを適用することもできる。顔出しが恥ずかしい場合でも気軽にグループFaceTimeが使える。
「iPhone X」のアプリ終了方法を変更
ジェスチャー操作が導入された「iPhone X」では、画面下部に表示される細いバー「ホームインジケーター」を上にスワイプしたあと、Appスイッチャーを起動後、アプリのサムネイルを長タップしてロックを解除してから上にスワイプしてようやくアプリを終了できるが、非常に複雑な操作で従来の操作に慣れ親しんだユーザーからは不評だった。
「iOS 12」では終了方法がシンプルになり、Appスイッチャーを起動したあと、終了したいアプリのサムネイルを上にスワイプするだけで終了できるように改善される。
Image by iGeneration
顔認証「Face ID」、複数の顔を登録可能に
指紋認証「Touch ID」では、複数の指を登録できたが、顔認証「Face ID」ではたったひとつの顔しか登録できない。
iPhoneを子どもに渡したり、親子で利用する場合は不便だが、「iOS 12」では、2つ目の顔登録が可能になる。ただし、使えば使うほど精度が向上する学習機能のサポート的な役割の説明がされていてマルチユーザーに対応するわけではなさそうだ。
一方、Appleは今年秋に顔認証「Face ID」に対応した新型iPadを発売する可能性が非常に高い。iPadは、iPhoneと違って家族で利用することも多いため、正式リリース時にはマルチユーザーをサポートする可能性もあるだろう。
OSの自動アップデート
最新バージョンのOSアップデート率は、Androidの6%に対してiOSは81%と驚異的な数値を誇っているが、「iOS 12」はOSの自動アップデートに対応することで、さらに数値を上げることになりそうだ。
パスワードの自動入力がカンタンに
「1Password」などサードパーティ製のアプリでパスワードを自動入力する場合、一度、サードパーティアプリに画面遷移する必要があったが、「iOS 12」では、画面を移動せずスムーズにパスワードを自動入力できるようになる。
What a wonderful present for us at WWDC this year! Thank you to all our friends at Apple for this great new API. #1PasswordAutofill pic.twitter.com/jpvRVogslS
— 1Password (@1Password) 2018年6月5日
SMSで受信した認証コードの自動入力
2段階認証を設定している場合、認証コードをSMSで受信することがある。例えば、認証コードをSMSでしか受け取れないインスタグラムでは、認証コードを確認するためにログイン画面から一度、メッセージアプリに画面遷移する必要があるが、「iOS 12」では自動入力機能をサポートすることで受け取った認証コードが自動で入力される
Face IDの再認証が可能に
顔認証「Face ID」は、環境によって認証に失敗することも多い。失敗した場合はキャンセルしたり、一度スリープにしたあとで、もう一度解除するなど手間がかかるが、「iOS 12」では、認証に失敗したあとに表示される画面を上にスワイプだけで再認証が可能になる。
Apple Musicが歌詞検索に対応
現在、Apple Musicはアーティスト名や曲名での検索に対応しているが、「iOS 12」では新たに歌詞検索に対応する。誰が歌っていたか、どんな曲名だったかは思い出せないけど、歌い出しやサビだけを覚えているということやアーティスト名や曲名が一瞬歯科表示されないCMで気になった曲もスムーズに検索できるようになる。
バッテリー分析機能が追加
「iOS 12」では、バッテリー残量の推移や使用時間をグラフで確認できる新機能が追加される。iPhoneの電池持ちに不満を感じる人は少なくないはずだが、うまく利用すればバッテリーの節約に役立てることができそうだ。
AirDropを使ったパスワード共有が可能に
「iOS 12」と「macOS Mojave 10.14」にアップデートしたiPhone・iPadとMac間でAirDropを使ったパスワード共有が可能になる。使い方が少し複雑で手間がかかるため、あまり頻繁に利用するような機能ではないが、新しいiPhoneやMacのセットアップ時、家族や友だちにパスワードを共有したいときなど限られたシーンでは役に立ちそうだ。
3D Touch非対応機種でもカーソル移動がカンタンに
画面を深くプレスすることでショートカット機能などが利用できる「3D Touch」だが、最も便利なのが文字入力時のカーソル移動だ。指をスライドするだけのシンプルな操作で目的の位置にカーソルを移動できるため愛用者も少なくない。
今年秋に発売される新型iPhoneのうち、6.1インチの液晶ディスプレイを搭載したモデルは低価格のため、3D Touchに非対応とされているが、「iOS 12」ではスペースキーまたは空白を数秒間、長押しすることでトラックパッドモードに移行してあとは指をスライドするだけでカーソルを移動できるようになるようだ。
写真/動画をiCloudで共有できるリンク機能が追加
iPhoneやiPadで撮影した写真・動画を共有する方法として新たにiCloudの共有リンクが加わる。写真アプリから写真と動画を選択してリンクをコピーボタンをタップするだけで、iCloudリンク(https://www.icloud.com/photos/XXXXXXXXX)が生成され、あとは共有したい相手にリンクを送るだけで写真と動画をシェアできる。
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