WWDC2020のスペシャルイベント基調講演で発表されたiPhone向けの最新ソフトウェア・アップデート「iOS 14」が約3ヶ月間のベータ提供を終えて日本時間9月17日に配信されました。
「iOS 14」では、ウィジェットのホーム画面対応やすべてのアプリを確認できるAppライブラリ、アプリやホーム画面を非表示機能の追加などホーム画面が大幅な刷新され、デザインのコンパクト化が進み、AirPodsもパワーアップしました。
この記事では「iOS 14」の新機能と変更点をまとめています。
目次
- iOS 14の対応機種
- ウィジェット
- Appライブラリ
- ピクチャ・イン・ピクチャ
- コンパクトデザイン
- 強化されたSiri
- 翻訳アプリ
- メッセージ
- マップ
- Car Key
- App Clips
- Safari
- デフォルトアプリの解禁
- カメラ
- 背面タップ
- プライバシーの強化
- AirPods
- その他
- 変更履歴
- ベータ版をインストールする
iOS 14の対応機種
iOS 14の対応機種は以下のとおり。A9チップを搭載したiPhoneおよびiPod touchであればアップデート可能。第1世代のiPhone SEも対応しています。
- iPhone 11
- iPhone 11 Pro
- iPhone 11 Pro Max
- iPhone XS
- iPhone XS Max
- iPhone XR
- iPhone X
- iPhone 8
- iPhone 8 Plus
- iPhone 7
- iPhone 7 Plus
- iPhone 6s
- iPhone 6s Plus
- iPhone SE (第1世代)
- iPhone SE (第2世代)
- iPod touch (第7世代)
ウィジェット
「iOS 14」最大のアップデートはウィジェットかもしれません。
これまでホーム画面の隅で機能していたウィジェットがAndroidのようにホーム画面の好きな場所に置けるようになります。アプリを起動しなくてもカレンダーの予定や天気、リマインダーに登録した必要なもの、株価をひと目で確認できます。
また、Appleらしい機能として「スマートスタック」が用意されます。起床後はニュース、出かける前はカレンダー、夕方にはフィットネスによる消費カロリーを表示といったように時間帯に応じて自動で表示するコンテンツが変わります。
ウィジェットは10個まで重ねることが可能。表示されるウィジェットは自動で変更されるほか、ウィジェットを上下にスワイプすることで手動で変更できます。なお、ウィジェットは複数のサイズが用意され、ホーム画面に追加するときは自動的に整列されます。
Appライブラリ
ホーム画面のラストページにダウンロードしたすべてのアプリを表示する「Appライブラリ」が追加されます。
目的のアプリをシンプルな操作で探しやすいようにiOSが自動でカテゴライズしてフォルダに収納されます。フォルダ内のアプリでも、よく利用するアプリはワンタップで起動可能。アルファベット順および50音順に並べたリストから探したり、検索ワードで探すことも可能です。
また、Appライブラリの提供と共に、ホーム画面の特定ページやアプリを非表示にすることも可能になりました。インストールしたけどホーム画面には表示したくないアプリを非表示にしたり、特定のページごと非表示にすることでホーム画面のページ数を減らして整頓できます。
ピクチャ・イン・ピクチャ
iOS 14では、ビデオ通話のFaceTimeや動画を見ながら他のアプリを操作できます。
小さく表示したウィンドウは画面のどこにでも移動して表示可能。邪魔な場合は映像を非表示にして音声だけ流すことも可能です。
コンパクトデザイン
これまでiOSの着信画面はフルサイズで表示されていました。作業が強制的に中断されるのでストレスを感じていましたが、iOS 14ではiPhoneやFaceTime、サードパーティアプリの着信画面がコンパクト化されることで着信画面が表示された状態でも作業を継続できます。
コンパクト化された着信画面はディスプレイに上部にバナー形式で発信元と受話・拒否ボタンが表示されます。着信画面と同じようにSiriもコンパクトなデザインになります。
強化されたSiri
音声アシスタントのSiriはデザインがコンパクト化されても機能は強化されています。音声入力の精度が向上するほか、日本語でも新しく自然な音声でSiriが楽しめるようになりました。
- ウェブ上にあるさまざまな情報をもとに、さらに幅広い質問に回答
- Siriの知識は3年前と比べて20倍に
- Siriを使ってボイスメッセージをカンタンに送信
- SiriKitを利用することでサードパーティ製のアプリでも利用可
- Appleマップのナビ機能を利用している場合は連絡先に登録している相手に到着予定時刻を共有することも
- Siriの翻訳機能の多言語対応。日本語は英語、北京語、韓国語間の翻訳に対応
- Siriに自転車の経路を聞く
翻訳アプリ
日本語を含む11言語のテキスト入力と音声入力に対応する新しい翻訳アプリが登場します。
iPhoneを横に向けると会話モードに移行し、言語を自動で検出して会話内容をリアルタイムに翻訳。オフライン機能も備えているため、ネット環境がない場所や重要な会話でもiPhoneで翻訳できます。
翻訳結果を拡大表示するアテンションモードも搭載。お気に入りの翻訳フレーズは保存して必要なときに呼び出すことも可能です。
メッセージ
最新の会話が上から順に表示されるメッセージには、重要なチャットが埋もれないようトップに最大9件を固定表示できる「ピン」が追加されます。
グループ会話には写真や絵文字をカバー写真として設定できるほか、何に対してメッセージ送ったのかがわかりやすい引用返信や誰に対してメッセージを送ったのかを明確にして、自分に対する返信だけ通知を有効にするメンションにも対応。
年齢やマスク、髪型、帽子など20種類以上のスタイルが追加される新しいミー文字も登場します。
マップ
マップのルート案内機能に新たに自転車と電気自動車の経路案内が追加されます。
新しい自転車の経路案内は自転車レーンや自転車専用道路、自転車で通行しやすい道があるかどうかを考慮して案内してくれます。道の勾配や混雑状況、急斜面、階段を避けて経路を設定することも可能。経路はiPhoneだけでなくApple Watchでも確認できます。ただ、残念ながら日本では利用できません。現時点ではサンフランシスコ・ベイエリア、ロサンゼルス、ニューヨーク市、上海、北京などで利用できます。
電気自動車の経路案内では、バッテリー残量をモニタリングし、標高などを考慮したうえで案内ルートに充電スポットを自動的に追加します。充電スポットは充電器のタイプに応じて案内するため安心。まずはBMWとFordから対応します。また、スピード違反取り締まりカメラや赤信号監視カメラに近づくとマップが知らせる機能が追加されます。残念ながら日本国内では利用できません。
ほかにもAppleマップのエディターが信頼できるブランドやパートナーと連携して世界各地にあるおすすめのレストランやお店、世界中などのスポットを提案する「ガイド」が追加されます。ガイドが提案する情報は自動でアップデートされるため最新のガイド情報を元に旅行の計画を立てられます。
Car Key
iPhoneとApple Watchが車の鍵になる新機能「Car Key」が追加されます(発表後、iOS 13で追加されました。)
iPhoneを車のドアノブに近づけるだけでロックを解除できます。そのまま車のリーダーかワイヤレス充電器に乗せるだけでエンジンもかけられるため、自宅に車の鍵を忘れても安心。
鍵はiMessageを使って友だちや家族とも共有できるため、車の鍵を直接会って渡さなくても運転できます。紛失した場合はiCloud経由で鍵を無効にすることも。iPhoneのバッテリーが切れたあとも最大5時間動作します。
まずは今年中にNFCを使ったCar Keyの提供がスタート。はじめに来月発売のBMW5シリーズが対応します。来年にはU1チップを搭載したiPhoneでポケットやカバンから取り出さずにロックを解除できるようになります。
App Clip
あの機能を利用したいけど、アプリはダウンロードしたくないということが多々ありますが、iOS 14では必要なときにアプリの特定機能だけを使える新機能「App Clip」が追加されます。
App Storeからアプリをダウンロードせずに自転車の駐車料金の支払い、ドリンクや料理の注文などアプリの一部機能をわずか数秒で利用できます。
App Clipは、AppleオリジナルのApp ClipコードやQRコード、NFCタグをスキャンしたり、メッセージやSafari、マップ経由で利用できます。
Safari
Safariは“世界で最も高速なモバイルブラウザ”になります。超高速なJavaScriptエンジンによってJavaScriptの処理速度がAndroid版Chromeの最大2倍になっているとのこと。
ほかにも7言語対応の翻訳機能も追加されます。英語、簡体字中国語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、ポルトガル語に対応。残念ながら日本語には対応していません。
プライバシーをどう取り扱っているのかを確認できるプライバシーレポートや保存したパスワードが安全か定期的にチェックする新機能も追加されます。
デフォルトアプリの解禁
「iOS 14」でようやくデフォルトアプリの変更が可能になりました。
これまではSafariやメールといったOS標準アプリの使用が強制されていましたが、これからはGoogle ChromeやGmailなどのサードパーティ製のアプリをデフォルトアプリとして利用できるようになります。
カメラ
iOS 14ではカメラも大きく進化しています。
- ナイトモードの撮影強化
- 手ブレしないようにガイダンスを表示
- 撮影の途中でキャンセルも
- 露出補正コントロール
- 露出補正を固定しながらピントを個別で固定可能に
- フロントカメラで左右反転
- 写真撮影が最大90%高速化
- 毎秒最大4フレームで撮影可能に
- 最初の撮影までの時間を最大25%短縮
- ポートレートモードは最大15%短縮
- ボリュームキーを専用ボタンに
- 音量を上げるボタンで連写
- 音量を下げるボタンで動画撮影(QuickTake)
- シャッターボタンの長押しで動画を撮影(QuickTake)
- iPhone XS/XS Max/XRでも利用可能に
背面タップ
iOS 14でiPhoneの背面タップ→決済種類の選択→決済アプリ起動💡 pic.twitter.com/d7TAkQchbS
— Yusuke Sakakura🍎携帯総合研究所 (@xeno_twit) September 17, 2020
アクセシビリティ機能の1つとして「背面タップ」が追加されました。
同機能をオンにすると、通常は電源ボタンとボリュームアップボタンを同時押しで撮影できるスクリーンショットの撮影がiPhoneの背面をタップするだけで可能になるなど特定の機能をカンタンに呼び出せる便利な機能です。
プライバシーの強化
Appleが重要視しているプライバシー保護がiOS 14でさらに強化されます。
位置情報においてはアプリケーションがアクセスを要求すると、ユーザーは正確な位置情報を提供するか、おおよその位置情報を提供するかを選択できるようになります。詳細な位置情報まで必要のないアプリは多数あるため、選択肢が用意されることでユーザーは安心してアプリを利用できます。
一方でポケモンGOやドラクエウォークなどの詳細な位置情報を必要とするARゲームにおいては不都合が起きるかもしれません。
プライバシーを侵害する恐れがあるカメラやマイク。現在はアプリが利用しているタイミングが明確ではありません。iOS 14では、カメラを利用していることを表すグリーンのインジケーターとマイクを利用していることを表すオレンジのインジケータがステータスバーに表示されます。コントロールセンターかは利用履歴も確認できるようになりました。
iOS 14では、アプリが収集したデータを別のアプリと共有する(トラッキング)場合は事前にユーザーの許可が必要になります。2年以内にApp Storeではデベロッパーの自己申告によってプライバシーの慣行の概要が確認できるとのこと。
昨年導入された「Appleでサインイン」も強化されます。
アプリを利用する際にアカウントの作成を求められることがよくありますが、どこまでセキュリティが確保されているのか不明。アプリごとにアカウントが必要になることで覚えられないパスワードを使いまわす人も多くなるはず。そこで既存のアカウントを「Appleでサインイン」にアップグレードする機能が追加されます。
AirPods
「iOS 14」でAirPodsも大きく進化します。
新機能「自動切り替え」では、利用しているデバイスに合わせて接続先が自動で切り替わります。例えばiPhoneで通話を終えてMacでテレビ会議に参加するとiPhoneからMacに自動で接続先が切り替わり、Macでテレビ会議を終えてiPadで映画を見ると自動でMacからiPadに接続先が変わります。なお、同じiCloudアカウントで朧銀する必要があります。
最大のアップデートは映画館のような体験が楽しめる「空間オーディオ」と「ダイナミックヘッドトラッキング」です。
空間オーディオは空間の自由な場所に音を配置することで臨場感あふれるサラウンドサウンド体験をAirPodsで楽しめるというもの。音に空間が加わることでこれまでのAirPodsとは段違いの音が楽しめます。
ダイナミックヘッドトラッキングは頭とデバイスの動きを追跡して音場を固定するというもの。例えば、頭を左右に動かすと正面から出てくる音が左または右から聞こえるようになります。言葉で説明するよりも上のアニメーションを見る方が理解が早いでしょう。
なお、これらの機能は「AirPods Pro」のみで利用できます。
ほかにもAirPodsのバッテリーが少なくなると、iPhoneにバッテリー残量を通知する機能や外部取り込みモードに対応した弱い音を増幅できるアクセシビリティ機能(第1世代AirPodsは非対応)や、Apple TVに2組までのAirPodsを接続できるようになります。
その他
- ミュージック
- 曲やプレイリストが終わると似ている曲を見つけて音楽が途切れることなく再生可能に
- 写真
- 写真をもっと拡大できるように
- 画像の説明(キャプション)を追加して検索可能に
- ヘルスアプリ
- 睡眠モードが追加
- ヘッドフォンによる聴覚への影響を診断する新機能
- ボイスメモ
- ワンタップで周囲のノイズや室内の音の反響を抑えられるように
- ホームアプリの強化
- 探すアプリがサードパーティ製のデバイスやアクセサリに対応
変更履歴
- 壁紙
- ダークモード用の壁紙を追加(自動切替)
- Appライブラリ
- カテゴリ名を変更
- AirPods Pro
- Spatial Audioの設定を追加
- マップ
- 最初の起動画面を変更
- ウィジェット
- Apple Newsがより大きなサイズに対応。ホーム画面の追加不可
- 位置情報を利用する場合はダイアログを表示
- 時計アプリ
- アラームの設定方法が変更。テンキーで入力可能に
- 写真
- 非表示した写真のアルバムを隠すオプションが追加
- サードパーティアプリには適用不可
- コントロールセンター
- HomeKitのボタンが小サイズに変更。より多くの機器操作が可能に
- 設定
- バッテリー内にある「最後の充電レベル」の表示改善
- ウィジェット
- Apple TVウィジェットが追加
- 検索の改善
- 検索からアプリの直起動可能に
- デザインの改善
- 冗長な表示を省略可
- 不具合解消
- 3D Touchが再び利用可能に
- ミュージック
- アイコンが赤背景、白抜き♫に変更
- タブが変更
- 左から「今すぐ聴く」「見つける」「ラジオ」「ライブラリ」「検索」の並びに変更
- タブから「For You」が削除
- ライブラリ内の文字色が赤色から黒色に変更
- 検索タブの大幅リニューアル
- Snapchatのストーリーズに曲の共有可能に
- ウィジェット
- iOS 14にアップデート直後、ウィジェットのリニューアルをお知らせ
- 時計ウィジェットが追加
- スクリーンタイムのウィジェットでアプリの利用状況が確認可能に
- Appライブラリ
- iOS 14にアップデート直後、Appライブラリの概要をお知らせ
- ホーム画面
- ホーム画面を長押しするとページを非表示にできる新機能をお知らせ
- 画面表示の拡大機能
- 5.8インチのiPhoneでも利用可能に
- スクリーンショット
- 編集画面の小さな変更
- ミー文字
- マスク付きの新しいミー文字が追加
- 3D Touch
- 一時的に利用不可に
- アイコン
- カレンダーアプリのアイコンが変更
- 「水曜日」が「水」の短縮表記に変更
- 時計アプリのアイコンが変更
- 時間がわかりやすいように針が太くなった
- ウィジェット
- 「ファイル」アプリのウィジェットが追加可能に
- Appライブラリ
- Appライブラリに直接ダウンロードされたアプリをホーム画面に追加することなくAppライブラリで削除可能に
- ミュージック
- アニメーションのカバーアートを設定画面で表示/非表示可能に
- 再生/停止ボタンなどタップで振動フィードバックを追加
- リマインダー
- アイコンに絵文字が使えるように
- ショートカット
- .shortcutsファイルのサポート終了
- コントロールセンター
- HomePodなどのアクセサリが大きく強調して表示されるように
- カメラやマイクを使っているアプリを表示
- 設定画面
- ファミリー共有のアイコンが刷新
- 日本語対応
- 各アプリの日本語対応が進んだ
ベータ版をインストールする
今日から開発者向けにベータ版「iOS 14」の提供がスタートしています。開発者でなくてもApple Developer Programに加入することでベータ版をインストールできます。
ベータ版のインストール方法はカンタンではありませんが、以下の記事では画像付きで優しく解説しています。