公正取引委員会が10日、携帯電話市場の実態調査の結果を公表した。
今回の調査ではスマートフォンの返却や再購入を条件にした端末購入サポートプログラムなどに独占禁止法上、問題の恐れがあるとの考えが示された。公正取引委員会は厳正に対処していくという。
端末購入サポートプログラムが独禁法に抵触する恐れ
法改正によってスマートフォンの値引き上限が2万円に制限されるなど、大幅な値引きができなくなったことから携帯電話事業者はスマホの返却や買い替えを条件に2万円を超える利益を提供する「端末購入サポートプログラム」を開始した。
docomo | au | SoftBank | ||
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プログラム | スマホおかえしプログラム | かえトクプログラム | トクするサポート+ | |
分割回数 | 36回 | 23回+残価分 | 48回 | |
支払い不要額 | 最大で分割12回分 | 残価分 | 最大で分割24回分 | |
特典条件 | 買い替え | 不要 | 必要 | 必要 |
端末の返却 | 必要 | 必要 | 必要 | |
返却時期 | 2〜25ヶ月目まで | 13〜25ヶ月目まで | 25ヶ月目〜48ヶ月目 |
公正取引委員会に調査によると、端末購入サポートプログラムが回線を契約していない利用者(端末のみ購入を検討しているユーザー)にとって利用しにくい状況になっているという。
端末のみ購入でも端末購入サポートプログラムが利用できることがわかりづらい、KDDIとソフトバンクではオンラインで端末購入サポートプログラムを利用して端末のみを購入することができないなど、事実上、回線契約者のみを対象とする2万円以上の端末値引きになっていると指摘。
事実上のセット販売を条件にした大幅な値引きであることから、他の通信事業者の事業活動を困難にさせる場合は独占禁止法上問題となるおそれがあるとのこと。
公正取引委員会は、端末購入サポートプログラムを提供するのであれば、端末のみ購入する場合であっても端末購入サポートプログラムが利用できるようわかりやすく積極的に周知することやオンラインでの購入も可能にするなど、セット購入でなくても利用できることを明確にして通信料金と端末代金の分離を徹底することが競争政策上望ましいとしている。
auとソフトバンクのプログラムにはさらなる問題も
端末の返却だけでなく端末の再購入が必要になるKDDIとソフトバンクの端末購入サポートプログラムについてはさらなる問題が指摘されている。
公正取引委員会によると、約7割が通信事業者から端末を購入しているなかで、端末の再購入を課すことは消費者の通信契約の変更を妨げるおそれがあるとし、他の通信事業者の事業活動を困難にさせる場合は独占禁止法上問題となるおそれがあるとの考えを示した。残債免除の条件として端末の再購入を削除することが競争政策上望ましいとしている。
SIMフリー端末の販売を遅らせる行為も問題
ここ数年キャリアからSIMロック版を販売し、自社からもSIMフリーの端末を販売する端末メーカーが増加している。
そういったなかで、携帯電話事業者が自社で販売する端末と同じ機種のSIMフリー端末の発売時期を遅らせるよう指示してMVNO利用者が携帯電話事業者の販売時期と同じタイミングでSIMフリー端末を購入できなくなった場合は独占禁止法上問題になる恐れがあるとのこと。
独占禁止法に違反する行為は厳正に対処
このほかにも中古端末や携帯電話の修理、楽天モバイルを排除するために、端末メーカーに対して他社で利用できない端末の製造を指示すること、代理店と十分に交渉することなく契約内容を一方的に変更したり、代理店が販売する端末の価格を拘束したり、合理的な理由なく代理店の独自商材の取り扱いを制限する行為が独占禁止法上問題になるおそれがあるとしている。
公正取引委員会は携帯電話市場における動向について注視するとともに、独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処し、総務省や消費者庁と連携して引き続き、料金の低廉化やサービスの向上を図るために携帯電話市場における競争環境の整備に取り組んでいくとのこと。
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