政府のデジタル市場競争本部がAppleのiOSとGoogleのAndroidを主な対象にした規制方針を示す最終報告書を公開しました。
報告書ではサイドローディングの義務付け、自社の決済・課金システムの利用を義務付けるポリシー禁止に加えて、エコシステムを利用したさまざまな自社の優遇措置を規制する方針が示されています。
多数の自社優遇を規制。エコシステムの力が減退
モバイル・エコシステムに関する競争評価 最終報告案は、OS、アプリストア、ブラウザ、検索サービスがAppleやGoogleといった少数のプラットフォーム事業者による寡占状態であるとし、セキュリティやプライバシーを確保しつつ、公平・公正な競争環境の実現を目指す案をまとめたもの。
主に規制される自社優遇は以下のとおりです。
プリインストールとデフォルト設定
iOSとAndroidにおいて購入直後からインストールされているーーいわゆるプリインストールアプリが他社のアプリを競争上不利な状況にし、デフォルト設定においては、現状維持バイアスが働きやすく、デフォルトが変更されにくい傾向があることから、AppleやGoogleのサービスが競争上優位で、ユーザーの自律的な意思決定や選択の機会が損なわれると評価されています。
これを受けてOSにおいてはデフォルト設定されるブラウザ、検索エンジン、ボイスアシスタントについて選択画面を表示すること、アップデート時に追加されるアプリをインストールするか選択できる画面を表示すること、プリインストールアプリにおいて例外を除いて容易かつ技術的にアンインストールできるよう義務付ける方針が示されました。
なお、デジタル市場競争本部は他社のアプリストアからiOSアプリをダウンロードできるようサイドローディングを義務付ける方針ですが、選択画面の義務付けにアプリストアは含まれていません。
広告トラッキング
iOSでは各端末に割り振られたID(IDFA)を使用したトラッキングの許可画面が導入されていますが、iOS標準アプリとサードパーティアプリに表示される画面において表現の不公平があることから非差別的なものにするよう義務付けられます。
WebKit
AppleはiOSにおけるすべてのブラウザアプリにおいて、WebKitエンジンの利用を義務付けています。
最終報告ではWebKitが他と比べて利用できない機能が多い、性能が劣っている、すべてのブラウザにおいて不具合や機能不備がSafariと同等になることからセキュリティリスクにさらされていると指摘。
さらに、公平・公正な競争機会が阻害されているとして、すべてのアプリに対して自らのブラウザエンジンの利用を義務付けることを禁止する方針が示されています。
NFCとUWB
Appleは、iPhoneやAirPods、AirTagなどに独自のU1チップを搭載し、アイテムの現在地を探すときなどに利用しています。
現在は開発者にもUWBへのアクセスが許可されていますが、数年間はAppleだけがアクセス可能で、先行者として競争上の優位性をもって他社を不利な立場においていました。
こういった自社優遇を規制するために、セキュリティが毀損される場合などの例外を除いて、OS等の機能については自社に認められているものと同等の機能やアクセスをサードパーティにも認めることを義務付ける方針が示されています。
また、NFCにおいては技術仕様がオープンではないことから、NFCチップにアクセスする場合は必ずApple Payを利用しなければいけない仕様になっているとのこと。
開発者からはタッチ決済の独自アプリを開発できず、Apple Payを取り扱っていない店舗で、NFCチップを利用した決済サービスを提供できない。Appleが進出していない事業領域に参入できる機会が失われるなど、不満の声が聞かれると報告しています。
UWBと同様にNFCについても同様の義務付けを行う方針です。