昨年と違って今年のスマートフォン向けチップセットのデキはかなり良いようです。QualcommのSnapdragon 8 Gen 2は、特別なカスタムが施されたSamsungのGalaxy S23シリーズでも、ソニーのXperia 1 Vでも性能・発熱・サーマルスロットリングにおいて高く評価されています。
独自チップGoogle Tensorのデキ次第で今年はPixelスマートフォンを選ばない人も出てくるかもしれません。そういったなかでPixel 8シリーズに搭載されるGoogle Tensor G3に関する詳細な情報が報じられました。
Arm v9アーキテクチャを採用
2年前に登場したGoogleの独自チップGoogle Tensorは、現在は第2世代のTensor G2がリリースされていて、Pixel 7シリーズや今月発売されるPixel Tablet、Pixel Foldにも搭載されます。
Googleの独自チップは、消しゴムマジックやボケ補正、リアルタイムの書き起こし機能を備えたボイスレコーダー機能、業界トップクラスのカメラ処理など、独自チップと優れたソフトウェアがもたらすAI分野が高く評価されている一方で、性能はいまひとつ。Snapdragon 8 Gen2とTensor G2のベンチマークスコアを比較したところ、GPUはダブルスコアで敗北し、発熱時の性能においては8 Gen2のロースコアがTensor G2のベストスコアを上回るなど、スコア上では大きく引き離されています。
パフォーマンスアップが求められるなかでGoogle Tensor G3は新しいArm v9アーキテクチャに移行することを選択し、初のビッグアップデートを遂げるようです。
CPUはCortex-A510を4つ、Cortex-A715を4つ、Cortex-X3を1つ搭載する9コアで構成されるなど大幅な性能アップを遂げ、Tensor G3は2022年発売のフラグシップモデル向けチップに匹敵するとGoogle内部から情報を入手したAndroid Authorityは予想しています。
また、GPUはArm Mali-G715にアップグレードされるとのこと。コア数は10コアであることがわかったと報告されています。Tensor G2は7コア構成でした。
ゲーム等で効果的なグラフィックの性能アップに加えてレイトレーシングにも対応。レイトレーシングは、従来はハイエンドなゲーミングPCだけで利用できた光の屈折や反射などをよりリアルに描写する機能です。
最大の特徴であるAIにおいては、コードネームRioのTPUが搭載され、クロック周波数が1.0GHzから1.1GHzに微増。TPUはCPUやGPUよりも成長率の高い要素であることから大幅なアップグレードになることが予想されます。
ストレージにおいてはGalaxy S23 Ultraと同じようにUFS 4.0ストレージをサポート。Pixel 7シリーズのUFS 3.1に比べて、読み書き速度が最大2倍にスピードアップし、ゲームやアプリのダウンロード・インストールの高速化が見込めるほか、電力効率の向上と部品の小型化も期待できます。
初代Tensor/Pixel 6シリーズで突然圏外になるなど、大きな問題をもたらしたモデムは、ソフトウェアアップデートとTensor G2/Pixel 7シリーズでExynos Modem 5123から5300に変更されたことで致命的な問題が解消されており、Tensor G3で大きな変更はないようです。
Tensor G3 | Tensor G2 | |
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CPU |
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GPU |
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TPU |
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UFS |
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モデム | ?? | Exynos Modem 5300 |
Google Tensor G3は来年発売のスマートフォンやタブレットーーおそらくPixel Fold 2やPixel Tablet 2、Pixel 8aにも搭載が見込まれるチップセットであることから大幅な性能アップが期待されており、Googleはそれに応えるようです。
ただし、ここ数年で発売されたフラグシップスマートフォンに対して基本的なパフォーマンスに不満を持っている人はそれほど多くありません。一方で、ゲームを長時間プレイしたり、カメラを長く構えた時など、高い負荷がそれなりの時間で継続した時の発熱および発熱による性能低下(サーマルスロットリング)において不満が出てきます。
大幅な性能アップを遂げるチップの発熱はどれほどのものか、発熱を抑えるための冷却システムにおいてどういった進化を遂げるのか、秋の発表イベントにおける注目ポイントの1つになるでしょう。
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