6月12日、スマートフォン向けアプリ市場において巨大IT企業の独占を規制する「スマホソフトウエア競争促進法」が参議院本会議で可決・成立しました。
同法では競争の妨げとなる禁止行為を事前に規制するもので、違反した場合は該当企業に最大で国内売上高の20%が課徴金として科され、違反を繰り返すと30%に引き上げられます。
独占禁止法違反の課徴金は最大10%のため、3倍以上となる同法の課徴金の厳しさがわかります。
独禁法よりも3倍以上も高額な課徴金
スマホソフトウエア競争促進法は、新規参入による競争を促し、消費者の利益に繋げることを目的にスマートフォンのソフトウェアにおいて非常に強い立場にある巨大IT企業を対象に事前規制を設けるものです。
巨大IT企業としつつも、スマホのOSはAppleとGoogleの2大巨頭になっており、そこにぶら下がるアプリストアもブラウザ、検索も2社が支配的な立場にあります。
同法の規制対象には、アプリストアのほかに、OSやブラウザ、検索サービスも含まれており、競合他社のサービスの利用を妨げたり、利用条件や取引において不当に差別的な取り扱いが禁止行為として示されています。
主な禁止行為は以下のとおり。
- 他の事業者がアプリストアを提供することを妨げてはならない(正当化事由あり)
- 他の課金システムを利用することを妨げてはならない(正当化事由あり)
- デフォルト設定を簡易な操作により変更できるようにするとともに、ブラウザ等の選択画面を表示しなければならない
- 検索において、自社のサービスを正当な理由がないのに、競争関係にある他社のサービスよりも優先的に取り扱ってはならない
- 取得したデータを競合サービスの提供のために使用してはならない
- アプリ事業者がOSにより制御される機能を自社と同等の性能で利用することを妨げてはならない(正当化事由あり)
指定を受けた事業者は規制の遵守状況に関する報告が求められるほか、違反した場合は最大30%の課徴金を支払う必要があります。
同法の本格運用は2025年末までにスタートする予定です。
どういった行為が規制対象になる?
一部を除いて自社以外のアプリストアを認めていないAppleに対して、GoogleはAndroidの初期から他社のアプリストアを認めており、SamsungがGalaxy Store、AmazonがAmazonアプリストアをオープンしています。
しかしながら、Googleは競合を排除することを目的にスマホなどの端末メーカーに対して、検索アプリの搭載や配置先を指定する他、競合となる検索アプリを搭載しないことを条件に、収益の一部をメーカー側に分配していると報じられていました。
ポリシー違反によってアプリストアから排除されたフォートナイトを開発するEpicとGooogleの裁判では、GoogleがSamsungに対して、独自のアプリストアをホーム画面に置かないよう提案したものの拒否され、最終的にGoogleのアプリストア、検索、アシスタントをデフォルト設定にすることを約束し、4年間で80億ドルを支払うことに同意したとEpicが主張しています。
裁判に勝利したEpic(Googleは控訴の方針)は、Googleが数十億ドルを支払ってGoogle Playの代わりになるアプリストアを抑圧することをいとわず、開発者に対しても独自ストアやアプリを利用者に対して直接配信することを放棄させるために金を払い、端末メーカーと有利な契約を結んでいた証拠も明らかになったとコメントしていました。
こういった競争を排除する行為は当然、スマホソフトウエア競争促進法の規制対象になると考えられます。
- | 公正取引委員会