総務省がガイドラインの改正を行い、2021年10月1日からスマートフォンのSIMロックを原則禁止にすると発表した。
SIMロックは端末代金の不払いや不正転売などを防止するために導入されたが、SIMロックによって携帯電話事業者を変更・併用しづらくなり、事業間での競争が生まれにくくなることから、SIMロックとすでにかかっているSIMロックの解除を制限する行為を原則禁止にする。
ただし気になるのは周波数ロックの存在だ。
SIMロック原則禁止による競争効果に疑問
現在、SIMロックの設定状況はキャリアや端末ごとに異なる。
ドコモは一括購入またはクレジットカードによる分割払いを選択した場合、購入者が申し出なくてもSIMロックが解除された状態の端末を渡しているが、KDDIとソフトバンクは、クレジットカードによる分割払いを選択した場合は申し出が必要。
楽天モバイルはキャリア初の全機種SIMフリーとして端末を販売していて、今年4月に販売を開始したiPhoneもSIMロックがかかっていない状態で端末渡している。
ただし、ソフトバンクが7月16日に発売したライカ初のスマートフォン「LEITZ PHONE 1」、auが8月13日に発売するXiaomi初の日本独自モデル「Redmi Note 10 JE」については、SIMロックがかかっていない状態で販売されるなど、10月1日の原則禁止を前に先行対応している端末もある。
9月発売が噂されるiPhone 13シリーズについても同じようにSIMフリーで販売されるかもしれない。
SIMロックの原則禁止によってこういたバラバラな状況が統一されるが、“周波数ロック”の存在があるため「スマートフォンを買い換えることなく自由にキャリアをのりかえられる」とはならなそうだ。
例えば、KDDIは「Redmi Note 10 JE」の対応周波数について、KDDIのネットワークで快適に利用できるようバンド対応しているが、それ以外(他社の独自バンド)の対応についてはメーカー判断になっていると発表会で答えている。
実際に「Redmi Note 10 JE」の対応周波数を確認してみると、4G LTEは3社の共通バンドに対応しているものの、ドコモやソフトバンクが提供するBand 8/19/21といったプラチナバンドを含む重要な周波数帯に対応していない。5Gでも3社の共通バンドに対応しているもののドコモのn79には対応していない。
- 5G NSA: n28/n77/n78
- LTE FDD: B1/3/4/5/7/12/13/17/18/20/26/28
- LTE TDD: 38/41/42
つまり、SIMロックのかかっていない「Redmi Note 10 JE」を購入してから、数ヶ月後〜数年後に他社にのりかえても対応周波数が限られ、実質的にエリアが狭まることから、のりかえ後に後悔する可能性がある。
周波数ロックは「Redmi Note 10 JE」に限ったことではなく、ドコモとauから販売されている「Galaxy S20 5G」や3社から販売されている「Xperia 1 III」にも存在する。周波数ロックが存在しないのはiPhoneぐらいだ。
周波数ロックが存在する以上、SIMロックが禁止されても事業者間ののりかえが進んで、競争に繋がるとは考えにくい。のりかえや解約時に十分な説明がなければトラブルが増えることも考えられる。
なお、ガイドラインの改正にあたって募集したパブリックコメントには、楽天モバイルや個人から周波数ロックに対する何らかの対処が必要ではないかという意見も寄せられた。
通信事業者だけでなく、端末製造者においても、周波数帯域等についてすべてのMNOへ対応するよう義務付けるべき。【楽天モバイル株式会社】
端末製造者に対する義務づけに関する御意見については、参考として承ります。なお、端末の対応周波数帯等については、利用者の権利を制限し競争を阻害する効果がないか、状況を注視していく考えです。
- 引用元
- 総務省
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