国の強い値下げ要求を受けてドコモが新料金プラン「ahamo」(アハモ)を発表した。5G対応、月間20GB、5分以内の国内通話無料で月額2,980円の“衝撃”。発表会場でも驚く記者の様子が印象的だった。
一方で明らかにサブブランドで用意していたものをメインブランドの新料金プランとして発表し、記者に指摘されても頑なに否定したことになんとも言えないモヤモヤ感も残った。
プラン自体は素晴らしいものだが“チグハグさ”が目立つ。こうなった背景に武田総務大臣の言葉が大きく影響していると思えてならない。
総務大臣の一声でサブブランドから新料金プランに
ahamoは新料金プランながら現行プランと異なる点が非常に多い。
例えば、ahamaの公式サイトは別で用意されていてドコモのサイトではプラン内容を確認できず、発表と共にスタートした先行エントリーも受け付けていない。同じブランドの料金プランにも関わらず新規申し込みや各種手続きはオンラインのみでドコモショップやインフォメーションセンターで受け付けないなどサポートも異なる。
端末はドコモオンラインショップではなくahamo専用のオンラインショップで販売。端末にプリインストールされるアプリも厳選され、料金やデータ使用量を確認できるアプリもmydocomoではなく専用のアプリが提供される。
プラン変更にもかかわらずシステムの対応が完了するまでのりかえの手続きが必要になるという謎仕様もある。
極めつけはドコモ公式チャンネルではなくahamo公式チャンネルで公開されたプロモーション動画だ。
1分の動画には“プランはたった1つだけ”(ギガホやギガライトはどこへ?)、“5Gxドコモの通信回線”(同ブランドの料金プランだから当然では?)、“前向きな気持が全部詰まったモバイルサービス始まります”(サービスではなく料金プランじゃないの?)といったチグハグなメッセージがいくつも流れる。
サブブランドとして誕生すれば違和感なく理解できるが、メインブランドの料金プランとして提供されることで混乱が起きる。
料金プランによってサポートが受けられないと知った途端に激怒する消費者と対応に苦慮するスタッフの姿は容易に想像できるなど特にサポートへの影響が大きい。
井伊社長は現場が混乱する可能性を認識しつつショップでサポートを求められたときの対応について断るわけにはいかないとして今後検討するとした。
低料金を実現するためにサポートコストの削減は必須とも思えるが、そこを担保せずにプランを提供して長続きするのだろうか。
なぜこのような無理のある設計になったのか。ワイモバイルとUQ mobileがいち早く値下げを発表し、武田総務大臣が一定の評価をしたことが無関係とは思えない。
総務大臣の評価を受けてドコモもサブブランドでの対応でイケると思いながら準備を進めていたにも関わらず、3週間も経過してからメインブランドで値下げしなければ消費者に実感がなく意味がないと評価を一転させたことに衝撃を受けたのではないだろうか。
サブブランドでの提供を進めていたもののメインブランドでは意味がないと言われ、突貫工事で強引に新料金プランに変えたことはほぼ間違いない。
当人はドコモが発表した新料金プランについて「実に6割強の値下げ。平成18年度段階からは70%を超える値下げに踏み切った。市場に公正な競争を導く大きなきっかけになると期待している」と高く評価したが、実質的なサブブランドであることに気づいて数週間後に再び評価を一転させて市場を振り回さないか心配だ。
なお、MVNOに与える影響については「食うか食われるかって話については激しい競争のなかでどの業界も頑張っておられるわけであってMVNOの皆様もそれなりの経営努力をしてもらわなくては」と答えた。