Googleは今年秋にPixel 9シリーズを発売し、最新のチップセットGoogle Tensor G4を搭載する見込みです。
Google Tensor G4は、電力効率と発熱管理が改善されるものの、スモールアップデートに留まる見込み。ビッグアップデートは来年発売のPixel 10シリーズに搭載されるGoogle Tensor G5でやってくると報じられています。
ビッグアップデートの1つは、チップの製造メーカーが現在のSamsungよりも評価の高いTSMCに変更されることですが、この噂が公開データベースから確認されました。
Google Tensor、ついにSamsung製造から変更へ
Google Tensorシリーズは独自チップを謳っていますが、実際のところはSamsungと密に協力して開発されています。
メリットはリソースの大幅な削減です。
Android AuthorityはGoogleが完全に自立してチップを開発するのではなく、Samsungと協力したことによって開発に要する時間とエンジニアの数を大幅に節約できたと説明します。
犠牲になったのはチップの性能ですが、Googleの戦略は見事でした。
独自チップに切り替える1年前に発売したGoogle Pixel 5にて、性能を抑えたミドルレンジのチップに切り替えることでソフトランディングし、Google Tensorでは、CPUやGPUの性能ではなくAIや機械学習を大体的にアピール。
消しゴムマジックやボケ補正、リアルトーン、リアルタイム書き起こしに対応したボイスレコーダー、知らない番号からの電話対応をGoogleアシスタントにまかせられる通話スクリーニングといった人気の機能を次々にリリースすることで、今ほどAIブームではなかった時に、Google PixelをAIスマホとして印象付けることに成功しました。
そしてAIブームが来た今、スマホxAIの分野においてSamsungもAppleも置き去りにし、SamsungはGalaxy AIのバックグラウンドにGoogleの高性能AIモデルGeminiを採用。AppleさえもGeminiの導入を検討していると報じられています。
今後もAIの処理能力を高め、優れたGoogle AIの機能を提供していくことは間違いありませんが、同時に不満のある基本動作の改善にも力を入れていくようです。
不満のある基本動作とは、発熱と電力効率です。
発熱と電力効率の悪さの原因は、NothingがTSMCほど進んでいないと公の場で評価を下したように、Samsungの製造技術にあるとされています。
QualcommもSamsungが製造を担当したSnapdragon 8 Gen 1にて同様の問題に苦しんだ結果、TSMCに変更。基本設計は同じながら8+ Gen 1では発熱問題が改善され、Snapdragon 8 Gen 2はここ数年では大成功を収めたチップとなっています。
開発はまだ初期段階
Android Authorityは輸出入に関する公開データベースからGoogle Tensor G5に関する情報を入手、確認してレポートしています。
このデータベースで公開されているのは、大雑把に言えば企業が輸出入する際に取引される物品の内容や金額等を申告したもので、時には未発表デバイスに関する情報がこのデータベースから明らかになったこともあるとのこと。
以下はGoogle Tensor G5が出荷される際に提出された申告内容です。
出荷人はGoogle LLCで、荷受人はSamsungではなくインドのTessolve Semiconductorとなっています。
出荷された商品がどういったものかを説明する項目には、以下の表にわかりやすくまとめました。
項目 | 説明 |
---|---|
G313-09488-00 | 品番 |
IC, SoC | 商品の種類 |
LGA | コードネーム |
A0 | チップのリビジョン |
OTP, V1 | OTPのリビジョン |
InFO POP | パッケージング技術 |
NPI-OPEN | 商品化プロセス |
CP1/2/3 & FT1/2 & SLT TEST | 合格したテスト項目 |
TSMC | 製造メーカー |
16GB SEC | メモリ |
BGA-1573 | パッケージの種類 |
1.16MM | パッケージの高さ |
Googleが出荷した製品は“LGA”のコードネームを持つチップセットです。
LGAはTensor G5のコードネーム“Laguna Beach”の省略語と推測され、Googleは過去にも初代TensorのWhitechapelをWHI、Tensor G4のZuma ProをZPRと省略していました。
製造メーカーはTSMCで、パッケージング技術にはTSMC独自のInFO-PoPが採用されています。噂どおりGoogleはチップの製造元をSamsungからTSMCに変更することになりそうです。
A0、OTP, V1、NPI-OPEN、合格したテスト項目はチップがどの段階まで進んでいるかを意味していて、いずれもチップの開発が初期段階であることを示しているとのこと。
Google Tensor G5が搭載されるPixel 10シリーズが発売されるのは、まだ1年以上も先であることを考えると妥当なものです。
メモリはSEC(Samsung Electronics Corporation)製の16GBです。
今のスマートフォンに搭載されるメモリ容量は8GB〜12GBが多くなっていますが、オンデバイスAIの進化によってローカルに展開された膨大なデータを高速に処理する必要があるため、大容量かつ高速なメモリが必要になります。
今年発売されるGoogle Pixel 9 Proでは、16GBのメモリを搭載することが確認されていますが、オンデバイスAIの進化速度によっては来年発売のGoogle Pixel 10シリーズでは16GBがベースとなり、Proモデルにはさらなる大容量のメモリが搭載される可能性が指摘されています。
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