ここ数年問題視されている巨大IT企業による市場の独占。最近ではスマートフォン向けのアプリストアも議論の対象になっています。
例えば、iPhoneやiPadにアプリをダウンロードするには、Appleが運営するApp Storeから入手する必要があり、その他のアプリストアからアプリをダウンロードすることはできません。
アプリストアが独占にあると認識する政府は法的にアプリストアの独占を解いて、他社に新規参入と競争を促し、手数料の引き下げを通じてアプリ等の値下げを実現させたい考えのようです。
報道への反応において最も多かったのは安全性の問題です。iPhoneが安全なのはApp Storeにおける厳格な審査体制にもあることから、アプリストアの解放によって安全性を揺るがす可能性があります。そこで政府はAppleが他社ストアを監督することを認めるようです。
先行するEUでもAppleが他社ストアに関与と報道
アプリストアの独占は日本だけでなくEUでも議論されており、昨年末にEUのデジタル市場法に対応するために、Appleは他社によるアプリストアを許可せざるを得ないと報じられました。
一方、安全性が懸念されることから開発者が他社のアプリストアでアプリを配布する場合であっても、一定のセキュリティ要件を義務付けたり、何らかの形でアプリを検証するなどしてAppleが承認したアプリのみインストール可能にすることを検討しているようです。
つまり、アプリストアを監督してサイドローディングにおいても安全性を担保することは日本だけの独自仕様ではなく、アプリストアの独占解放とのセットと考えているのかもしれません。Appleが他社ストアを監督するというアイデアも日本政府から出たものではなく、Appleから提案されたもので、当初はそれをも拒否する方針であったものの、反対の声が予想以上であったことから泣く泣く飲むことにしたのでしょうか。
いずれにしてもアプリストアの独占が解かれたとしてもApp Storeの競合になり得るアプリストアが出てきたり、アプリ等の値下げまで繋げることはかなり難しいでしょう。それができるなら当初からアプリストアを解放しているAndroidですでに実現しているはずです。
アプリストアの独占規制とは違って大きなインパクトを与えるのが独自決済システムの強制使用を法的に規制するものです。
現在、App StoreおよびGoogle Playストアで販売されている有料アプリ等を購入する場合は、AppleおよびGoogleが提供する決済システムを使用する必要があり、手数料として最大30%の手数料をバックする必要があります。NetflixやKindleなど契約または購入したコンテンツを楽しむためのリーダーアプリにおいて認められている外部決済では、Appleに手数料を支払う必要はありません。
リーダーアプリ以外でも外部決済が認められれば、特に開発者に対して大きなメリットが生まれます。一方で、外部決済においてはAppleの手を完全に離れるため、注文のキャンセルや返金の際にはAppleではなく、各アプリの運営元に問い合わせる必要があり、スムーズに手続きが進まない、問い合わせに応じないといったデメリットやリスクが予想されます。
- | 日本経済新聞