加熱するスマホの値引き競争によって一括1円のような激安スマホ販売が生まれ、利用者間の不公平感や転売ヤー問題に繋がっていることから総務省がルールの見直しを検討しています。
携帯各社が割引の上限額を中古価格にしてはどうかと提案する一方で、5Gスマホの買い替えを促進するためにセット販売の一部復活など規制緩和を求めています。
スマホ価格高騰で買い替えが長期化
KDDIは4G開始時と5G開始時の状況を比較すると、携帯端末の支払い額が増えたことで、買い替えサイクルが長期化しているとのこと。
これは円安と端末の高機能化等によって端末価格が高騰していることが原因で、割引額が上限2万円に設定されている現状では利用者の買い替えニーズに応えにくい状況にあります。
例えば、2019年9月に発売されたiPhone 11(128GB)は機種代金が94,608円だったものの、今年発売されたiPhone 14(128GB)は140,640円で49%アップ。
2019年10月に発売されたXperia 1は112,320円だったものの、今年発売されたXperia 1 IVは192,930円で72%アップと大幅に機種代金が高騰しています。
ちなみに、割引の上限額が2万円に設定された経緯としては、利用者間に不公平感が生まれないように、割引を受ける利用者から得られる利益の範囲内が妥当としてドコモが導き出したのが3万円でした。
その上で競争が促進された結果、利益率が低下したことを想定して2万円に設定されたものの、当時も3万円から1万円低くした事に対して根拠不明との指摘があり、基準となった3万円の計算式に含まれるユーザー1人当たりの支払額やMNO営業利益率等が当時と変わっていることから考えても見直し、再検討が必要なことは明らかです。
また、そもそも国としても5Gの普及を促進するなかで、利益をベースにした割引額の上限設定についても例外を設けるなど見直しが必要と考えられます。
キャリアはセット販売の一部復活を求める
KDDIは端末の急速な普及と利用者拡大による投資促進ができる好循環によって4Gでは世界でもトップレベルのエリアカバー率とネットワーク品質を実現できたと説明。
5Gでも公正な競争環境の確保を前提にしつつ制度を見直すことで4Gと同様に端末の普及と投資促進の好循環を生み出す環境づくりを総務省に求めました。
具体的には、4Gから5Gへの端末切り替えを国が補助・支援する方法や4Gから5Gの移行の場合において端末と通信をセットにする方法を提案。セット販売によって端末を即転売する転売ヤー問題の解消にも繋がるとしています。
回線契約を条件に大幅な値引きを実現してたセット販売については2019年の法改正によって規制され、頻繁にのりかえるユーザーだけが優遇される不健全な競争は無くなりました。しかし、端末と通信が分離したことよって転売ヤー問題が新たに生まれ、買いたい人が買いたくても買えない状況になっています。
KDDIが提案したセット販売の復活案は4Gから5Gへの移行に限定したもの。割引額については端末単体販売も含めて割引の上限設定や、新規・のりかえの競争過熱の歯止めとなるような機種変更価格を基準とする割引制限等の検討も必要としていることから過度な競争に繋がりにくいものです。
5Gを促進するためのスマホ販売についてはドコモも見直しを求めています。
先日の決算説明会で井伊社長は「端末とセットで売るのが仕事だと思ってる。端末だけを売るのはキャリアの仕事ではない」「昔に戻りたいというわけではなく、一定のルールを決めて(セット販売を)進めるべき」とコメントするなど、KDDIと同様に規制ありきの新しい形でセット販売を復活させたい考えを明らかにしていました。
- | 総務省
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