約9割がiPhoneユーザーのZ世代。Androidに乗り換えさせる理由はデザインーーNothingのカールペイCEO
Nothing Phone (1)は、2022年に発売されたスマートフォンの中でも最もインパクトのあるモデルの1つでした。
アメリカを除く限られた地域で販売されたにも関わらず、売れ行きは好調で5ヶ月程度で販売台数が50万台超を記録。日本や香港では購入者の半分以上がiPhoneから乗り換えています。
成功の要因はデザインでしょう。スケルトンの透明な背面に900超のLEDを配置したことで大きな注目を集め、4辺の幅が揃ったベゼルを採用したデザインが高く評価されています。
そんなNothing Phone (1)についてAndroid Authorityの独占インタビューに答えたNothingのカールペイCEOが開発の苦労話について語っています。
Nothing OSの開発者はたったの5人だった
カールペイによれば、Nothing OSの開発には数百人の人材が必要にも関わらず、正社員のエンジニアは当時たったの5人しかいなかったそうです。
エンジニアを募集したところ面接の評価も悪かったことから採用したくなかったものの、たった1人しか応募がなかったことを理由に採用したところ、その人物は他にもっといい仕事が見つかったことを理由にたった1日働いただけで辞めてしまったとのこと。
カールペイは「最悪のエンジニアはうちで2日も働きたくなかった」と笑っています。
結局のところ開発を外注し、合計400人のエンジニアがパートタイムでNothing OSの開発に取り組んでいたとのこと。正社員でないこともあって開発の士気は低く、発売当時は荒削りの状態だったと語ります。
思い返せば日本版のNothing Phone (1)では、当初は実装されていなかったカメラのシャッター音が追加され、アップデートで音量が爆音になったり、小さくなったり不安定な状態に。発売時は店内の人たちがこちらを見るレベルの音量で多くの人が不満を感じていました。
「ただ文句を言うだけの人がいる。ただ理由を聞くと理由がない」
今年8月にAndroid 13がリリースされたものの、Nothing Phone (1)向けの配信予定日について明言しなかったことから批判を招きました。
Android AuthorityはAndroidの早期アップデートを約束しながら実現しなかったことについてユーザーから批判されたらどうするか聞いたところ、カールペイはAndroid 13のアップデート提供がそれほど重要とする理由を理解するためにもっと深い話をすると回答。
さらに、「特にインターネットでは、ただ文句を言うだけの人がいる。ただ、理由を聞いてみると理由がない」と続け、バージョン番号を追いかけることはそれほど重要ではないと説明しています。
カールペイの言うとおりバージョン番号を追いかけることは確かにそれほど重要ではありません。ただ、それは実績のある企業であるならという条件付きです。
これまで1台もスマホを発売せず、まったく実績のないNothingが3年のOSアップデート保証を謳ったわけなので、それが本当に実現できるのか、そしてアップデートがどれぐらいの頻度で提供されるのか(セキュリティアップデートは頻度保証付きなのでなおさら)ユーザーにとってはかなり重要なことでしょう。
極論を言えば、発売から3年後に初めてOSアップデートを提供しても3年保証であることに変わりはないと言われたらそれまで。未知の企業であるNothingがどれほどアップデートに積極的なのか、ユーザーは確認しておく必要がありました。多くのユーザーから出た批判の源は不満よりも不安にあったはずです。
Nothing OS 1.5ではコードを総入れ替え
色々あったものの、Nothingはベータプログラムを開始しました。プログラムに登録することで数週間のうちにベータ版であるAndroid 13のアップデートを受け取ることができます。
カールペイが重要ではないと明言したAndroid 13のアップデートは、バージョン番号にも表れていてNothing OS 1.5として提供されます。
アップデートの内容は、最大50%向上したアプリの読み込み速度、バックグラウンドメモリの増加、期限切れのキャッシュやシステムダンプのクリアによっていつでも新品のように使える自己修復機能、より多くのMaterial Youのサポート、アプリごとの言語設定、通知の事前許可、クイック設定のQRコードスキャナ、クリップボードのプレビュー機能、メディアコントロールの外観最新化、ゲームモードの改善など。
それよりも重要なのはユーザーの目には見えないコードの入れ替えかもしれません。
Nothing OS 1.5では、外注していたOEMの古いコードが内製化されたコードに入れ替えられたことで、システムがよりスムーズに、より安定に動作するとのこと。
次のメジャーアップデートであるNothing OS 2.0がもっと野心的なものになると予告されています。
Z世代はデザインでスマホを選び、iPhoneから乗り換える
Nothing Phone (1)はiOSからの乗り換え率が高く、競合のAndroidデバイスに比べて平均3〜4倍の最も高い割合を記録し、カールペイは乗り換え率の高さを非常に重要視していると語っています。
その中でも87%がiPhoneユーザーであるZ世代をiPhoneからAndroidに乗り換えさせなければ、将来的なAndroidのシェアが減ってしまうと語り、デザインは若者をAndroidへ乗り換えさせる理由になると説明しています。
Nothing Phone (1)が若者に選ばれているという具体的なデータはないものの、社内調査によれば購入理由の第1位はデザインと背面が光るGlyphインターフェースだったそうです。
日本国内では、デザインだけ、背面が光るだけといった評価も目にしましたが、競合に比べて最大4倍もiPhoneからの乗り換え率が高いスマートフォンの購入理由の第1位がデザインであったことを考えれば、見た目だけと馬鹿にできません(そもそも性能やコスパが著しく劣っているわけでもない)
Nothingは若者の街である渋谷で先行販売を行い、狙いどおり多くの関心を集めて当日には行列ができていました。今年列を作ったスマートフォンはiPhoneとNothing Phone (1)ぐらいではないでしょうか。
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