今年は折りたたみスマートフォンが熱い夏です。これまで日本市場はSamsungの一強状態でしたが、Googleが「Pixel Fold」を発売し、motorolaもrazr 40 ultraを発売したことでようやく競争が生まれそうです。
1つに折りたたみスマートフォンと言っても2種類あります。1つはタブレットサイズのディスプレイをポケットに入れて持ち運べるFoldフォン、もう1つは本体を半分に折りたたんでミニバッグや胸ポケットなど小さなスペースに入れて持ち運べるFlipフォンです。
Foldフォンは動画やゲームなどのエンタメ消費に最適で作業効率化も可能。対するFlipフォンはコンパクトなサイズや折りたたみボディを生かした撮影スタイルがウリ。
これまで筆者はFlipフォンにまったく興味がなかったものの、今年のFlipフォンは本体の外側に搭載されているカバーディスプレイが巨大化したことで新たな価値を生み出し、1.0から2.0へ進化しようとしていることに惹きつけられています。
今回レビューする「Galaxy Z Flip5」は、Flipフォン1.5と評価できそうです。
サムスン電子ジャパン
新たな体験を提供する巨大化したカバーディスプレイ
Galaxy Z Flip5における最大の進化は本体外側に配置されたカバーディスプレイの巨大化です。
これまでのZ Flipシリーズに搭載されていたカバーディスプレイでも通知を確認したり、定型文や音声による返信、カメラのファインダー、クイック設定を使った機能のオン/オフも可能でしたが“オマケ”の域を出ていませんでした。
今作のカバーディスプレイは1.9インチから3.4インチまで拡大。面積比では約280%も大型化したことで、フリック入力対応のキーボードを使ってLINEやメールにも返信可能に。
Googleマップで目的地までのルートを検索したり、カレンダーで今日のイベントを確認したり、タイマーやストップウォッチ、アラームを設定したり、YouTubeやNetflixで動画を見るなど、とにかくできることが格段に増えて“オマケ”の域を脱しています。
上記のウィジェットとサードパーティのアプリはカバーディスプレイに100%最適化されているため、デザインは洗練されています。ただし、最適化されていないものは基本的にカバーディスプレイでは利用できません。
例えば、旧Twitterのタイムラインを確認してポストしたり、Instagramのフィードを確認したり、Nature Remoなどのスマートリモコンアプリで家電を操作するといったことは不可能。おサイフケータイに対応しているとはいえ、PayPayや楽天Payなどのスマホ決済アプリを本体を開かず使いたいといった需要はそれなりにあるはずですが、残念ながらそれも不可能。
なお、発売時はGood Lockアプリを日本で利用できなかったものの、現時点ではGalaxy Storeからアプリのダウンロードが可能に。同アプリを利用することで、多くのアプリをカバーディスプレイで利用することができます。
これまでのFlipに搭載されていたカバーディスプレイに比べれば、できることは格段に増えていますが、ほぼ制限なくアプリを起動できるmotorola razr 40 ultraに比べるとものたりない。
1台に2つの画面を集約したmotorola razr 40 ultraをFlipフォン2.0と評価するのに対して、Galaxy Z Flip5をFlipフォン1.5と評価する理由はここにあります。
今後のアップデートによって、カバーディスプレイでできることが増えていけば、1.5が2.0に近づくかもしれないのでFlipフォン1.5+と評価しておきます。
カバーディスプレイで利用できる機能 | |
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ウィジェット | サードパーティアプリ |
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カバーディスプレイには、画面ロックを解除するまでメインパネルの文字盤が表示されます。文字盤には日付や時間、通知、ショートカットなどが表示され、豊富なテンプレートから選んでお気に入りの写真を利用してカスタムできます。
メインパネルを右にスワイプすると通知、下にスワイプすると画面の明るさ変更や機内モードオン/オフなどが利用できるクイック設定、左にスワイプするとウィジェット、ピンチイン操作ですべてのウィジェットを見渡せます。
画面ロックの解除には、PINコード等の手入力、側面に配置された指紋認証センサー、顔認証が利用できます。指紋認証センサーは右手親指で認証する場合はスムーズですが、左手では人差し指でも中指でも失敗多数で精度低め。それでも顔認証があるだけマシです。
本体を開くと一般的なスマホに比べて大きめな6.7インチのメインディスプレイにアクセスできます。ピーク輝度が前作の1200ニトから1750ニトに向上したこともあって、よく晴れた日の屋外でも明るく見やすいです。
ちなみに、カバーディスプレイもピーク輝度1600ニトの高輝度モードに初めて対応したことで晴天の屋外でも明るさ十分で見づらいと感じることはなかったです。
Galaxy Z Flip5における最大の進化がカバーディスプレイなら最も重要な進化はヒンジにあります。
折りたたみスマートフォンの最大重要品部品であるヒンジは、今作からフレックスヒンジと命名されており、本体を閉じた時でも隙間がなくなりました。
隙間がなくなったことでバッグやポケットに入れているときでも内側のメインディスプレイにホコリが付着しにくくなり、不快感が軽減されています。
新ヒンジによってメインディスプレイの折りたたみ部の形状が水滴型に変化し、ストレスが軽減されたようですが、折りたたみのシワは前作から大きく変わっていません。ただ。シワは違和感こそ生むものの、数日もすればすぐに慣れます。
また、デュアルレール構造が新たに導入されたことで、外部からの衝撃を分散することで耐久性も向上。頑丈なアーマーアルミニウム、IPX8の防水性能、最新の強化ガラスGorilla Glass Victus 2を採用するなどシリーズ史上最高の耐久性を実現しています。
これまでのGalaxy Z Flipシリーズは、分厚いヒンジ側から反対側にかけて傾斜がついていましたが、今作では隙間がゼロになったことで閉じた時に2mm薄く、フラットな形状に改善されました。
カラーは新色のミント、グラファイト、クリーム、ラベンダーの4色。日本ではクリームがau限定、ラベンダーがドコモ限定です。
広角レンズと超広角レンズで構成されるデュアルカメラはミッドレンジクラス。それでも折りたたみボディと巨大化したカバーディスプレイのコンボによるカメラは魅力的です。
本体が閉じた状態でも電源ボタンを2回連続で押すとカメラが起動。巨大なカバーディスプレイがカメラのファインダーになるため、写り方を確認したり、身だしなみ整えたり、子どもならカメラ目線への誘導も簡単で自分の映る姿を見て自然な笑顔を画質の良いメインカメラで記録できます。
手に持たずハンズフリー撮影/置き撮りも可能。
最近では街中でTikTokを撮る女子を見かけますが、スマホを壁などに立てかけるのに苦労している姿も見られます。折りたたみボディによって自立するGalaxy Z Flip5であれば撮影中にひっくり返る心配なし。手に持った状態で撮影する時も自分の姿や画角を確認できるカバーディスプレイと画角の広いレンズが役立ちます。
カメラは新しいAIを搭載したISP新たにAIを搭載したISPアルゴリズムによって、ディテールの再現性や色調、ノイズの補正が向上したとのこと。
また、遠くからでも鮮明な写真を撮影できるデジタル10倍ズームにも対応しているとのことですが、光学10倍望遠レンズを搭載したGalaxy S23 Ultraとは別物で期待しない方がいいです(以下の作成参照)
チップセットには、折りたたみスマホ史上最強を謳うSnapdragon 8 Gen 2 for Galaxyが搭載されています。
Samsungによると前作のZ Flip4に比べてGPUは25%、NPUは20%、CPUは17%性能が向上しているとのこと。
メモリの容量は8GB。画面サイズはスマホよりも少し大きい程度ということもあって画面を分割してアプリを同時に使う機会はそれほど多くないものの快適です。
性能の進化よりも重要なのは電池持ちに繋がる消費電力の改善です。参考までにとある1日のバッテリーレポートを紹介しましょう。
画面の明るさを自動調整にした状態で10時30分に充電器から取り外して外出。Notionで原稿の下書きや記事の管理を行い、Googleマップで目的地までの乗り換え検索、Chromeで記事投稿、YouTubeで30分以上の動画視聴、180枚以上の写真を撮影したところ23時すぎに電池切れに。画面が点灯していた時間は4時間20分でした。バッテリーレポートで確認できる画面オンの時間にカバーディスプレイが含まれているのかわかりません。
なお、同じチップと5,000mAhのバッテリーを搭載してバッテリーモンスターと評価したGalaxy S23 Ultraは、530枚の写真を撮影したところ画面オンの時間は5時間20分でした。
充電出力は最大25Wに対応。容量が3,700mAhのバッテリーを「Anker Prime 100W GaN Wall Charger」と「Anker 765 高耐久ナイロン USB-C & USB-Cケーブル」で充電したところ30分で50%に到達。60分で90%、75分で100%に到達するなど1時間とちょっとでフル充電できます。
最高気温が35°Cを記録する屋外でカメラを構えると、カバーディスプレイ側に発熱を感じたり、ディスプレイの輝度が落ちるといった事象はあるものの、アプリが強制終了するような致命的な動作制限は確認されず大きな問題はありません。
まとめ:体験は新しい。でも革新ではない
Galaxy Z Flip5は、巨大化したカバーディスプレイによって、本体を開かずLINEをチェックしてフリック入力対応のキーボードで返信するなど利便性が向上。さらに、大きくなったカメラファインダーによって自分の姿を見ながら画質の良いカメラで自撮りやグループショットするといったFlipフォンの体験も向上しています。
Z Flip4以前の機種から買い替えた場合は大きな進化を感じられます。一般的な板型のスマートフォンからGalaxy Z Flip5に買い替えた場合はFlipフォンがもたらす新しい体験を楽しめるでしょう。
ただ、Flipフォン1.5+と評価したように2.0には届かず革新的なものではありません。
2.0と評価する多くの制限なくアプリをカバーディスプレイで起動できるmotorola razr 40 ultraと違って、Galaxy Z Flip5ではカバーディスプレイに最適化されたアプリやウィジェットのみを起動できるよう制限されており、レビュー期間で感じたのは本体を開かなければいけない場面が思っていたよりも多いということです。motorola razr 40 ultraと比べても明らかに多いと感じました。
今後、Flipフォンの進化はどれだけ本体を開かずにやりたいことができるかにかかっています。これを実現させるためには物理的な画面サイズを拡大していく必要があるでしょう。今の画面サイズで旧TwitterやInstagramを起動できたとしても多くの人は満足しません。Samsungもそう考えているから制限をかけているはずです。
かと言って1.5+のGalaxy Z Flip5が2.0+のmotorola razr 40 ultraに劣っているかというとそうでもありません。
革新性が劣っているだけで本体のデザイン性、ソフトウェアのデザイン性はより洗練されています。チップセットもパワフル。3倍も高出力で充電時間が短くて済む15Wのワイヤレス充電、おサイフケータイ対応、512GBモデルのオプション、IPX8の防水を備えており、アクセサリも豊富に用意されています。
トータルの完成度で優れるGalaxy Z Flip5はカジュアルな人に向いていて、革新性で上をいくmotorola razr 40 ultraはよりマニアック向けと言えるかもしれません。
Galaxy Z Flip5は買いやすさも特徴で、端末を返却することで支払額を大幅に抑えることができます。
auの機種代金は256GBが154,300円(販売終了)、512GBが179,900円。割引適用後の負担金は256GBが63,100円〜(販売終了)、512GBが79,200円〜です。
ドコモの機種代金は256GBが138,820円。
「いつでもカエドキプログラム+」を使って12ヶ月目に端末を返却したときの負担金は67,045円。23か月目に機種を返却した時の負担金は83,380円。
別途、早期利用料の12,100円の支払いと、月額880円x13ヶ月分の「smartあんしん補償」への加入が必要です。
SIMフリーモデルも販売中です。SIMフリーモデルは限定カラーのグレー1色。FeliCaにも対応していますが、背面にFeliCaマークのない特別なデザインです。価格は179,900円です。
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